古河ロックドリルのトンネル採掘作業車

古河ロックドリルという会社は、トンネル工事の現場などで見かける社名だ。ロックドリル(トンネルドリルジャンボ)は、アームの先端のドリルで掘削し、掘削した穴に爆薬を仕掛けてトンネルを掘る大型車。アームの種類によって車両のサイズは変わってくるが、全長は約16mにも達する。森永卓郎さんが入手したミニカーは43分の1という標準スケール。それでも全長は約38cmにもなる。標準スケールとはいえ、ディスプレイするには大きなスペースが必要だ。建設機械はミニカーの世界で人気が高いが、こうした大型モデルになると市販されるケースがマレで、販売された場合でも価格は高いとあって、コレクションには苦労が伴う。そうした苦労を覚悟してでも、集めたくなく魅力がある、と森永さんはエッセイで綴っている。

トンネル工事の現場で大活躍

森永卓郎さん160.jpg■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

2020年4月号森永卓郎さんHP.jpg▲古河ロックドリル JTH3200R-VHプラス(3ブーム2ケージ油圧ホイールジャンボ) エンジンは5.1リッターディーゼル(160kW) 4WD

 この連載では、建設機械のミニカーは、あまり採り上げていないのだが、とても珍しいミニカーが入手できたので、ご紹介したいと思う。

 写真のタカアシガニのような外見のクルマは、古河機械金属のグループ会社、古河ロックドリルが製造・販売しているロックドリル(トンネルドリルジャンボ)という車両だ。

 硬い岩盤の山などにトンネルを掘るときに使うクルマなのだが、使い方がちょっと変わっている。まず、アームの先端についているドリルで、岩盤に複数の穴を開ける。そしてケージに乗り込んだ作業者が、その穴に発破(爆薬)を仕掛け、爆発の威力で掘り進んでいく。もちろん、爆発の際には作業者と車両は退避する。

 古河機械金属という会社は、もともと足尾銅山の掘削に携わっていて、長い歴史がある。同社の建設機械は耐久性や信頼性が高く、圧倒的なシェアを持っているという。

 一般の人がトンネル掘削工事の現場を見る機会は、ほとんどない。だから、ロックドリルの存在そのものが、ほとんど知られていない。ボクもテレビ番組『がっちりマンデー!』(TBS系列)で取り上げるまで、ロックドリルを知らなかった。世間の認知が少ないから、当然、ミニカーメーカーがモデル化する機会はなかった。

ロックドリル横が見える.jpg▲全長は15910〜17090mm(ガイドシェル:銀色の部分3400〜4600㎜は含まない)

 写真のミニカーは、古河機械金属が、関係者に配布するために特注で作った非売品だ。ミニカーの全長は38cmもあり、大変な迫力だ。ただ、実車の全長が約16mもあるため、縮尺は43分の1の標準スケールということになる。

 実は、こうした働くクルマは子供たちにも大人気で、トミカでも売れ筋商品は乗用車ではなく、働くクルマなのだそうだ。ただ、トミカだとよいのだが、標準スケールの建機を集めようと思うと、大きな展示・収納スペースが必要になる。しかも、古河機械金属だけでなく、他の建機メーカーも顧客配布用の非売品を作っているので、それを集めるのは至難の業だ。

 最近はネットオークションやフリマアプリの普及で、昔に比べたら入手が簡単になった。それでも出回る台数が少なく、かなりのプレミアムもついている。建機コレクターは、こうした困難が待つ茨の道を歩まなければならない宿命を負っている。

 ただ、そうした事情を承知していても、いまボクの中には茨の道に踏み込んでしまいたい衝動が、ふつふつと湧き上がっている。このロックドリルのミニカーは、それほど素晴らしい出来栄えだ。

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