【Z世代のクルマ談義】若者世代にとって重要な要素は“買える価格”。カーライフの入り口となる商品をやってみたい(2026年9月号)

 近年のBEV(バッテリー電気自動車)は、各自動車メーカーからさまざまな車種が展開されています。王道は都市型SUVですが、個性あるコンセプトを持った車種も増えてきました。そんなBEVに対しては「若者のほうが自然に受け入れられるのではないか?」という声もあります。

 話題のホンダの新型BEV、Super-ONEの商品企画を担当した祝迫蒼悟さんは、当初から「BEVポジティブ派」のひとりです。どのようにしてBEVポジティブ派にいきついたのか? そして率直に現在の若者がクルマに興味を持つにはどんなアプローチが必要なのか? “メーカーの若手”の考えから見えたものがありました。

 祝迫さんは1999年生まれの26歳、現在は本田技研工業株式会社の営業企画部・商品企画課勤務。将来投入するモデルの商品企画を担当していて、Super-ONEはご自身が中心となって携わった初めてのモデルです。元々法人営業部に在籍していた際にN-VAN:eの販売企画を担当しており、そのノウハウを生かすためにSuper-ONEの商品企画を担当されることとなったそうです。

いわいさこそうご/1999年生まれ、神奈川県出身。小学校から高校までサッカーに取り組んだ後、大学は経済学部へと進学。ホンダのバイク、レブル250と大学時代を過ごし、2022年に本田技研工業株式会社へ入社。法人営業部でN-VAN:eの販売企画を担当したのち、商品企画へと異動。Super-ONEは商品企画として初めて中心的に携わったモデル

 筆者が祝迫さんをBEVポジティブ派と表現したのは、お話されていた大学時代のエピソードにありました。

「経済系の学部で好きなテーマを卒論のテーマに選べたのですが、そこで『自動車メーカーの今後』というテーマにしました。いろいろと調べを進めていく中で、技術がどんどん進む運転支援システムやSDVといった今後の自動車の中心となる技術はBEVとの相性がいいですし、制御のしやすさという観点からもBEVは必要だと強く思いました。そのような調べから自動車メーカーに引かれました。その中で、BEVに携わるなら……という観点で絞ったこと、大学時代はバイクを所有していて2輪・4輪ともにその乗り味に引かれていたこと、またボトムアップな社風などがありホンダを選びました」

父は「BEVは買わない」といっていた

 静粛性やトルクフルな走りといったBEVだと話題に上がりやすいポイントよりも、今後の技術との協調性という観点でBEVに引かれたと語る祝迫さんですが、クルマ好きの両親のもとで育ち、世間が思うようなBEVポジティブ派ではない環境だったそうです。

「両親ともにクルマ好きで、いろいろなクルマを乗り換えていましたが、記憶に残っているところだと母親が乗っていた日産ステージアの260RSが一番好きでした。ミニカーはいまでも手元にあります」

 ステージア260RSといえば、スカイラインGT-Rが搭載していたRB26DETT型エンジンを搭載したスペシャルなツーリングワゴンです。祝迫さんのご家族は、280㎰のターボパワーを存分に味わっていたことがわかりました。そんな経験があるからか、「父は元々『BEVは買わない!』といっていました」と祝迫さん。

 ところが、「ありがたいことに、そんな父がSuper-ONEを契約してくれたのです。私自身、幼少期からクルマには興味がありましたが、最初からBEVがいいぞ!とは思っていなかったですね」

 ここまで、この企画では祝迫さんを含め3名の方と対談してきましたが、3人とも親御さんの影響でクルマが好きになった、という共通点を持っています。育つ環境はその後の趣味趣向に大きな影響があることが改めてわかりました。同時に、次世代のクルマ好きを増やすならば子供のころからクルマに興味を持たせるキッカケや環境が重要なのか、とも思いました。

 Super-ONEは、祝迫さんが初めて商品企画の中心的立場で携わったモデルです。このクルマの生い立ちは“開発陣が作りたいものを作った”といった形だったそうで、祝迫さんが加わったときにはすでにある程度まで輪郭が完成されていたそうです。そのような中で祝迫さんが若手としてこだわったのは価格設定だったといいます。

若者にも“買える価格”へのこだわり

「もちろん、私だけのこだわりで価格を決められるわけではないですが、若い人にも検討してもらえるような値段にしたかったのです。正直にいえば装備内容の兼ね合いもあって、ホンダ車は他の同クラスのライバルと比べて高いなと感じています。ですが、一度乗っていただければホンダのクルマのよさは伝わると思っているので、このSuper-ONEがその入り口のひとつになれれば……という思いがありました。」

 価格は多くの人にとって重要な要素ですが、われわれ若者世代にとってはとくに重要です。価格が安ければ、購入の検討リストに入る……というのは同世代の知人からも聞く話です。最初にどのメーカーを選ぶかで、クルマ人生が大きく左右されるともいえるので、若い人に選んでもらえる価格であるか否かは自動車メーカーにとっても重要です。

にしかわしょうご/1997年生まれ、富士スピードウェイの近くで生まれ育つ。大学時代から自動車ライターとして活動開始。さまざまなメディアで自動車記事を執筆。定期的なサーキット走行や自身でのモータースポーツ参戦を通して運転技術の鍛錬も忘れない。目指すは「書けて、喋れて、走れる自動車ジャーナリスト」。2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

 それは祝迫さんも実感しているようで、「カーライフの入り口から出口を完成させたい」と語っていました。

カーライフの入り口づくりへの意欲

「もし携わせてもらえるのであれば、次は新たな軽自動車をやってみたいですね。その理由は、入り口となる商品をやってみたいからです。N-BOXはありがたいことにご好評いただいていますが、ライバルに比べると購入年齢層が高いのです。ホンダというブランドが今後も世代を超えて愛されるためには、若い人から“いいな”と思っていただける、リーズナブルな軽自動車が必要だなと思っています。その後はライフステージに合わせてホンダ車を選べるような展開にして、カーライフの入り口から出口までを作ることに携われたら一番望ましいですね」

 金額も当然、重要なテーマですが、いま以上に多くの若い人がクルマに興味を持つには「クルマと共にすることで、どのような世界が広がるか?」というイメージや体験価値をアピールしていくことも重要だ、と祝迫さんは強調していました。  

“クルマに乗って得られる生活の体験価値”というものは、一度味わうと手放せない、と筆者は考えていますが、どのように同世代にアピールするべきか……というのは難しいものだなとも感じていることです。

 祝迫さんの言葉を聞いて、それは業界全体で共通して悩んでいるテーマなのだと感じた時間でもありました。

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