日産、産学連携によるバーチャル研究所「交通安全未来創造ラボ」を創設

 日産は、新潟大学、北里大学、相模女子大学と連携し、ネットワーク上に『交通安全未来創造ラボ』を創設したと発表した。

▲交通安全未来創造ラボ(本ラボ)
▲交通安全未来創造ラボ(本ラボ)

 『交通安全未来創造ラボ』(以下、本ラボ)は、交通死亡事故ゼロを目指し、交通社会におけるダイバーシティ(多様性)の実現に向けた研究を行う。

対象となるのは、高齢ドライバーや幼児・児童、訪日外国人、さらに過疎化による公共交通機関の縮小等で移動に不安や不自由を抱えている人など、一人ひとりに寄り添いながら、誰一人取り残すことのないように交通社会について考える。

▲実車を使い運転機能を計測
▲実車を使い運転機能を計測

 本ラボでは、社会問題となっている高齢ドライバーの交通事故削減を優先課題として取り組む。これまでの先行研究により、高齢ドライバーの運転操作の誤りは、認知力や、筋力・視覚などの身体機能の低下が関連し合っていることが判明している。

この関連を正確に解明し、さらに、それらの低下を引き起こす背景要因として、生活習慣や文化、地域社会との繋がりまで遡って研究を進める。そして、その研究成果を活かして、高齢ドライバーが健康で長く、安全に運転できるような交通安全ソリューションの創出に向けてチャレンジすることが本ラボの目標だ。

 ▲コンピュータグラフィックス(VR)を使いドライバーの視認性を計測
 ▲コンピュータグラフィックス(VR)を使いドライバーの視認性を計測

 ラボに参加する研究者は、生体医工学、医療衛生、生活・衣装デザイン、ソーシャルデザインなど多岐にわたる。さらに、自治体、研究教育機関、医療機関、まちおこし団体など、幅広い連携先からパートナーを発掘していく。このように、多様な専門分野、地域、世代やジェンダーを融合することにより、イノベーションを産み出す手法“Diversified innovational method”も本ラボの特徴だ。

 現在計画している研究テーマは下記の通り、既に先行研究に着手している。

①身体機能測定、ドライビングシミュレータ、実車走行試験を組み合わせた、高齢ドライバーの運動・運転機能データの収集とその同期解析。2021年は、高齢ドライバーの運転時の視線解析、色彩反応解析を中心に取り組む。

②コンピュータグラフィックスを用いて、高齢ドライバーの視認性研究と、その自覚ツール及び交通安全ソリューションの開発。視認性については、最先端の有効視野研究*1に取り組む。

③生活・服飾文化研究、及び上記①②の研究成果を使った、高齢ドライバーにも目につきやすい歩行者側での交通安全ソリューションの開発。

④新潟大学と日産が共同創案した『ハンドルぐるぐる体操』*2の効果検証

⑤研究で開発した自覚ツール、交通安全ソリューションが社会に広まり定着していくためのソーシャルデザイン研究

 それぞれの研究は、分野にまたがる横断チームを組んで活動する。また研究の成果は、次年度以降に、随時公開していく予定だ。

*1 有効視野研究
ドライバーが眼を使い、生理的視野(眼科で計測する視野)中心付近に固視点(注視点)を設けている際に、外界から有効に情報を得られる範囲を有効視野と呼ぶ。その有効視野範囲や視野内の反応時間を評価する仕組みを創る研究。

*2 ハンドルぐるぐる体操」実演映像
https://youtu.be/4hxe-z7WrFY

▲新潟市と出雲崎町で行われている「ハンドルぐるぐる体操」評判は好評だ
▲新潟市と出雲崎町で行われている「ハンドルぐるぐる体操」評判は好評だ

 日産と新潟大学は、2018年に、まち・生活・交通を結び、安全な未来を目指す交通安全プロジェクト「トリトン・セーフティ・イニシアティブ*3」を立ち上げた。本ラボは、その活動を発展、拡大させるプロジェクトとなる。

また、本ラボは、日産が約60年継続して取り組む交通安全啓発活動「ハローセーフティキャンペーン」の一環として進めている。
 
「交通安全未来創造ラボ」 特設サイト
URL:https://www.nissan-global.com/JP/SAFETY/HELLOSAFETY/LAB

*3 ToLiTon (Town, Life and Transportation) Safety Initiative
従来の交通安全の枠にとどまらず、「まち・生活・交通」を結ぶ提案を目指すことから命名したプロジェクト。ギリシャ神話に登場し水害を鎮める海の神トリトン(Triton)がプロジェクトの目指す安全・安心な世界観をイメージでき、また太陽系でもっとも遠い惑星である海王星を周回する衛星トリトンがプロジェクトのサステナビリティ(持続可能性)をイメージ。

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