竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】日産ノートオーラNISMO「快適な日常性とスポーティな走りを提供」(2025年8月号)

ノートのプレミアムスポーツバージョンとして2021年8月に登場したオーラNISMO。「駿足の電動シティレーサー」というキャッチフレーズのとおり、街乗りでの快適性に加えて、本格的なスポーツ性能を両立し、人気を博している。2024年7月には4WDモデルを新設定しているが、実際に試乗しながらヒットの真相に迫ってみた。

「駿足の電動シティレーサー」というキャッチフレーズは、新しくも懐かしい感じがするけれど、まさに言い得て妙という感じ。ガリガリのスポーツハッチではないけれど、より速く、でも安心して、街乗り+αで楽しいクルマにということなんですよね。

 ノートオーラのNISMOモデルが登場したのは、2021年のこと。オーラ・シリーズ購入ユーザーの18%がNISMOモデルを選ぶという、なかなかのヒット作となりました。そうして選んだユーザーが次にほしい機能として挙がるのが、4WDとBOSEサウンドシステム。ヘッドレストにスピーカーが内蔵され、まるで目の前で演奏してくれているように聞こえるサウンド空間は、ときに速さと毎日の快適性を求める街乗り+αのユーザーにはやはり譲れない機能だったようです。

 そこに加えて、今回はレカロのパワーシートもオプションで用意されました。ただ、身長158㎝の私の体格ですと、逆に少々ドライビングポジションが取りにくいので、個人的にはスタンダード仕様のシートのほうが好みではありますが、スポーツ走行を楽しみたい気持ちのほうが大きいユーザーには、しっかり体をホールドしてくれるレカロ装着モデルがオススメとなります。

 そして、もうひとつのニーズが4WD。こちらはアリアのように統合制御をするe-4ORCEではなく、e-POWER 4WDとなりますが、それでも駆動力はもちろん、走りの安定感からして違います。というのも、4WDの追加導入に合わせて、空力性能が磨かれたことも大きく影響しているからです。

 フロントグリルなどの開口部を極力減らし、ホイールもNISMOの2WD(FF)モデルに比べて12%軽量化を図った4WD専用に開発。また床下の構造空力性能も見直し、さらにはスタンダードのオーラから車高を15㎜ローダウン化するなど、細かいチューニングが図られています。

 何を隠そう、実は私は4WDモデル好き。やはり4WDは安定感抜群ですからね。最近はゲリラ豪雨も増えてきましたし、そこまでじゃなくても雨の日の高速道路なんかは雲泥の差です。システムが追加される分、重量は重くなりまして、ノートオーラNISMOも110㎏ほど変わってきますが、かつて車重が重い分止まりにくいといわれた制動性も、回生ブレーキもありますし差はないといっても過言ではないと思います。

 昔は、4WDは曲がらないとよくいわれましたが、この4WDはホントよく曲がります。こちらのモデルも、フロントタイヤに余裕を持たせて、リアタイヤを使って積極的に曲げていきたいということで、通常のノートオーラよりも最高出力を10kW、最大トルクを50Nmパワーアップさせて、コーナリング立ち上がりの全開ポイントを少しでも早くできるように作られているんです。

 その考え方からして、いかにもモータースポーツフィールドで活躍するNISMOっぽいですよね。

 さて、そのNISMOモデルのパワーを引き出すには、ドライブモードを切り替えるだけなので、非常に簡単です。NISMOモデルのECOモードは、ノートオーラのスポーツモードに当たりますから、どれほど俊敏になっているされているかはご想像いただけると思います。

 なので、雨の日は迷わずECOモードをオススメします。というか、個人的にはECOモードはすべてWETモードやRAINモードとかに変えたらいいんじゃないかと思っているんですよね。現在のクルマって、全部といっていいほどエコカーですから。

 そして、高速道路などで普通に走りたい場合は、やはりノーマルモードがオススメです。回生力が抑えられるので、タイヤを前に前に転がし、燃費がいいイメージで走りたいときは、こちらが乗りやすいと思います。

 続いて、いよいよNISMOモードを試します。e-POWERなので、駆動はモーターが担当しますから(エンジンは充電用)、もともと低速トルクはモリモリです。試乗車はFFベースの4WDモデルですが、なんだか後ろから背中をグイッと押されたみたいに、メチャクチャ俊敏にパワーが立ち上がるフィーリングです。

 とはいえ、ホイールスピンなどはまったくない感じで、ある意味お行儀よくトラクションが適切にコントロールされています。路面をしっかりホールドしてくれているのがドライバーに伝わってくるので、安心してアクセルペダルを踏んでいけちゃう感じなんですよね。

 さらに4輪を緻密に制御していてライントレース性もいいので、クリッピングポイントからアクセルペダルを踏みこむときに、躊躇なくスパッと踏めます。これぞ安心感といったところでしょうか。速く、気持ちよく、安心して走れます。

 ノートオーラNISMOのヒットの真相は、毎日の快適性と日常+αとはいえ本格的なスポーツ性能を兼ね備え、二面性を見事に両立したところにありそうです。クルマに走りを求める、快適性を求める、ご家族内で意見が分かれたときにも、これならどちらも我慢することなく満足のいく選択ができそうですよ。

ノートオーラNISMO「ヒットの真相」

1)ガリガリのスポーツハッチではなく、日常の快適性と、より速く安心して楽しめるスポーツ性能という二面性を兼ね備えている
2)4WDモデルの新設定やBOSEサウンドシステムの導入など、ユーザーニーズにいち早く対応。コンパクトカーに新しい価値を創出
3)4WD導入に合わせた空力性能改善で安定感が向上。NISMOモードの切り替えたときの俊敏な加速感は爽快でとても気持ちいい

たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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