
日産エルグランド.。スタイリングは「The private MAGLEV(リニアモーターカー)」をコンセプトに、非日常の旅に出かける高揚感を表現。第3世代e-POWERは発電に特化した1.5ℓ直3ターボ(ZR15DDTe型)とモーター/発電機/インバーター/減速機/増幅機を統合した5-in-1電動パワートレーンで構成
期待のエルグランドを日産のテストコース、グランドライブ(神奈川・追浜)で試乗した。
16年ぶりのフルチェンジとなる4代目はすでに昨秋のモビリティショーで姿を目にしている。外光の下で対面すると、やはり堂々たるサイズとデザインが印象深い。まさに存在感たっぷりだ。ボディサイズは未公表だが、ライバルのアルヴェル(4995×1850×1945㎜)と全長と全高はほぼ互角、全幅はわずかに大きい4995×1850×1945㎜(メーカー測定値)という。
開発コンセプトは「大切な人たちとの遠出を楽しめる、プレミアムグランドツーリングミニバン」。とくにこだわったのがBIGサイズを生かして、乗り心地と静粛性を追求した「乗る人みんながくつろげる極上の快適空間」と、「どこまでも走りたくなる運転の楽しさ」である。日産車がDNAとして持つFUN TO DRIVEを基本に、グランドツーリングミニバンとして長時間、長距離を乗っても疲れにくいよう徹底的に仕上げている。開発にあたって実際に長距離を走り込み、楽しさを追求したという。大型ミニバンというと豪華さが話題になるが、エルグランドの豪華さは、見た目の質感や立派さだけではない。走りそのものにも足を踏み入れ、乗る人すべてが深い満足を得られるよう注力している。
従来型では競合車が横に並んだときに「見下ろされる感覚がイヤだ」というユーザーが多かったらしく、その声に応えアイポイントは高めに設定された。なお、新型の室内は広大といえるほど広い。
走りと乗り心地の革新は実に積極的。第3世代e-POWER、進化したe-4ORCE、インテリジェントダイナミックサスペンションという先進技術3点を統合制御することで、極上の快適性、運転の楽しさ、滑りやすい雪道でも安心して走れる性能を成立させている。
パフォーマンスはまさに新世代。フラッグシップらしい上質さが印象的だ。高効率な発電特化型エンジンと主要コンポーネントの統合化で生まれ変わった第3世代e-POWERの気持ちいい加速は、新型エルグランドの大きな魅力。最大トルク500Nm以上という大トルクのモーターによりすばやく加速Gが立ち上がり、力強さが滑らかに持続する。パワフルで息の長いフィールは、加速が立ち上がってもすぐに落ち込んでしまう競合車や従来型のエルグランドと比較して違いは明らか。また、第3世代e-POWERは、高い燃費性能を実現しているところもアピールポイントだ。
圧倒的な静粛性も印象的だった。まさにプレミアムグランドツーリングミニバンを名乗るだけのことはある。この究極の静かさは第3世代e-POWER、新世代アクティブノイズコントロール、高遮音ボディの相乗効果で生み出している。
第3世代e-POWERの電動ユニットは5部品の一体設計により剛性を高め振動を抑制。加速時の騒音は、競合車に比べて約5db低いという。新世代アクティブノイズコントロールは最先端の技術。エンジン音とロードノイズを高精度に検知し、リアルタイムで打ち消すことで、従来以上に幅広い音域に制御範囲を拡張した。
高遮音ボディの高い完成度にも驚いた。車室外からのあらゆる音を徹底して遮っていた。「風切り音を抑える高性能遮音ガラスと吸音材を効果的に配置、遮音材のカバー率をアップすることで効果的にロードノイズを抑えている」との説明どおりだ。とくに遮音ガラスを広く採用する手法で、前席から後席まで大きな遮音効果を発揮しているという。
極上の乗り心地も印象的。路面状況に合わせ減衰力を最適制御するインテリジェントサスペンションと、日産独自のe-4ORCEが主になって格別の快適性を生み出した。インテリジェントダイナミックサスペンションが振動と上下動を効果的に抑え、e-4ORCEの緻密な4輪トルク制御が車両姿勢を整えている。とくに先進技術の効果的な活用は見事。加速時にフロントが持ち上がりぎみになるのを抑えフラットな姿勢を保つとともに、減速時にはブレーキ圧を自動で調整し、カックンブレーキにならないように配慮されている。
ハンドリングもいい。大型ミニバンながら、見事にドライバーズカーとして満足できるレベルに仕上げられている。進化したe-4ORCEが、クルマの向きと姿勢を自在にコントロールし、高い旋回性能を実現。後輪の駆動力を増やすことで前輪のコーナリングフォースを高めている。コーナリング時には、インテリジェントダイナミックサスペンションが、外側の減衰を上げて、車体が傾かないように絶妙に調節。狙ったラインをトレースしやすくしてくれる。
走行モードは、6種から選択可能。走りのシーンやドライバーの好みに合わせてセレクトできる。各モードは、パワートレーンとステアリングに加え、e-4ORCEの設定まで細かく調整。それぞれ最適な乗り味を味わえるようになっている。中でも乗り心地に特化して快適性を極めたCOMFORTモードは完成度が高い。加速や減速でSTANDARDモードよりも穏やかな設定になるようにし、ステアリングは軽い力で回せる。減衰力も下げて、e-4ORCEも発進時にリアに駆動力をかけてノーズが浮き上がらないようにしている。競合車には電子制御サスペンションが未設定だが、エルグランドの場合はSTANDARDよりもさらに乗り心地をよくできる。
走りは極めてなめらかで力強く、3列目まですべての席で高い快適性が実感できるようになっている。広々とした車内空間は、シックな雰囲気でいかにも高級ミニバンらしい。運転席に収まると、眼前には横長のディスプレイが並ぶほか、インパネは新感覚のウッド調の樹脂仕上げ。その中央にはタッチパネルふうに走行関連のスイッチが並んでいる。
助手席と2列目のシートは非常に凝った作り。背もたれはリクライニングだけでなく中折れ機構も備え、好みのポジションを得やすいようになっている。足元にはオットマンも付く。3列目は、居住空間もシートのサイズも十分に確保されており、日常的に使ってもストレスを感じさせない空間である。
前述のとおり静粛性は超ハイレベル。エンジン音は、よほど回さなければ3気筒を感じさせない。市街地を普通に走る分にはほとんど気になる場面はないだろう。
それにしても新型の走りは本当に滑らかで、どこにもカドがない。運転していても意のままに操れて楽しく、それでいて同乗者も快適と、相反することを見事に両立している。エルグランドは、ドライバー自身にそこはかとなく“運転手”を感じさせる競合車とはだいぶ異なる世界観の持ち主である。快適な大空間パーソナルカーとして期待が高まる。
