【ボクらの時代録】1986年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。3代目日産パルサー(N13/SR13型)のヨーロピアンフィール

パルサー01欧州で人気の高い国際車、それがパルサー

 パルサーは、日本市場では人気抜群というわけではない。しかし、ヨーロッパでは、イギリスを中心に人気は大したものである。それだけに商品キャラクターは、ヨーロピアンテイストが強い。あくまでオーソドックスにまとめたサニーと比較すると、その違いは明らかである。スタイリングから足回りの細かなセッティングまで、パルサーはよりヨーロッパ的なのだ。

 新型のボディバリエーションは、3ドアHB/5ドアHB/4ドアサルーンの3種。スタイリングの基本になっているのは3ドアHBである。さすがに出来がいい。デザイン上の新しさはこれといってないが、自己主張があり、街を走っていて、すぐにパルサーだとわかる。

 キャビンは3種のボディとも、大人4名がラクラクと座れる。シートは魅力的だ。色柄の選び方もうまい。インパネや各部の作りもよく、「質のいいクルマに乗っている」と強く感じる。このあたりは長年トヨタ、ホンダがリードしてきたが、パルサーは逆転して見せた。

セダン5ドア 注目のエンジンはCA16DE型である。1598ccのツインカム16Vは120ps/6400rpmの最高出力と、14.0kgm/5200rpmの最大トルクを発生する。レスポンスはナチュラルな印象。7500rpmのレッドゾーンまで無理なく回り、パワー的にも2速当たりなら7500rpmまで引っ張る価値は十分にある。その意味ではさすがツインカム16Vだといえる。しかしパーフェクトに感激させてくれるほどではない。いまひとつパンチ不足なのだ。6800rpmを超えるとパワーがスーッと落ち始め、サウンドもザラザラした感じが出てくる。6800rpmのラインをもう500rpmほど引き上げられれば最高である。

 パフォーマンスは、スポーツ派が十分に楽しめる。それでも激しいバトルを演じるようなシーンでは、ライバルより重い車重がハンデになる。ミラノX1ツインカムはシビックS1より100kg以上も重い。

 セダンに設定する注目のフルオート・フルタイム4WDは素晴らしい。4WDはビスカスカップリング式。滑りやすい砂利道で相当に荒っぽい走りを試したが、平然と何事もないかのように振る舞う。スンナリと荒々しい運転を吸収してしまい、スムーズな走りに変えてしまう。コーナリングでのグリップ限界も、FFよりはぐんと高い。
(岡崎宏司/1986年6月26日号発表)

1986年 3代目日産パルサー/プロフィール

 3代目パルサーは1986年5月に登場。歴代モデルは欧州や豪州といった海外市場で人気が高く、累計生産180万台の72%にあたる130万台が輸出されたという。もちろん日本でも強い存在感を発揮。エクサ、ラングレー、リベルタビラなどの兄弟車とともにサニーとはひと味違う欧州フィールで人気を博した。3代目のボディタイプは3ドアHB、5ドアHB、4ドアセダンの3種。主力となる3ドアはスポーティな味わい、5ドアは実用指向、セダンはオールマイティさが魅力だった。

室内バリエーション メカニズム面の特徴は、新開発1.6リッターDOHC16V(CA16DE型/120ps)と、セダンに設定された「フルオート・フルタイム4WD」。DOHCユニットは圧倒的なスポーツフィール、4WDは、雨天や雪道を含め、オールラウンドの走行安定性が光った。プラットフォームを含めた主要メカニズムはサニーとオーバーラップし、高い信頼性もセールスポイントだった。1986年当時、日産は多くのディーラー網を展開。パルサーはチェリー店系列の主力販売モデルだった。ちなみにラングレーはプリンス系、リネルタビラは日産系が扱っていた。販売ディーラー網ごとに専売車種が必要だったため、複数の兄弟車を用意する必要があったのである。

1986年の時代録/男女雇用機会均等法が施行

【出来事】土井たか子が日本人初の女性党首(社会党)に/男女雇用機会均等法が施行される/イギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃が来日/原付を含めすべてのバイクでヘルメット着用が義務化/世界初レンズ付きフイルムカメラ『写ルンです』発売/ハイレグ水着がブームに/テレビの「元祖」トレンデイドラマ『男女7人夏物語』放送開始 【音楽】オリコンシングル年間1位石井明美『CHA-CHA-CHA』 【映画】邦画配給収入1位『子猫物語』、洋画興行成績1位『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

1986年日産パルサー主要諸元

グレード=3ドアHBミラノX1ツインカム・フルカラースポーツ
新車時価格=5MT 151万7000円
全長×全幅×全高=4030×1640×1380mm
ホイールベース=2430mm
トレッド =フロント:1425/リア:1420mm
車重=1020(AT1070)kg
エンジン=1598cc直4DOHC16V
最高出力=120ps/6400rpm
最大トルク=14.0kgm/5200rpm
10モード燃費 ㎞/リッター=12.4(AT10.4)(燃料タンク容量50リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:パラレルリンクストラット
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=185/60R14+スチール
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.1m

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