トヨタ・ルーキー・レーシングの水素技術改良が進む

ルーキー・レーシングの水素技術改善が進む

 トヨタ自動車は7月29〜30日にオートポリス(大分県)で開催されたスーパー耐久シリーズ第4戦(5時間レース)に出場した。エントリーはルーキー・レーシングで、マシンは水素エンジンを積むカローラと、カーボンニュートラル燃料に適応したGR86の2台。水素エンジンは液体水素ポンプの耐久性が第3戦よりも向上し、水素ポンプの見直しなどで40㎏の軽量化に成功。水素の充填時間は従来の1分40秒から1分に短縮する改良を果たした。

2023年07月29日
水素エンジンカローラとGR86(カーボンニュートラル燃料)、スーパー耐久シリーズ オートポリス大会に参戦

BEYOND ZERO , ニュースリリース , モータースポーツ , モデル , トヨタ , カローラ , GR , 86 , 水素 , カーボンニュートラル
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、7月29日~30日に大分県のオートポリスで開催される「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2023 Supported by BRIDGESTONE 第4戦 スーパー耐久レースinオートポリス(5h×1レース)」に、液体水素を燃料とした「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」(水素エンジンカローラ)と、カーボンニュートラル燃料を燃料とした「#28 ORC ROOKIE GR86 CNF concept」(GR86(カーボンニュートラル燃料))で参戦します。

1. 富士24時間レースからの進化

5月26日~28日に行われた「第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」(以下、富士24時間レース)から、約2カ月で、水素エンジンカローラ、移動式液体水素ステーション、カーボンニュートラル燃料の3つが進化しました。

1)水素エンジンカローラ

・液体水素ポンプの耐久性向上
富士24時間レースで課題となったポンプの耐久性が向上し、同条件下での耐久時間が30%延長しました。通常、ポンプには、潤 滑油を使用し、ポンプの摩擦を減らすことで負担を軽減させますが、液体水素ポンプの場合、水素に潤滑油が混ざってしまうた め、潤滑油を使用することができません。今回のレースでは、ポンプギヤ駆動部の負荷を低減する緩衝構造を採用することで、 ポンプの負荷を減らし、交換をすることなく完走を目指します。
・40kgの軽量化を実現
これまでのテストやレースで収集したデータを分析し、安全バルブや配管など様々な液体水素システムの最適化を進めたことに 加え、燃料の圧力を最適化することでポンプの負荷を軽減し、ポンプ駆動モーターのバッテリーを軽くしました。車重は、5月の 富士24時間レース時の1,950kgから40kgの軽量化を実現し、1,910kgになりました。

2)移動式液体水素ステーション

・ジョイントとフレキシブルホースの軽量化
岩谷産業株式会社とトヨタが共同で開発する移動式液体水素ステーションの、ジョイントとフレキシブルホースの軽量化に成功 しました。ジョイントとフレキシブルホースの重量は、給水素を行う作業員の負担になるため、将来の市販化に向け、小型化・ 軽量化が課題です。今回、接続部カバーの廃止や、水素に触れない部品を鉄からアルミに変更するなどの改良を行い、充填ジョイ ントを8.4kgから6.0kgに、リターンジョイントを16.0kgから12.5kgに軽量化させました。また、リターンジョイント側のフレキシブルホースも、細いホースに変更することで、作業者に掛かる負担を、約4kgから約1kgに軽減させ、給水素時の作業性を向上させています。

充填ジョイント(上が従来の8.4kg、6.0kgに軽量化)

リターンジョイント(上が従来型で16.0kg、下が改良型で12.5kg)

・給水素オペレーションの自動化
水素エンジンカローラの給水素はこれまで、充填バルブの開閉や、水素が満充填になった際に充填をストップするなどの作業を、 全て手動操作で行っていました。今回、これらの作業を電子制御で自動化することに成功しました。給水素オペレーションの自 動化により、安定した時間で効率よく、ミスなく給水素が行えるようになります。

手前が充填ジョイント、奥がリターンジョイント

フレキシブルホース(上が改良前、下が改良後)

・給水素時間の向上
今回のレースから、株式会社フジキンが開発した大流量対応充填側シャットバルブを装着します。充填側シャットバルブは、液体 水素タンクの充填口に設置されているバルブであり、充填スピードを上げるために大流量化すると、バルブサイズが大きくな り、密閉性の確保も難しくなる中、これらの両立を実現しました。これにより給水素時間は、富士24時間レース時の1分40秒 から短縮し、約1分で行うことが可能になりました。

株式会社フジキンが開発する大流量対応充填側シャットバルブ(左が改良前、右が改良後)

3)カーボンニュートラル燃料

GR86(カーボンニュートラル燃料)は、7月8日~9日に行われた「第3戦 SUGOスーパー耐久3時間レース」から、新たに改良されたカーボンニュートラル燃料でレースに参戦しています。 従来のカーボンニュートラル燃料は、エンジンオイルに燃料が希釈しやすく、エンジンオイル本来の性能が発揮されないことが課題でした。この課題を解決するべく、同じくカーボンニュートラル燃料を使用してレースに参戦している株式会社SUBARUや、燃料メーカーと連携をしながら、燃料の成分を調整し、気化・燃焼しやすくしたことで、エンジンオイルへの希釈を低下し、エンジンへの負担を減らす信頼性と、排気性能を向上させました。

2. 九州の仲間のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの進捗

ともにカーボンニュートラルを目指す仲間である、地元九州の企業や自治体が、カーボンニュートラル実現に向け、取り組みをさらに加速させています。

九州の仲間の取り組み

FCごみ収集車(技術検討試作車)

トヨタは引き続き、モータースポーツの厳しい環境で、クルマと人を鍛え、開発を加速させていくとともに、より良いカーボンニュートラル社会の実現に向けて、仲間とともに進化を続けていきます。

*1:充填ジョイント 液体水素を充填するジョイント
*2:リターンジョイント 気化した水素をステーションに戻すジョイント
*3:フレキシブルホース ジョイントとステーションをつなぐホース
*4:給水素時間 給水素ノズル装着後、実際に水素が流れている時間

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