【最新モデル試乗】モータースポーツを感じるメルセデス。最新AMG・GT63クーペの豪放、上質パフォーマンス

メルセデスAMG GT63 4MATIC +COUPE/価格:9SATC 2750万円。新型は従来モデルのパフォーマンスとイメージを継承して正常進化。キャビンは2+2にも対応。ロングノーズが印象的

メルセデスAMG GT63 4MATIC +COUPE/価格:9SATC 2750万円。新型は従来モデルのパフォーマンスとイメージを継承して正常進化。キャビンは2+2にも対応。ロングノーズが印象的

スーパーパフォーマンスながらしっかり快適。最新AMGの完成度は抜群!

 もはやメルセデスというブランドをSUVがデフォルトと認識している人は多いと思う。コンパクトカーからフルサイズまでさまざまなバリエーションが用意され、パワーソースは内燃機関の他にBEVのEQシリーズもあるからだ。事実、街中では多くのメルセデスSUVが走っている。

 一方で、「メルセデスといえばスーパースポーツ!」なんてイメージする人も少なくない。戦前のグランプリレースや1950年代のル・マン24時間レース、それと今日のF1を鑑みれば腹落ちする。彼らの歴史を紐解けば、レースとの距離はかなり近い。

走り

エンジン

 近年それを具現化しているのがAMGだ。かつての独立系チューナーも、いまは懐に入りメルセデスAMGとなる。しかし、その熱いスピリッツは消えていない。モータースポーツのノウハウを持って市販車の開発を続けている。SLS AMG、初代GT 2ドアクーペ、GT 4ドアクーペ、SLなどがソレ。それ以前はマクラーレンとコラボしていたが、AMGが「自分たちにやらせてほしい」と願い出てこれらのモデルが生まれた。まぁ、イマドキ風にいえば社内ベンチャー的なイメージである。実際、社内なのでコスト管理を厳しくし、AMG作のスーパーモデルはマクラーレンSLRの半額以下の販売価格で売られた。

 それはともかく、新型AMG GTクーペである。春に日本でも正式発表されたこのクルマは2014年にリリースされた第1世代を進化させたもの。モータースポーツ分野を含め10年間活躍してきたモデルのバージョンアップ版だ。変更点はさまざまでフルモデルチェンジとも呼ばれるが、個人的にはそうではないと思う。基本路線は変わっていないし、大幅な技術革新はない。それに、この手のモデルははじめから完成度が高いので、後から手を入れにくいという事情もある。メルセデスが定義するロングノーズ&ショートデッキのプロポーションは普遍だ。

リア

インパネ

 デザインは彼らの他のモデルと合わせるために進化した。メルセデスのデザイン言語「センシュアル・ピュリティ」+「AMGのDNA」をより現代的に解釈している。縦のラインのワイドグリルやLEDのデイタイムライトなどがそう。至ってモダンである。

 ボディフレームは、アルミニウム、スチール、マグネシウム、カーボンといった素材を組み合わせて成形する。目的は剛性アップと軽量化で、新型はそれを向上させた。形状は今回2+2シートを採用するのとフロントアクスルを駆動させるため再設計している。

585psを見事に飼い慣らす。快適にして豪放な自在世界

 パワーソースはこれまでと同じ4リッター・V8ツインターボで、最高出力585ps、最大トルク800Nmを発揮する。2基のタービンはバンク角の内側に収まるホットインサイドV。オイル潤滑はドライサンプ式となる。エンジン型式はM177。従来型のM178とはヘッド回りやプログラミングが異なる。ちなみに従来型のトップエンドに君臨するAMG GT Rは最高出力585ps、最大トルク700Nmだった。

走り02

タイヤ

 気になったのは「ダイナミックエンジンマウント」と呼ばれるアイテム。これは磁性流体と円環状コイルが作る磁界強度を変化させマウントの硬さを無段階で調整する。エンジンの振動をシャシーに伝えるのを和らげるのだ。この効果はそのまま乗り心地に直結するだけにありがたい。

 この他ではAMG 4MATIC+が注目ポイント。走行状況やドライバーの操作に応じて前後トルク配分を50対50〜0対100まで連続可変させる。要するにRWDを基本形とし、コーナリングでフロントにトルクが必要と思われれば自動配分してくれる。これはオーバーステアの際に役に立ちそうだ。

 実際に動かした印象へ話を移そう。総体的にはかなり快適。乗り心地もそうだし操作性も悪くない。パドルシフトもドライブモードの切り替えもACCの作動も、ステアリング上でスッとできるのがいい。乗り心地に関してはドライブモードを「スポーツ+」にしてもグッド。当然足は引き締まるが、いきなり突き上げが激しくなったりはしない。どこまでもジェントルなのがメルセデスらしい。
 とはいえ、「スポーツ+」ではエグゾーストノートが刺激的になり、アクセルの踏み方しだいではエンジンがけたたましく吠え始める。それと同時にドライバーのアドレナリンが分泌されるのでご用心。窓の外の景色がとんでもないスピードで流れる。

前シート

後シート

 ただ今回は一般道と高速道路がメインの試乗。それは瞬間的にしか味わえなかった。確か10年前のデビュー時は富士スピードウェイで試乗会が催された気がするんだけど……。やはりサーキットで乗りたいクルマである。コースに持ち込まない限り、このクルマの本性とは出会えない。一般道ではその手前の快適性と安全性の高さばかりが印象に残る。

 というのが今回のファーストコンタクト。そういえば新型には2+2シートがあるのを付け加えておこう。そちらはリアシートが倒せるのでラゲッジの使い勝手が上がる。キャディバッグ2本は軽く収まるはず。こんなクルマでゴルフ場行けたら最高だ。
「攻めるところは攻め、守るところは守る」、そんな大人のラウンドが楽しめる気がする。

ラゲッジ

エンブレム

諸元

 

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