【最新モデル試乗】ボルボの最上級SUV、XC90がフレッシュに変身。若々しい味わいと高機能を体感チェック

ボルボXC90 ウルトラT8 AWD PHEV/8SAT 1294万円。スタイリングは最新フラッグシップBEV、EX90のイメージを投入。ラインアップは3グレード構成。XC90は2リッターマイルドHVのプラスB5 AWD(1019万円)とウルトラB5 AWD(1099万円)も設定。駆動方式は全車4WD。最上級のPHEVは各部メッキモールを排除。シンプルでスポーティな印象

ボルボXC90 ウルトラT8 AWD PHEV/8SAT 1294万円。スタイリングは最新フラッグシップBEV、EX90のイメージを投入。ラインアップは3グレード構成。XC90は2リッターマイルドHVのプラスB5 AWD(1019万円)とウルトラB5 AWD(1099万円)も設定。駆動方式は全車4WD。最上級のPHEVは各部メッキモールを排除。シンプルでスポーティな印象

ボルボは2030年、全面BEV化を変更。エンジン車もまだまだ現役

 ボルボのフラッグシップSUV、XC90が各部改良を受けアップデートした。これは、ボルボの電動化戦略の変化と関係がある。かつてボルボは「2030年までの完全BEV化」を掲げていた。しかし最近の社会情勢を考慮し、そのBEV化の完了時期を変更したのだ(2040年までに温室効果ガス排出ゼロ企業になる目標は堅持)。直近では「2030年までに90-100%をBEVとPHEVにする(CO2排出量は2018年比で65〜75%削減)」計画である。これによりBEVだけでなく、PHEVの開発にも注力することになり、XC90の大幅の大幅チェンジにつながった。

 EX30をはじめとするモデルに触れ、ボルボのBEVが高い完成度の持ち主であることは認識している。しかし個人的に内燃機関ボルボのオーナーである事情もあって、完全BEV化には少し寂しい思いを抱いていた。クルマにできる地球環境の改善は、いろいろな手法がある。選択肢が増えるのは素直にうれしい。

フロントマスク

リア

 今回のリファインは内外装の刷新がメイン。エクステリアは、まもなく日本にも導入される新世代の3列シートBEV、EX90のイメージが投影された。フォルムそのものに変更はないが、新意匠のフロントグリルとヘッドライト、そしてアルミホイールの一新でフレッシュな印象を強調。最上級モデルは各部モールからメッキ処理を排除。シンプルなイメージになったのもポイントである。

 インテリアはダッシュボードを改良した。100%リサイクル素材を使用したテキスタイルパネルと、従来の9インチから11.2インチへと大型化されたセンターディスプレイが目を引く。各種操作性とインフォテインメント機能にもアップデートが施され、アプリと定期的な無線ソフトウェアアップデート(OTA)で、つねに最新の状態に進化するのもうれしい。

インパネ

シート01

 試乗車は、トップグレードの「ウルトラT8 AWD PHEV」。2リッター直4ターボ(317ps/400Nm)、前後2モーター(リア145ps/309Nm)、リチウムイオンバッテリー(総電力量18.8kWh)を組み合わせ、満充電時73kmのEV走行と、WLTCモード13.3km/リッターの燃費を実現した電動車だ。EV走行距離が100km以上のPHEVが増えている現在、73kmというスペックは突出した数値ではない。
 だが、これだけ走れば日常ユースをほぼEVとして使える。しかも最長900km以上の航続距離と両立をしたのは、オールラウンダーとして魅力的である。

ハンサムなスタイル。走りはジェントルとスポーティの2面性が魅力

 久しぶりに対面したXC90はハンサムだった。XC90のワールドデビューは2014年だからすでに10年選手なのだが、少しも古臭さを感じさせない。4955×1960×1775mmと大柄ながら、無用の威圧感を感じさせない点はボルボらしい。

 室内は広々として気持ちいい。3列それぞれ大型サイズの快適なシートが用意され、2列目の中央席には、標準で「ジュニアシート」を装着している。ちなみにXC90は、ボルボで最も高価格帯となるクルマにもかかわらず、「オーナー年齢層が最も若い」と聞いた。その理由は、ボルボならではの入念な安全設計と、この広い室内空間のようだ。家族が増えたヤングエグゼクティブが、最も安心して乗れるクルマとしてXC90を選んでいるという。

真横

2列目

3列目

 確かにXC90なら、ライフシーンの変化に柔軟に対応できる懐の深さと、世界トップレベルの安全性を備えている。しかもメルセデス・ベンツやBMWなどのライバルと比較して、自己主張が適度な点もプラスに作用している気がする。

 走りはウルトラスムーズ。しかもサイズを感じさせない。絶好の視界により車両感覚が把握しやすいのはもちろん、緻密なパワーコントロールによりドライバーの意思に忠実なドライバビリティを実現しているからだ。

 HVモードをセレクトすると、バッテリー残量がある限り、通常はEVとして走り、静粛でジェントルな印象をキープ。アクセルに軽く力を込めるだけで交通の流れをリードできる。車重は2300kgとヘビー級だが、重さを意識するシーンはない。
 オープンロードで右足をワイドオープンにすると、PHEVのもうひとつの個性が味わえる。スポーティさだ。モーターとともに最高出力317psのエンジンがスクラムを組んだ加速は強力。0→100km/h加速タイム5.3秒の速さが体感できる。ドライバーズカーとしても一級品である。

エンジン

タイヤ

 足回りはエアサス仕様。路面状況に応じて減衰力が変化する電子制御ダンピング機能を組み込んでいる。乗り心地は良好。試乗車は細かなピッチングがやや目立ったが、この傾向は走行距離が伸びると落ち着くと聞いた。

 ボルボの魅力は、ロングライフ設計にある。使い込むほどにユーザーになじみ、家族のパートナーとして輝く。最新のXC90はそのよき伝統を継承している。環境に優しいこのPHEVモデルなら、10年後にBEV全盛の時代が訪れても、胸を張って乗れるに違いない。魅力的な大型SUVだ。

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