アルピーヌA110の試乗会が行われた。久しぶりである。前回のドライブは箱根ターンパイク。アルピーヌA110 GTの走りと仕立てに心奪われ、帰宅後購入を真剣に検討しながらコンフィギュレーターをいじったことを覚えている。ネイビーのボディカラーにブラウンのインテリアがじつに大人でカッコよかった。さすがメイド・イン・フランス。目をひく色が画面の中にたくさん並んでいた。
そして今回、テストドライブのステージを長野県・車山高原に移して試乗会が行われた。広報部曰く、「アルプスの名前がついているブランドですから、そんな雰囲気が感じられる場所を選びました」と。なるほど、である。推奨コースは3パターンのワインディングロードが用意されていた。
新規にアレンジされたラインアップは3種。その前にA110が内燃機関最後のモデルとなることを忘れてはならない。アルピーヌはロータスやジャガーの例に漏れずBEV化計画が進んでいる。大きなグループの中の小規模ブランドの宿命だろうか。その意味でも今回の試乗会は感慨深い。
試乗車の顔ぶれはスパルタンな「A110 R70」、GTの後継となる「A110 GTS」、それとスタンダードモデルの「A110アニバーサリー」。A110 R70の「70」は1955年設立から今年で70周年を迎えたことを指している。戦後誕生したブランドでももう70周年なのだから時間の経過は早い。A110アニバーサリーの「アニバーサリー」もまた周年を祝った限定車となる。
まずはA110 R70だが、このクルマの特徴は軽量化にある。ボンネット、ルーフ、リアフード、リアスポイラー、18インチのホイールをカーボンで成形している。そもそも「軽さ」が売りのアルピーヌであるが、さらにそこを磨いているのだからすごい。結果、車両重量は1090㎏。削れるところを頑張って削ったといった感じだ。さらにいえば、ディフューザーやサイドスカート、スワンネックタイプのリアスポイラーマウントでダウンフォースを稼いでいる。5点式シートベルトと合わせ、レーシーな走りに特化しているのはいわずもがなだ。
走った印象はまんまレーシングカー。操作系すべてにダイレクト感があって、ソリッドな手応えが伝わってくる。アクセルやブレーキに遊びは少なく、踏んだら踏んだ分だけ機能を発揮する。もちろん、乗り心地もそのベクトルの延長線上にあり、路面からの入力はシートを通じてそのままドライバーへ伝わる。かなり高めのバネレートだろう。明らかにサーキット走行を前提としたセッティングである。ハマる人にはハマる仕上がりだ。
エンジンは1.8リッター直4ターボをミッドにマウントする。最高出力は300㎰、最大トルクは340Nmを発生する。組み合わされるギアボックスは7速DCTだ。
次に乗ったA110 GTSはそれまでのA110 GTのGTカー的装備をスライドしながら、足回りはA110 Sに提供されていたシャシースポールをベースとする。よって走りはA110 Sを進化させたもの。A110 GTが表現していた大人っぽさは姿を消した。きっとそういったニーズが多かったのだろう。小規模メーカーはダイレクトに顧客の意見が伝わるので、それを反映する傾向が強い。
走らせた印象はA110 R70まではいかずとも、スパルタンなことは間違いない。パワーソースのスペックはA110 R70と同じ300㎰/340Nmだ。
かつて本気で購入を考えたA110 GTの後継になるのは、A110アニバーサリーだった。このクルマの乗り心地や走りは絶妙に日常領域にとどまってくれる。サスペンションの動きはしなやかで快適。ストロークが長くなったわけではないのだが、そんなフィーリングを与える。それでいて小気味よくワインディングを駆け抜ける。ミッドシップらしくドライバーを軸に鼻先の向きを変えるのは気持ちがいい。この動きが嫌いなカーガイはいないはずだ。
エンジンスペックは最高出力252㎰、最大トルクは320Nm。RやGTSと比較すると控えめだがパワー不足のイメージは皆無だ。速さは一級品である。なんたって車両重量は1120㎏。パワーウェイトレシオは4.44㎏/㎰にすぎない。
最後にプライスだが、トップエンドのA110 R70は1790万円、中間のA110 GTSが1200万円。そしてA110アニバーサリーは960万円となる。R70とアニバーサリーの価格差は830万円だからほとんど2倍だ。ひとつのモデルでこれだけ差があるのはポルシェ911くらいだろうか。あちらもGT3やGT2、ターボSといった “スペチアーレ”が存在し、標準的なモデルのダブルプライスになる。これは、そのモデルの基本骨格のよさを物語っているといえる。そこがダメだとどんなに強力なパワーソースを積んでもボディやシャシーが付いて来られない。
それを鑑みても、A110アニバーサリーはいいクルマである。煮詰めればどんどんスパルタンに豹変する潜在性能を持つ。といったアルピーヌA110を注文するなら待ったなし! 日本での受注は2026年3月末で終了する。もはや一期一会。気に入ったら即買いするのがアルピーヌとの正しいつきあい方となる。
