ダイハツ・ミゼット「東芝サービスカー仕様」

ダイハツ・ミゼットは1957年にデビューした。軽自動車枠を活用して、小型で手ごろ価格設定と、高い信頼性を追求して誕生。小規模の配送需要に焦点を当て、マーケットの開拓に成功。1972年まで生産が続けられた。日本の自動車史の中で異色の存在感を放つミゼットだが、ミニカーとしてはあまり商品化されていない。ここで紹介するミゼットはアシェットが2019年に発売した『懐かしの商用車コレクション』のラインアップ。黄色と赤にペイントされた、東芝サービスカー仕様だ。

『懐かしの商用車コレクション第1号

森永卓郎さん160.jpg■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

 ダイハツ・ミゼットは、ミニカー化という面では、不幸な歴史を抱えている。現役バリバリでミゼットが活躍した1960年代は、日本のミニカーの草創期で、まだ制作数が多くなかった。そのため、人気の高い高級車やスポーツカーに出番を取られて、ミニカー化されなかった。

2020年3月号森永卓郎さんHP写真.jpg▲ダイハツ・ミゼットは1957年にデビュー テレビ番組の中で放送したコマーシャルが話題に 東芝は1960年に21型サイズのカラーテレビ(日本初)の販売を開始

 しかし、庶民の暮らしに密着したクルマだっただけに、近年になって、ミニカーメーカーが次々にミゼットを発売している。最近ではペットボトルのおまけやガチャガチャにまで登場するほどだ。

 そうした中、素晴らしいモデルが登場した。アシェットの『懐かしの商用車コレクション』シリーズの創刊号にミゼットの東芝サービスカー仕様が登場したのだ。

 赤と黄に塗り分けられた東芝サービスカーは、ダイヤペットが中東輸出用の特注品としてクラウンのバンをベースに作ったのが最初。その後、東芝サービスカーは、アンチモニー製のJ-43がクラウン・マスターライン仕様を、トミカリミテッドビンテージがいすゞエルフ仕様を作っている。カラーリングが美しく、見栄えがするからだろう。そうした中でも、このミゼットは、東芝のロゴが入った段ボールを積載するなど、細かく作り込まれていて、最高の雰囲気をかもし出している。

 ただ、ボクはこのミゼットの入手に出遅れてしまった。『懐かしの商用車コレクション』シリーズが発売になった19年7月の時点では、広島の書店限定で試験販売されたからだ。そのときすぐにネット書店で手を打てば入手できたのだが、「これだけ魅力的なシリーズは、絶対に全国展開になるはずだ」と呑気に構えていた。ところが、定期購読の受け付けが始まっていたにもかかわらず、広島での試験販売は第4号までで終わってしまい、いまのところ全国販売になる気配はない。

 第2号のホンダT360ヨコハマタイヤ販売店仕様、第3号の日産サニートラック日産サービスカー仕様、第4号のスバル・サンバー明治牛乳配達仕様も素晴らしい出来だったので、全国販売されないのが残念でならない。

 広島であまり売れなかったから打ち切りになってしまったのかもしれないが、だったらその売れ残りはどこに行ってしまったのだろうか。このシリーズの人気が高いことは、ヤフオクやメルカリなどで、かなりのプレミアムがついている実情からも明らかだ。

 今年のサプライズで発売してくれると、ボクはとてもうれしい。

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