フィスカーが新型EV、オーシャンを発表。衝撃の価格戦略

 米国のEVメーカー、フィスカーが新型オーシャンを発表した。全長4640mmのSUVモデルで、航続距離は約480kmを達成。EVとしては標準的な性能にまとめられている。注目は価格で、スタートプライスは3万7499ドル、連邦政府の補助金が適用されると2万9999ドルと3万ドル以下で購入できる。リースで利用する場合は月額379ドル。驚きの価格戦略だ。

補助金利用で2万9999ドル。リースは月額379ドル(約4万1000円)。

前73決まり.jpg▲フィスカーが1月のCESで発表した新型EV、オーシャン 全長×全幅×全高4640×1930×1615mm 乗車定員は5名

 フィスカー社(現在は買収されて社名をカルマに変更)を立ち上げた、ヘンリック・フィスカー氏が新車とともに表舞台に戻ってきた。1月に米国ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトリック・ショー)で、新型EV、オーシャンデビューさせたのだ。

 オーシャンは5人乗りミッドサイズSUV(全長4640mm、300hp)。驚きはその価格で、基本が3万7499ドル(約410万円)、米連邦政府によるEV補助金を合わせると2万9999ドル(約328万円)になる。頭金として2999ドル(約32万8000円)を支払うリースも可能で、この場合の月々の支払額は379ドル(約4万1000円)。リースは期間の制約がない。

インテリア.jpg▲内装材にはリサイクル素材を使って環境面に配慮

 充電に関してフィスカーは、エレクトリファイ・アメリカというロサンゼルスを中心とした充電ネットワークとの提携を発表。30分で200マイル(約320km)走行できる充電網が、少なくともカリフォルニア州内で利用できる。  安い価格で提供するために、フィスカーが取ったのは世界初の完全にデジタル化した自動車メーカーという考え方だ。スマホに対応したFisker Flexeeというアプリを開発し、ここでクルマの情報やギャラリー、ゲーム的な要素まで用意。顧客はアプリで自分の求める色やオプションなどを設定し、クルマが買える。

 実車を見てから購入したいというユーザーのために、今年中にフィスカー・エクスペリエンス・センターをオープンさせ、来年には試乗も可能になるという。

真正面.jpg▲新車価格は3万7499ドル 米国連邦政府の購入補助金が適用されると2万9999ドル 米国での予約金は250ドル

 アプリ上で自動車保険も購入できる。フィスカーとパートナーシップを結んだオンライン保険で、通常よりも20〜30%安い価格で保険が提供される。安くなる理由はオンライン型で、パーツ修理や交換などは、ディーラーではなくフィスカー社で行う方式を確約している点にある。修理は各地に提携工場があり、ここにフィスカーのスタッフが出向いて行う。

 支払いも同様だ。すべてのサービス、リースなどはアプリに直接課金される。第三者のファイナンスでローン購入した場合は別だが、フィスカーが提供するファイナンスまで用意されており、まさにワンストップですべてがまかなえる。

真後ろ.jpg▲ベースモデル以外は4WDが設定されている 4WD仕様の最高出力は225kWを発揮

 フィスカーはクルマを顧客にダイレクトにデリバリーする。「仲介も排除することで、これまでよりも安い価格でクルマが提供できる」とフィスカー氏は語る。

 今後グローバルに展開するうえで大切にしている点は「地元企業からの部品調達」だ。部品の輸送費が抑えられ、現地調達、現地生産、現地販売が可能なネットワークを構築する。フィスカーは「2022年から27年の5年間で100万台のクルマが生産できるグローバルサプライチェーンを確保した」という。

真横.jpg▲駆動用電池は80kWh 航続距離は300マイル(約480km)をマーク 荷室容量は最大1274リッター

 フィスカーは「世界で最もサスティナブルなクルマ」だという。ルーフ全体がソーラーパネルになっており、1年に約1000マイル(約1600km)走行できる電力を生み出す。年間1000マイルは1日3(約4.8km)マイル程度。しかも晴れた日限定。だが、「技術が改良されれば、もっとソーラールーフからの電力供給量を増やすことができる」という。

 この他、オーシャンの内装の多くがリサイクル製品を使っている。カーペットは海から回収された漁業用のプラスチック網、ドアの内側などに使われている人工スエードは古いTシャツなどからリサイクルされたもの、ウィンドシルのラバーもペットボトルからの再生品だ。

ドア開け.jpg▲ルーフはほぼ全面にソーラーパネルを装備 自車のソーラーパネルの発電能力は年間1000マイル(約1600km)走行分に相当

 オーシャンが安っぽいクルマかというと、決してそうではない。シャープな流線型は最近のEVのスタンダードともいえるものだが、やや幅広にしてスポーティな走りを可能にしている。

 オーシャンは2021年のデリバリー分はすでに売り切れ状態。いま250ドルの予約金を支払ってもデリバリー開始は2022年後半の予定だ。フィスカーは今年のジュネーブモーターショーにも出展し、オーシャンに続くモデルなどの発表を行う予定だ。

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