日本のミニカーの草創期、モデルペットは、当初から世界標準であるダイカスト製法を採用した。一方で、大盛屋のミクロペットは、アンチモニー合金という日本独自のミニカー製法を採用した。
アンチモニー製のミニカーは、メーカーにとって複数のメリットがある。最大のメリットは、簡易な金型で作れるということだ。まるで鯛焼きを作るような金型なので、ダイカスト用と比べると桁違いにコストが安い。
また実車のマイナーチェンジに合わせた金型修正も容易だ。一方で、製造工程の大部分が手作業になるため、一日の製造台数は100台程度が限界で、しかも柔らかい金属を使うため、ちょっとした衝撃で壊れてしまう。
コレクターにとっては、ダイカスト製より重量感が強く、塗装前のボディを一度下メッキしているため、塗装が輝いていてみえる。しかも、フロントグリルやモールをマスキングして塗装すると、よりリアリティの高い表現が可能になる。
ボクは、アンチモニー製のほうが好きなのだが、あまりにコストがかかり過ぎるのと、生産量が限られるので、倒産した大盛屋の金型を引き継いだダイヤペットも、しばらくするとアンチモニーのミニカー製造をやめ、ダイカスト製に転換した。
ただ、アンチモニー製のミニカーを求めるコレクターはそれなりに多く、1990年代から、ミニカーショップが主導する形でアンチモニー製のミニカーが復活することになった。
最初は、ミニカーショップ・イケダが作った“ファインモデル”ブランドだった。それに続いたのが、アイアイアドが創設した“アドバンスピリット”で、このブランドでリリースされたアンチモニー製のミニカーは40車種を超え、最大のブランドとなった。
そして、最後に登場したのが、“ブリリアントモデル”だ。どこのショップが主導したのか、記憶がないのだが、登場したのは、品番1のセドリックバンと、そのバトカー仕様などのバリエーション、そして130型セドリックセダンの2金型だけで終わってしまった。
この数年、アンチモニー製のミニカーは、まったくリリースされていない。人気が衰えたというより、アンチモニー製のミニカー作りを担ってきた職人たちが高齢化して、もはや製造が不可能になってしまったからだと思う。いま見ても、素晴らしい出来なので、とても残念だ。