【最新モデル・疾走る歓び】より速く、機能的に進化。305psの4WDファイター、トヨタGRヤリスのエボリューション度を体感!

GRヤリスは「モータースポーツを起点にしたもっといいクルマつくり」の象徴。最新モデルはデビュー後に蓄積したノウハウをすべて投入して全面進化。サーキットでは「水を得た魚」のようにハイパフォーマンスを披露する

GRヤリスは「モータースポーツを起点にしたもっといいクルマつくり」の象徴。最新モデルはデビュー後に蓄積したノウハウをすべて投入して全面進化。サーキットでは「水を得た魚」のようにハイパフォーマンスを披露する

ここまでやるかの徹底度。すべてが進化しより本物に

 GRヤリスは、モータースポーツでの勝利を念頭に置いて開発されたホモロゲーションモデルだ。かつてはスバル・インプレッサWRXや三菱ランサー・エボリューションなどが存在したが、新車で買えるホモロゲモデルは現在このクルマだけ。長らくラリーから離れていたトヨタがWRC(世界ラリー選手権)に参戦するにあたり、本気で開発した4WDスポーツである。その人気はグローバル。グループAの公認取得に必要な2万5000台はとっくに販売したという。

 誕生からまる4年、GRヤリスが一段と実力を高めた。進化型は、モータースポーツにおける戦闘力向上はもちろん、日常ユースでもより快適に使えるようにと全方位でリファインされた。

走り

 専用開発のG16E-GTS型1.6リッター直3DOHC12Vターボは304psにパワーアップ。期待どおりになった。というのはGRヤリスが誕生した当初は、クラス最強であることを強調していたものの、その後に登場したGRカローラが最高出力で凌駕したからだ。GRカローラが高出力なのは「車両重量の増加に合わせたため」と説明されたが、それならGRカローラ用ユニットをより軽量なGRヤリスにも積んでくれたらいいのにと思っていた。今回、本当にそうなった。エンジンが強力になったことは、乗ればすぐにわかる。

 駆動方式は「GR-FOUR」と呼ぶ高度な4WD。GRヤリスは電子制御クラッチで前後の駆動力配分を制御する。NORMALモードは60対40、SPORTモードは30対70、TRACKモードは50対50を基準に可変コントロールするシステムだ。FFベースながら後輪主体の駆動力配分にできるのがポイントである。

エンジン

AT

 進化型には、なんと2ペダルの8速トルコンATがラインアップされた。純スポーツモデルでもATの強みは大きい。MTが6速仕様なのに対し、GR-DATと呼ぶこのATは8速に細分化されていて各ギア比が近い。だからエンジンの「美味しいところ」を引き出しやすい。もちろんシフトチェンジのロスは最小だ。開発に携わったプロドライバーから、「タイムを競うならATを選ぶ」という言葉を聞いた。もちろん速いだけでなく、誰にとってもフレンドリー。せっかくGRヤリスに興味を持ったのに家族の反対で購入を断念することのないようにという思いもあっての設定である。

 ユーザーの裾野を広げることとパフォーマンスの両面で、トヨタはATに積極的だ。ちなみにGRヤリスでは、すでにこのATをモータースポーツの実戦に持ち込み検証している。「性能はもちろん耐久性や冷却など、信頼できるシステムができ上がったから市販車に設定した」という。

すべての変化には機能の裏付けが存在。安定しフルパワーを与えられる!

 進化型では、内外装も大きく手が加えられた。それらの変更のひとつひとつに走りに直結する、あるいは運転に集中できる環境をつくるための 「理由」があるのがGRヤリスらしい。

リア走り

インパネ

 外観は空力性能が向上。フロントバンパーには新設定のATのためのATFクーラーも効率的に配されている。また、ラリーなどモータースポーツに参加するユーザーが多いため、破損した際にできるだけ簡単に交換できるようにも工夫された。新型のバンパーは分割構造である。コクピットも適切なポジションが取れるよう着座位置が低くされたほか、走りながらでも操作しやすいようスイッチ類のレイアウトが変更された。

 サスペンションもリファインされ、足回りの印象が少なからず変わった。サーキットで新旧を乗り比べたが、新型のアドバンテージは明確である。
 GRヤリスは、FFベースの4WDだが、モード選択によって後輪駆動のようなハンドリングが楽しめる。従来はややピーキーな面があったが、進化型は雰囲気が変わり、動きがゆっくりになった。それは鈍くなったという意味ではない。危なっかしい、唐突な動き方をしなくなったというニュアンスだ。路面にねっとりとグリップして圧倒的な速さでコーナーを駆け抜ける。とても同じタイヤを履いているとは思えない。

 軽量でホイールベースの短いパッケージングだからこそ、この進化はうれしい。意のままに走れるようになった。駆動力がリア寄りでも4WDなので、多少のミスにも寛容だ。これもうれしい点である。

ダート

 ダートコースでは持ち前の優れた走破性と、進化したGR-FOURのアクセルオンでグイグイと曲がっていく制御の巧みさを確認できた。
 とにかく走るほどに、トヨタがGRヤリスの進化のためにいかに気合を入れて臨んだかという情熱が、ヒシヒシと伝わってきた。開発にあたって社外のプロドライバーをここまで起用した例はないそうだ。モータースポーツに挑戦するからには、勝つことが最終的な目的である。そのために最善を尽くすのがGRヤリスの「開発の意味」なのだ。

 価格は決して安くはないが、GRヤリスをドライブすると、世界の頂点で戦うパフォーマンスを実感する。まさに戦うマシンだ。進化型はその価値がさらに高まった。
 このクラスでこれほど高い性能を体験できるクルマは、世界でもGRヤリスをおいてほかにない。

トヨタGRヤリス主要諸元

エンブレム

グレード=RZハイパフォーマンス
全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース=2560mm
トレッド=フロント:1535/リア:1565mm
車重=1280(AT:1300)kg
エンジン=1618cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
エンジン最高出力=400kW(40.8ps)/6500rpm
エンジン最大トルク=250Nm(25.5kgm)/3250~4600rpm
燃料タンク容量=50リッター
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
差動装置=前後トルセンLSD
ブレーキ=フロント:18インチ対向4ポットVディスク/リア:16インチ対向2ポットVディスク
タイヤ&ホイール=225/40ZR18(ミシュランPS4S)+BBS製鍛造アルミ
駆動方式=4WD(電子制御多板クラッチ式)
乗車定員=4名

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