【最新技術】新型アコードに触れて実感。新世代ホンダe:HEVハイブリッドはトヨタを超えたかもしれない

ホンダのハイブリッドはe:HEVシステムが主力。中でも新型アコード/ZR-V/シビックは発電主体の2ℓエンジンとモーターの連携を徹底的にファインチューンした新世代。良好な燃費と力強い走りが魅力

ホンダのハイブリッドはe:HEVシステムが主力。中でも新型アコード/ZR-V/シビックは発電主体の2ℓエンジンとモーターの連携を徹底的にファインチューンした新世代。良好な燃費と力強い走りが魅力

ホンダe:HEVハイブリッドは効率と走りの良さを追求

 2050年のカーボンニュートラルを目指すホンダは、すでに電動化に本格的に取り組んでおり、これまで世界で350万台以上の電動車をユーザーに届けてきた。中でも4輪車向けに2013年に送り出した独自の2モーターハイブリッドシステムは、重要な位置づけとなっている。
 当初は「スポーツハイブリッドi-MMD」と呼んだ同システムは、2020年に「e:HEV」と改名され、2リッタークラスだけでなく、1.5リッタークラスのフィットやヴェゼルにも展開された。

アコード

新型アコードは、2ℓアトキンソンサイクルエンジン(147ps/182Nm)と新開発高出力モーター(184ps/335Nm)を採用した2モーター内蔵式CVTでシステムを構成。モーターとエンジンで個別にロックアップギアを設定することで走りをリファイン

新型アコードは、2ℓアトキンソンサイクルエンジン(147ps/182Nm)と新開発高出力モーター(184ps/335Nm)を採用した2モーター内蔵式CVTでシステムを構成。モーターとエンジンで個別にロックアップギアを設定することで走りをリファイン

 e:HEVは、エンジンと発電用と走行用2つのモーターを内蔵した電気式無段変速機と直結クラッチを組み合わせている。モーターによる駆動を主体にし、エンジンは主に発電を担う。高いエネルギー効率を追求し、走行状況に応じてモーターとエンジンをシームレスに切り替えるシリーズパラレル方式を採用している点が特徴だ。

 市街地の発進~低速走行のようなエンジン効率が悪い領域では、エンジンを止めてバッテリーが残っている限りモーターでEV走行する。強く加速したいときには、「燃料消費の低いボトムラインをトレースできる、高効率のシリーズで走行する」と資料には記載されている。難解だが、読み解くと要はハイブリッドモードである。バッテリーの電気では不足する状況になるとエンジンをかけて発電用モーターを回し、その電気で走行用モーターを動かし、EVモードと同様に走行する、ということだ。発電されたうち一部はバッテリーに充電される。
 一方、高速巡航時にはエンジンを直接クラッチで駆動軸につなぐ。エンジンの出力を主体に走行しつつ、加速時などで駆動力が不足する場合には走行モーターが駆動力を補う。

 一般的なシリーズ式だと高負荷運転では多くの電力をモーターに供給する必要があり、エンジンを高回転で回すことになる。その結果、燃費が悪化したり、最高速が伸びないなどの問題が生じる。エンジンで走行するe:HEVならその弱点はない。

走り

 他社や現在のフリードが使用するシステムのようにモーターがエンジンをアシストするのではなく、e:HEVはエンジンでの駆動を高速巡航時などに限定し、シリーズ式とパラレル式のいいとこ取りをして圧倒的な低燃費と上質で爽快な走りを実現したシステムである。

 そんなe:HEVも登場から10年あまりの時間の経過、進化を重ねてきた。IPU(インテリジェントパワーユニット)は小型軽量化され、トランクからリアシート下に移されるとともに、さらなる小型軽量化が進められている。
 高出力密度のPCU(パワーコントロールユニット)も開発され、こちらも小型化と高性能化を図ったほか、エンジンについても高効率領域の拡大を図ってきた。効率と性能だけでなく、静寂性やサウンドの向上も図られている。ハードと制御の進化により、さらなる上質で爽快な走りを追求してe:HEVは進化を遂げてきた。

 最近では新型アコードにも採用された、エンジンへの直噴高圧多段噴射の採用がニュースだ。これとEGRの増強により、ノッキングを抑え、さらに燃焼安定性が高まった、積極的にエンジンを使える領域が広がったのである。最大効率のピークがより高くなるとともに、裾野が広がったイメージだ。
 新型アコードでは、従来は同軸に配置されていたエンジンと走行用モーターを並行に配置してコンパクト化を図った。これは将来的に小型車を含むより多くの車種に展開する際に搭載しやすいことを見据えての手法。また、モーター走行での最高速度の向上とエンジン走行時の低回転化が図れるよう改良されている。

アコードに採用した最新型はインテリジェントな各種制御が印象的

 新型アコードに、修善寺の伊豆サイクルスポーツセンターで試乗。新旧を乗り比べた。進化は明らかだ。従来型もごく普通に公道で何度か乗ったときにはよくできたクルマだと感じていたのだが、クローズドコースで乗るとアラが目立つ。

走り01

走り02

新型アコードの走行モードは全5種。ECON/コンフォート/ノーマル/スポーツに加え、自分好みのセッティングが可能な“インディビジュアル”を設定。フットワークはスポーティ。全域で静かなのも印象的

 なにより気になるのはラバーバンドフィールだ。従来型は出足がゆるやかで、アクセルを踏むと加速してないのに思ったより回転が上がってそのままはりついてしまう。アクセルをもどしてもエンジン回転は高めにキープされ、リニアではない。出来のよろしくないCVTのイメージだ。
 絶対的な加速性能では従来型も踏めばそれ相応に車速は出るが、そこにいたるまでのフィーリングが気持ちよくない。新型は断然違う。リニアで自然、そして力強い加速が楽しめる。

 減速セレクターにも差がある、従来型は高速道路で車間距離を微調整することを想定して、あまり減速度が出ない中で4段階に区切られている。状況によってはブレーキを踏む必要がある。対して新型は減速セレクターが6段階となり、ワンペダルモードを選ぶとしっかり減速する。アクセルペダルだけで減速も含め車速をコントロールしやすい。ワインディングロードなら踏み換える必要がない。

 少々意外なのは新型でもエンジンが思ったよりもかかることだ。電動化を高めたというと、もっとBEVに近づいてエンジンがかからないのかと思ったら違った。これは高効率のエンジンを適宜よく動かすことで、よりインテリジェントなEV走行を実現しているための制御という。聞いたところでは、従来はあらかじめエンジンをかけて待っていることができなかったところ、効率が向上した新型ではできるようになったのだという。

 車速が高いためとかエンジンが冷えたとか、EVモードに入らない理由が頻繁に表示されることも印象的だった。新型はディスプレイの電動に関する表示に先進感がある。エンジンがかかったときの音についても、もともとスピーカーを駆使して、消したり足したりやっていたようだが、新型は軽やかで上質な音になっている。エンジンがかかっても気にならない。新型の印象は上々だった。ホンダe:HEVは、新たな段階に進歩している。

アコードのインパネは最新ホンダ車共通イメージの水平基調デザイン。12.3inセンターディスプレイとバイザーレスの10.2inメーターを組み合わせる。インフォテインメント機能は充実。音声で多彩なコントロールができる“Googleビルトイン“を搭載する

アコードのインパネは最新ホンダ車共通イメージの水平基調デザイン。12.3inセンターディスプレイとバイザーレスの10.2inメーターを組み合わせる。インフォテインメント機能は充実。音声で多彩なコントロールができる“Googleビルトイン“を搭載する

3台走り

 

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