森永卓郎のミニカーコラム「ハブレー、フォード・カントリー・スクワイア」

 米国玩具メーカーの草分け、ハブレー社は19世紀創業の老舗メ―カーだ。古くはアイアンモデルのミニカーを製作し、メタルキットやモデルガンなども作っている。本当の会社名は、ヒューブレーと発音するのが正しいようだが、日本ではハブレーと呼ばれるケースが多いので、ここではそれに従っておく。

もりながたくろう/1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する「博物館(B宝館)」を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日開館)

 そのハブレーが1960年代前半にリリースしたのが、「リアルトーイ」シリーズだ。イギリスのマッチボックスが世界的な大ヒットとなったことを受けて、それへの対抗馬として作られたものと見られる。

 全長は9cmで、当時のマッチボックス製品よりも2回りも大きい。ただ、ボクの知る限り、リアルトーイ・シリーズは、すべてアメ車だ。シボレー・コルベア、スチュードベーカー・ホーク、シボレー・コルベットなどがラインアップされている。当時のアメ車は実車が大きい。だから、60分の1スケールで作っても、どうしてもミニカー自体が大型化してしまうのだ。もちろん、その分、当時のアメ車が持っていた圧倒的な重厚感がよく表現されていると思う。

 写真は、フォード・カントリー・スクワイアというステーションワゴン(全長は約5425mm、3列シートの9人乗り仕様もあった)で、1960年から1964年に製造された3代目だ。日本のビンテージ・アメ車ファンの中で、ステーションワゴンはあまり人気がないようで、ボクは日本で実車を見た記憶がない。

1960年版フォードのカタログ(カナダ仕様)は「新しいワゴンの夢のような話」というタイトルでワゴンを紹介。「ファミリーで3週間の旅行に出かけられる荷物が収納できる」と積載性を説明している

 ただ、世界的には3代目カントリー・スクワイアのファンは多いようで、現在でもジョニー・ライトニングの64分の1スケール、プレミアムXの43分の1スケール、モデルカーグループの18分の1スケールの新作が手に入る。ただ、ボクの知る限り、当時物のカントリー・スクワイアは、このリアルトーイの製品が唯一ではないかと思う。

 ちなみにリアルトーイのカントリースクワイアは、写真のステーションワゴンのモデルに加えて、後ろの窓2つをつぶしたバンタイプのモデルもリリースされている。

 1960年といえば、まだミニカーの世界ではウィンドウを付けているモデルがほとんどない時代だったし、製造後60年も経つというのに、塗装の輝きが残っていて、ゴムタイヤもつぶれていないところを見ると、当時のアメリカが質の高い製造業を擁する“モノづくり大国”だったことがよくわかる。

 残念ながらリアルトーイのコレクターはほとんどいないが、貴重な歴史の「証言車」だ。

キャッチコピーは「1960年、2台目のフォードの利便性をどうぞ」といった意味。

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