走りのスカGが、見事に甦った。ターボチャージャーという強力な武器を得て、誰もが認めるフラッグシップが帰ってきた。
GTターボはL20E型にエアリサーチ製TO3型ターボユニットをドッキング。145ps/5600rpm、21.0kgm/3200rpmをマークする。ノンターボに比べ、15ps/4kgmの出力/トルクの上乗せである。しかも走りっぷりときたら、スペック差以上に大きな開きを感じる。1200kg台の車重がL20E・T型ではまったく気にならない。
ギアボックスは5速マニュアルと3速ATの2種。5速マニュアルから、その走りをご報告する。
1速に入れてぐんとフロアまでアクセルを踏み込む。2500rpmあたりからターボ特有のハイピッチな音が届きはじめ、タコメーターの針が4000rpmに届くと、ぐっ、ぐっ、と段がつくような加速を示し、猛然とダッシュする。イエローゾーンの始まる6000rpmまでは、あっという間だ。素早く2速にシフトアップ。タコメーターの針は3500rpm近くまで下がる。ごくわずかなタイムラグで、スカGはまたグーンとスピードを伸ばしていく、2速6000rpmでスピードは73km/hあたり……。ここまでは息つくひまはない。3速へシフトアップしたところで、ようやく快いタービン音と、エキサイティングなターボパワーのフィーリングに浸れる。
0→400m加速はメーカーデータで16.6秒。加速感は、この数値と完全に一致した。一人乗りでトライすれば、16秒そこそこまで縮められるかもしれない。
スカGターボはとにかく速い。ブルーバード・ターボも速いが、その上をいく。ただし5速ギアボックスのギアリングは強力なパワーに対して少し低すぎである。1500rpmですでにかなりのトルクが発生しているのだから、こんなに低くする必要はない。6000rpmで1速が50km/h、2速が90km/hあたりまで伸びるギア比を採用しても、扱いにくいとは思えない。発進にも別に不都合はないだろう。
ところでAT仕様だが、これは素晴らしい。立ち上がりの出足だけはちょっともたつくが、これはAT車共通のクセだから、やむを得ない。3500rpmに達するあたりの加速は、まさに強烈。その速さは、排ガス規制のなかった時代のアメ車の加速感を思い出した。
シグナルGPなどではMT車に立ち上がりで1〜2車身先行されたりする。しかし3500rpmに達するあたりから差が詰まった、と思う間もなく、一気に抜き、たちまちバックミラーの中……だ。
フルスロットルでは、1速から2速へは5500rpmあたりでシフトアップする。アクセルは踏んだままでいいから、ターボはずっとフルブーストの状態を保つ。このATは、シフトアップ操作もスパッとやってくれるので、スピードは鋭く上昇していく。そのスピードは、日本生まれのAT車の中で排気量を問わずズバ抜けたもの。MT車と競っても、このATを上回るMTはごく限られている。この胸のすく加速感は、トップスピードまで連続する。最高のフィーリングだ。
サスペンションは、基本的にノンターボ車と変わっていない。GT-EとGT-E・Sは、バネ/ダンパーのレートを上げ、リアにもスタビライザーをつけたハードサスペンションが組み込まれている。E・SのタイヤはミシュランXVSだ。
E・Sの足は、日本車の中で最も優れた、安定感の高いもの、というのが定評だった。ターボでも相変わらずの安定感、安心感のある足だ。だがターボパワーをフルに引き出してワインディングロードを攻めよう……となると、さすがに、ゆとりがなくなる、タイヤの性能が高いから、かなり踏ん張れはする、だが、タイヤの限界をたやすく超えてしまうほど、ターボパワーは強烈だ。注意が必要である。
スカGターボは、ふだんはイージーで静粛。オープンロードでは俄然スプリンターぶりを発揮する。パワーステアリングとATの組み合わせはとくに魅力的だ。
※CD誌/1980年7月号掲載
【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員