KYBが発売した次世代セミアクティブサスペンション「ActRide」は、アフターマーケット向けとしては珍しい、本格的な電子制御ダンパーシステムだ。最大の特徴は、車両側の制御システムに依存せず、専用コントローラーに内蔵した6軸IMU(3軸加速度・3軸角速度センサー)だけで車両の挙動を検知し、減衰力をリアルタイムに制御する独立型システムを採用した点にある。
電子制御ダンパーには応答性の高いソレノイドバルブを採用。従来のステッピングモーター式が約80msで段階的に減衰力を切り替えるのに対し、ActRideは約10msという高い応答性と無段階制御を実現している。これにより路面入力や操舵、加減速に応じて瞬時に減衰力を変化させ、乗り心地と操縦安定性という相反する性能を高次元で両立することを狙う。
制御はベース減衰を軸に、路面からの入力に応じた「ライドコントロール」、操舵やブレーキング時の姿勢変化を抑える「ハンドリングコントロール」、高速走行時の安定性を高める「スピードアダプト」の3つを組み合わせる構成。さらにスマートフォンアプリからComfort、Normal、Sportのプリセットを選択できるだけでなく、各制御を個別に調整し、自分好みの乗り味へカスタマイズできる点も特徴だ。
今回試乗したのは、200系ハイエースにActRideを装着した車両と純正サスペンション車との比較試乗だった。ハイエースは車高が高く、積載量によって車両挙動が変化しやすいだけに、電子制御サスペンションの効果を体感しやすいモデルでもある。
実際に一般道へ走り出すと、最も印象に残ったのは姿勢変化の少なさだった。ActRideはフィードバック制御を採用しているが、その応答速度の高さから減衰力が違和感なく変化し、ブレーキング時のノーズダイブや交差点でのロール、段差通過後の揺り返しが自然に抑えられている。制御が介入していることを意識させず、それでいて車体は常に落ち着いた姿勢を保つ。とくに斜めの段差を乗り越す際の乗員が揺さぶられる感じが大きく減少し、快適性がグッと高まる。フィードバック制御でありながら、ここまで瞬時にダンピングを変化させ、衝撃や揺れを低減できることには正直驚かされた。
とりわけ恩恵が大きいと感じたのは、ハイエースのような着座位置や重心が高い車両だ。乗員は車体の揺れを感じやすいだけに、ロールやピッチングが抑えられることで安心感と快適性は大きく向上する。長距離移動や家族での旅行、キャンピングカーなどでは疲労軽減にも効果を発揮するだろう。
ちなみに現時点で適合車種は200系ハイエースのみ。2WD用と4WD用があり、どちらも1台分で26万9500円(税込、作業料別)だが、この完成度を見ると対象車種が限られるのは惜しい。SUVやミニバン、ピックアップトラックなど、車高が高く姿勢変化の大きい車種への展開も期待したい。ActRideは単なる減衰力調整式ダンパーではなく、サスペンションの価値を一段引き上げる新しい電子制御技術として、多くの車種へ普及してほしいと感じた。
