
VWゴルフGTI/価格:7DCT 557万9000円。取材車はディスカバー&テクノロジー&DCCパッケージ(総額62万7000円)を装着。ゴルフGTIはニュルブルクリンク北コースでシビック・タイプRのラップタイムを破ったFF世界最速車
豊橋でのVWイベント取材の帰路は、イベントの主役でもあったゴルフGTIを駆って東京に戻った。
ゴルフGTIの発売は1976年。初代は“アウトバーンでポルシェを追い回せるFFコンパクト”として熱烈な支持を獲得。“ホットハッチ”という新たなムーブメントを生み出した。
以来GTIはゴルフの歴史とともに発展。総合性能を高めながらFF最速の座に磨きをかけている。
最新モデルは通称“ゴルフ8.5”と呼ばれ、2025年1月にデビュー。2リッター直4DOHC16Vターボの最高出力が従来比プラス20㎰となる265㎰へとアップしたのが最大の話題だ。内外装もリファインされ、エクステリアではフロントバンパーの大開口グリルを従来の台形から長方形に変更、インテリアでは、使い勝手が大きく向上した新世代のインフォテインメントシステムが導入された。
東京に向けて出発する前に、まずはイベント会場に設定されたジムカーナコースをアタック。複数のクルマと乗り比べ、改めてGTIがとても俊敏で走りやすいクルマであることを理解した。
踏めばどこからでもついてくるエンジンのパフォーマンスに加えて、挙動がつかみやすく、ハイスピードでのタイトターンでもアンダーステアが出ないハンドリングはGTIの大きな武器。優れた操縦性は、左右前輪の駆動力配分を0~100%の範囲で調整する電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックと、XDS(電子制御ディファレンシャルロック)が効いているからだろう。
XDSはコーナリング時にフロント内輪のグリップが不足した場合にブレーキをかけてトラクションを回復させる機構である。GTIはパイロンスラロームでも気持ちよく曲がっていけた。ステアリング操作が小舵角で済むプログレッシブステアリングもスイスイと走れる要素になっている。
素晴らしい運動性能を堪能したところで、帰路は一般道と高速道路で通常性能をチェック。試乗したのはオプションの19㌅ホイールとDCC(可変ダンパー)を装着した車両だ。
まずは一般道をドライブ。実に乗りやすい。最近のVW車は乾式の単板クラッチのDSG仕様も扱いやすいが、湿式多板クラッチを用いた7速DCT仕様のGTIはさらにスムーズだ。
19㌅という大径タイヤを履きながらも乗り心地がいい点にも感心した。改良前のゴルフ8は全体的にハードな乗り味だった。最新のゴルフ8.5のGTIは別物。生粋のスポーツモデルながら乗り心地の快適性にも配慮されている。GTIの歴史の中では、どちらかというとゴルフ8の乗り味のほうが異質だった。オールラウンド性が増したゴルフ8.5の乗り味はGTIの王道という気がする。
DCCの減衰力は、プリセットされたコンフォート/ノーマル/スポーツの3種だけでなく、Individualモードを選択すると15段階もの微調整が可能になっている。コンフォートよりさらに柔らかくしたり、スポーツよりさらにハードなサーキット向けの硬さにしたりすることもできる。ドライバーの好みや走行シーンに応じて最適セッティングが可能なのはうれしい。
ゴルフ8.5はインフォテインメントシステムも大幅に進化した。画面が拡大された12.9㌅大型タッチディスプレイは、視認性と操作性が向上。さらに新世代システムのMIB4はメニュー構造が見直され、より直感的に操作できるようになった。ディスプレイ下部に配置されたエアコンやオーディオ用のタッチスライダーにバックライトが追加され、夜間での操作性が劇的に向上した点はユーザーフレンドリーな改良である。
日常的な使用シーンでは、IDA(アイダ)ボイスアシスタントの採用で音声コントロール機能が強化されたのがポイント。エアコンの温度調整や各種設定を音声でスムーズに行えるようになった。もうひとつ、ユーザーからの要望を反映して、ステアリングホイールのスイッチが静電タッチ式から物理ボタンに回帰したことも特筆ポイント。誤作動を防ぎ確実な操作ができるようになった。実際に体感してみると、ゴルフ8よりも確実に使いやすくなっていた。
高速巡行シーンでのゴルフGTIは、とても落ち着いた大人っぽい乗り味だった。静粛性が高く、長距離を走っても疲れしらず。もともと直進安定性が抜群なので、ADASに頼らなくても車線を安定して維持できるうえに、追越などでレーンチェンジする際には、ステアリング操作に対して極めて正確に応答する挙動が印象に残った。しかも姿勢はフラット。DCCの利点で足回りはしなやかに路面に追従する。こうしたパフォーマンスを堪能しながら、豊橋から東京まで一気に走り抜けることができた。
ゴルフGTIの快適性は超一級品。疲れはまったく感じず、このままさらに数100㎞走ってもいいと感じた。ゴルフGTIの魅力はスポーツ性が高いだけでなく、高い完成度を求める真摯なクルマ作りにある。GTIは誕生50年を迎え、ますます輝いている。
