セクシーロボットに込める情熱と反骨精神/空山基さんの代表作・好きな作品

“NEXT STANDARD”をモットーに、
ジャンルの座標軸となる作品を
「セクシーロボット」の透明感、光、反射の表現が冴える

 女性の曲線美とロボットを融合させた「セクシーロボット」シリーズ(イラスト&立体作品)で知られるイラストレーターの空山基さん。オリジナリティあふれる深く繊細な思考と反骨精神が光ります。

「ロボット」という言葉は、チェコの作家カレル・チャペック(1890〜1938年)の戯曲『R.U.R.(ロッサムの万能ロボット)』(1920年)で初使用された造語。一方、人間型ロボットを指す「アンドロイド」の初使用は、フランスの作家ビリエ・ド・リラダン(1838〜1889)の小説『未来のイブ』(1886年)です。

作品①「無題」/アクリル絵具 onイラストレーションボード/サイズ:B2(728×515mm)

 作品①は、ヒンデンブルグ号飛行船と、同時代の映画『メトロポリス』のマリアです。ともに悲しい物語があります。

 1937年、世界に衝撃を与えたドイツの旅客飛行船ヒンデンブルグ号爆発事故は、ニューヨーク近郊レイクハースト海軍飛行場で起こりました。これにより、グラーフ・ツェッペリン号の世界一周にわき立った飛行船時代は終幕。

作品②「無題」/アクリル絵具 onイラストレーションボード/サイズ:B2(728×515mm)

『メトロポリス』(1927年公開)はドイツのサイレント映画。100年後の未来社会で富裕層と労働者階級の闘争により、映画史上もっとも美しいアンドロイドは火に包まれます。工業立国ドイツの繁栄と悲劇のイメージも重なります。

 作品②と③は、B-25ノースアメリカン爆撃機です。1941年の真珠湾攻撃の報復として、米国大統領の肝いりで“東京本土空襲せよ”との命令が下り、白羽の矢が立ったのは空母発進可能な軽量爆撃機、ノースアメリカンB-25ミッチェルでした。1942年4月18日、Doolittle作戦決行。

作品③「無題」/アクリル絵具 onイラストレーションボード/サイズ:B2(728×515mm)

 空母作戦室では“作戦参加希望者は挙手を”との同調圧力がかかり乗組員は全員参加。武器をすべて取り払った軽量爆撃機は空母ホーネットから発進後、無謀な長距離飛行のためパイロットやクルーの多くは帰還できませんでした。この爆撃機は愛国米兵義勇軍のシンボルであり、自爆をもいとわぬ悲惨作戦の飛行機でした。軍事、政治、経済、文化でも日本を席巻したアメリカのシンボルを表したイメージです。

そらやまはじめ/1947年、愛媛県今治市出身。1971年からフリーランスのイラストレーターとして国内外を問わず幅広く活動。個展開催、画集出版、受賞作品など多数。詳細はホームページ(www.nug.jp、www.nose-art-pinups.com)参照。AAF(オートモビル・ アート連盟)会員

インタビュアー/山内トモコ:TOKYO-FMパーソナリティを20年以上つとめ、インタビューした人1000名以上。映画評論家・品田雄吉門下生。ライター&エディター

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