【20世紀名車】カロッツェリア・ベルトーネ製のスペシャルMG。生産台数わずか103台のクラシックスポーツ

1953年式アーノルトMGベルトーネ。1952年のトリノ・ショーにベルトーネが出品したショーカーに惚れ込んだ米国人のスタンレー・ハロルド・アーノルトによって市販されたFRスポーツ。MG-TDがベース

1953年式アーノルトMGベルトーネ。1952年のトリノ・ショーにベルトーネが出品したショーカーに惚れ込んだ米国人のスタンレー・ハロルド・アーノルトによって市販されたFRスポーツ。MG-TDがベース

米/英/伊の情熱が結実した味わい深い逸品

 1950年代から70年代にかけて、英国製スポーツカーの代表格として親しまれたMGは、多くがアメリカで販売された。第2次世界大戦後、欧州戦線から帰還した米軍兵士が、MGを持ち帰ったことが人気の発端だった。

 MGがスポーツカーとしてポピュラーな存在になると、「量産型では満足できない」という思いが強まる。シカゴで輸入車ディーラーを営んでいたスタンレー・ハロルド・アーノルトもそう考えるひとりだった。彼は1952年のトリノ・モーターショーにカロッツェリア・ベルトーネが出展した、MG-TDをベースにした美しいクーペとカブリオレのプロトタイプにほれ込み、商品化を申し入れる。両者は即座に合意し、翌53年アーノルトMGベルトーネとしてニューヨークで市販型が発表された。

リア

 MG-TDと同じ2388mmのホイールベース上に載るボディのサイズは、4080×1520×1330mm。オリジナルの3683×1473×1346mmに比べて、長く、広く、低くなっていた。

 メカニズムはTDそのもので、エンジンは54psを発揮する1250ccの直列4気筒OHVを搭載。トランスミッションは4速マニュアル、駆動方式はFRだった。

 アーノルトは当初、「クーペとカブリオレを合わせて約200台生産し、ほとんどを北米で売る」予定だった。しかし実際の生産台数は103台といわれる。予定を下回ったのは、発表時の1953年にMGがTDを次世代のTFにモデルチェンジしたことや、アーノルトが英国製2リッタースポーツカー、ブリストルにベルトーネのスペシャルボディを架装するプロジェクトをスタートさせたことが影響した。ちなみに、アーノルトMGには、TF用1466ccエンジンを積んだモデルが、少数存在する。

室内

 取材車は、2000年ごろに輸入され、日本でフルレストア作業が施されたクーペモデル。レストア後、時間が経過しているが、ガレージ保管で定期的にメンテナンスを受けてきたため、内外装のコンディションは素晴らしい。ボディカラーは落ち着いた印象のピーコックブルー、インテリアはレッドのコノリーレザー仕上げ。この組み合わせはエンジンルームに装着された車両プレートの記載と同じ。つまり新車時のカラーと仕様を維持している。この車両には、イタリアのクラシックカー協会、ASIによる「オリジナルモデル認定証」が付帯している。

 ホイールはMG-TD用のセンターロック式ワイヤー仕様。タイヤは155SR15サイズのミシュランを装着していた。
 室内は、スポーツカーというより、高級GTのイメージ。そしてスペースは意外なほど広い。足をゆったりと伸ばしたドライビングポジションがとれる。後席スペースも用意され、車検証上の乗車定員は4名。

エンジン

 走りは軽快だった。エンジンは力強く、3000rpmをリミットにギアチェンジしていっても交通の流れをリードする。ラック&ピニオン式のステアリングは、確実な手応え。ミッションは1速がノンシンクロ。2、3、4速がシンクロ付き。シフトフィールは良好だ。70年以上前のクルマとは思えないほどよく走る。しかしドラム式ブレーキの制動力は弱い。

 信頼性の高いMGのメカニズムと、名匠ベルトーネのスペシャルボディ。そして独自のヒストリーを持つアーノルトMGベルトーネは、名車の資質を備えている。味わい深い希少車である。

正面

諸元

エンブレム01

エンブレム02

エンブレム03

 

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