【最新フラッグシップ研究】本気のクルマ作り! マニア期待のマツダCX-60が目指すドライビングの新地平

マツダCX-60 価格▷299万2000〜626万4500円 試乗記

マツダCX-60XDハイブリッド・プレミアムスポーツ 価格:8SAT 547万2500円 CX-60は「マツダの理想」を追求したドライバーズモデル。新開発FRプラットフォームと直列6気筒ユニットでプレミアムな走りを追求している

マツダCX-60XDハイブリッド・プレミアムスポーツ 価格:8SAT 547万2500円 CX-60は「マツダの理想」を追求したドライバーズモデル。新開発FRプラットフォームと直列6気筒ユニットでプレミアムな走りを追求している

CX-60は羨望のメカニズムと造形でプレミアムを実現

 CX-60は、マツダのラージ商品群の先駆け。公式にはアナウンスしていないが、マツダの全生産台数の3分の1を誇るCX-5の実質的な後継モデルである。同時に、マツダの近未来を担う社運が掛かった重要な1台だ。独自技術の積極投入で、新たなプレミアム像を提案したのがポイントになる。

 エクステリアは魂動デザインが、新たなフェイズへと進化。FRレイアウトを活かしたショートオーバーハングを筆頭に、フロントアクスルとAピラーのバランス、ロングホイールベースにより、伸びやかな印象が強まった。大柄に見えるが、全長×全幅×全高は4740×1890×1685mm、ホイールベースは2870mm。CX-5と CX-8の中間、ライバルと比較すると全幅以外はハリアーに近い。全幅がもう少しあるとデザインに抑揚がつくと思うが、日常の取り回し性を考えるといい設定だと思う。

 インテリアの基本レイアウトは横基調のシンプルな作り。最新マツダ車共通イメージだ。フル液晶メーターやエアコン操作系、新シフトセレクターの採用で、高品質でスマートなデザインに仕上がっている。面白いのは身長を入力するだけで最適なドライビングポジションを提案する」ドライバー・パーソナライゼーションシステム」。これはドライバーモニタリングカメラを活用した機能で、マツダの自然で正しい運転姿勢へのこだわりをサポート。試すと、スムーズに普段のポジションに近いところまで調整してくれた(最後に微調整は必要)。

Dハイブリッドは3.3リッター直6ディーゼルターボ(254ps/550Nm)とモーター(16.3ps/153Nm)で構成するマイルドハイブリッド仕様。足元は20インチタイヤを装着

Dハイブリッドは3.3リッター直6ディーゼルターボ(254ps/550Nm)とモーター(16.3ps/153Nm)で構成するマイルドハイブリッド仕様。足元は20インチタイヤを装着

室内は上質な作り込み。ステアリングを含めてトータルなカラーコーディネートを実施している。センターモニターは12.3インチ

室内は上質な作り込み。ステアリングを含めてトータルなカラーコーディネートを実施している。センターモニターは12.3インチ

直6ディーゼルは滑らかさとサウンドで魅了。パフォーマンスは心地いい

 日本仕様のパワートレーンは4種類。今回試乗したのは254ps/550Nmを発揮する直列6気筒3.3リッターターボ+48Vマイルドハイブリッド。トランスミッションは8速AT。ATはダイレクト感とリズムある走りのために動力伝達にトルクコンバーターではなくクラッチ機構を採用した新世代だ。

 走り始めはスムーズ。スペックほどのトルクを感じないが、2000rpmを超えるあたりからグッと力が湧き出る特性である。その後は高回転までストレスなく滑らかに回る。重厚でジェントルな資質は車格にマッチしている。4気筒ディーゼルのようなスポーティ感は希薄だが、なかなか心地いい。マイルドハイブリッドは減速時のエンジン停止やEV走行(ごくわずかだが)も実現。ただしモーターアシストの恩恵はあまり感じられない。1000~2000rpm前後でもう少し積極的にモーターアシストしたほうが実用域のドライバビリティは高まると思う。
 アイドルストップは頻繁に行う。再始動時のショックや振動の多さ、巡航時にエンジンストップから復帰した際のアクセル操作に対するタイムラグはリファインを期待したい。

 エンジンサウンドは魅力的。ディーゼルのビートはさほど感じない。濁音が圧倒的に少ない音質は決してノイジーではなく、心地よさを覚えた。8速ATもいい。「滑らかなDCT」のようなフィーリングとアクセルを踏んだときのダイレクト感、シフト時の小気味よさを実感した。ただし1〜2速のシフトショックと微速域でのギクシャク感は気になった。これは開発陣も認識していた。後にアップデートプログラムで対応するに違いない。

 ハンドリングは、正直悩みどころだ。ノーズの素直な入り方、前後バランスのよさ、駆動のかかり方という縦置きFRレイアウトならではの旨味は実感するものの、ツメの甘さを感じた。そのひとつがコーナリングの一連の流れに連続性がないことだ。具体的にはステアリングを切る方向は非常に自然で滑らかなのだが、ステアリングを戻す方向に抵抗があり直進に戻り辛いのである。もうひとつは直進安定性だ。ステアリング系の滑らかで雑味のないフィールはマツダ車最良。一方で直進時のセンター付近の座りと落ち着きはいまひとつ。見た目ほどビシーッと矢のように走る……というイメージではなかった。
 現時点でのCX-60は、「曲がるのは得意だが、真っすぐ走るのは苦手」と評価せざるを得ない。

 最後は乗り心地だ。頭だけでなく体全体が揺さぶられない点や、細かい振動収束のよさは好感が持てる。基本的に快適性は高水準。ただし、路面からの入力や振動は想像以上にダイレクトに入ってくる。これは少し気になった。ロードスターなら許容範囲だが、マツダのフラッグシップだと思うと疑問が残る。
 走りの印象を元に原因を推測していくと新開発のマルチリンク式リアサスペンションにたどり着く。現状は開発陣の狙い通りに仕上がっていない可能性が高い。車両による個体差なのかもしれないが、何らかのアップデートは必要だろう。

 CX-60は新規開発だからこそ可能な「マツダの理想」を反映させたクルマ作りが行われている。「直6」と「FR」をキーワードに、新たな走りのフラッグシップを模索している。現時点では粗削りな面が散見されるが、基本はいい。今後の進化・熟成に期待する。

CX-60の開発テーマは「ドライビング・エンターテインメント」。ロードスターで培ったFRのノウハウを注入し、新たな走りの世界を提案する。パワーユニットは3.3リッター直6ディーゼルのほか2.5リッターガソリンPHEVなど全4タイプを設定。駆動方式は4WDとFRをラインアップする

CX-60の開発テーマは「ドライビング・エンターテインメント」。ロードスターで培ったFRのノウハウを注入し、新たな走りの世界を提案する。パワーユニットは3.3リッター直6ディーゼルのほか2.5リッターガソリンPHEVなど全4タイプを設定。駆動方式は4WDとFRをラインアップする

シャシーマツダCX-60主要諸元

真正面

グレード=XDハイブリッド・プレミアムスポーツ
価格=8SAT 547万2500円
全長×全幅×全高=4740×1890×1685mm
ホイールベース=2870mm
トレッド=フロント:1640/リア:1645mm
最低地上高=180mm
車重=1940kg
エンジン=3287cc直6DOHC24Vディーゼルターボ(軽油仕様)
最高出力=187kW(254ps)/3750rpm
最大トルク=550Nm(56.1kgm)/1500~2400rpm
モーター最高出力=12kW(16.3ps)/900rpm
最大トルク=153Nm(15.6kgm)/200rpm
WLTCモード燃費=21.0km/リッター(燃料タンク容量75リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=18.0/21.2/22.4km/リッター)
サスペンション=前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=235/50R20+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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