【手が届くBEV対決】初めてのBEVに最適なのは、BYD・ATTO3と日産リーフのどちらだろう!?

BYD・ATTO3 価格:440万円/日産リーフe+G 価格:583万4400円 試乗記

BYD・ATTO 3。BYDは1995年に電池メーカーとして創業。自動車業界には2003年に参入。現在はテスラを凌ぐ世界トップの量産電動車メーカーに成長した。ATTO 3は日本導入の中心モデル

BYD・ATTO 3。BYDは1995年に電池メーカーとして創業。自動車業界には2003年に参入。現在はテスラを凌ぐ世界トップの量産電動車メーカーに成長した。ATTO 3は日本導入の中心モデル

BEV大国の中国からATTO3上陸。それは電池スペシャリストの作品

日産リーフe+G。リーフは世界初の量産BEVとして2010年に登場。現行モデルは2017年デビューの2代目。E+は62kWhバッテリーを搭載した上級版。一充電当たり航続距離は458km

日産リーフe+G。リーフは世界初の量産BEVとして2010年に登場。現行モデルは2017年デビューの2代目。E+は62kWhバッテリーを搭載した上級版。一充電当たり航続距離は458km

 中国は、世界で販売されるピュアEV(BEV)のうち、2台に1台が販売されている圧倒的な「EV大国」。
 2023年1月末から販売スタートしたBYDのATTO 3(440万円)は、そんな中国製のBEV。サンプル車両の審査など複雑な手続きの省略が可能となる「輸入車特別取扱制度(PHP)」を活用して日本で販売される初の中国車だ。

 日本ではまだ馴染みが薄いBYDは、1995年に電池事業で創業した若いメーカーである。ユニークなのはその社名が「Build Your Dreams」の頭文字であること。自動車事業を担当するのは子会社のBYD Autoで、創業は2003年とこちらはさらに最近の話になる。ただし、日本への輸入は大小さまざまな「電気バス」が先行していて、2015年から販売がスタート。実績台数はすでに60台以上といわれている。

 BYDは、パソコンや携帯電話用のバッテリーで実績を積んできたメーカーを母体をしているだけに、得意分野は当然BEV。ただし、テスラの場合と異なるのは、BEVだけではなくエンジンを搭載したPHEVモデルも中国国内で手がけていること。
 とはいえ日本法人のBYDジャパンは、「日本メーカーと競合するつもりはない」と発言。日本ではBEV事業に特化する方針を明確にしている。

atto3リア

ATTO3パワーユニット

 「2023年に3モデルを販売する」と表明したBYDのファーストモデルがATTO 3。全長4455mmの、いわゆるコンパクトSUVにカテゴライズされるBEVだ。ただし全幅は1875mmに達する。サイズ設定は日本での「コンパクト」とは少々違うワールド規格だ。

 スタイリングはすっきりとしている。印象的なのは、意外なほどに押し出し感が控えめな点だ。何かに似ていると感じられるわけではないが、一方で際立って独創性に富んだルックスという印象でもない。インテリアは、円筒形をモチーフに採用。縦型スリットの入った空調吹き出し口や、ドアトリムにレイアウトされたスピーカーが目を引く。スピーカー上部のレバーを引くドアオープナー、さらに楽器の弦を連想させるドアポケットなど遊び心も楽しい。

 インパネ中央の大型タブレット風ディスプレイは、スイッチ操作で90度回転し縦型レイアウトにもなる。斬新なだけでなくナビゲーション画面を表示する場合などは、進行方向を広く表示できるので便利に使えそうだ。

 ただし、インテリア全般の仕上がりは一部にチープな印象が漂う。ATTO 3は、多彩なADAS機能をはじめパノラマサンルーフやタイヤ空気圧モニタリングシステムなどを標準装備。駆動用バッテリー容量は58.56kWhとマツダMX-30EVやホンダeなどを大幅に上回る。そのうえでの440万円という価格設定を「割安」と評価するユーザーもいるだろう。一方で、「単純にそうは思わない」という声が上がっても不思議ではなさそうだ。

ATTO3スタイル

ATTO3インパネ

 150kWh(204ps)の最高出力を発するモーターで前輪を駆動する加速力は、日常の走行には十二分に力強い。ただし、フル加速シーンになると、最新モデルとしては珍しいほど強めのトルクステアに見舞われる。

 フットワークのテイストはマイルドだ。ハーシュネスのいなし方などはなかなか上手。なお、車両は4年/10万km、バッテリーは8年/15万kmの保証がつく。
 世界的に見てBEVのリーダーメーカーのひとつといえるBYDが、どのように日本に浸透していくのか興味深い1台である。

リーフはBEVの先駆車。静かで滑らか、そして力強い!

 日産リーフは、内外メーカーからの新作BEVラッシュもあって、影が薄い印象が否めない。現行モデルは2017年デビュー。いまやベテランという印象だ。ただし実力は上々。静かで滑らかで、とくに日常の街乗りシーンでは意外なほどに力強い。つまり、BEVならではの美点が存分に味わえる。BEVの魅力をいち早く教えてくれたという功績にいささかのかげりもない。

リーフリア

リーフパワーユニット

 試乗車はバッテリー容量を増したリーフe+G(583万4400円)。モーター出力をベース車の110kW(150ps)から160kW(218ps)にアップさせるとともに、WLTCモードによる航続距離を322kmから450kmにまで伸ばすことで、「航続距離が短い」というBEV全般の弱点を解消した。

 先駆者ゆえ、最新BEVでは一般的な駆動用バッテリーの強制冷却機構を持たないなど、ウイークポイントが存在することも事実だが、その実力はまだまだ高い。

 走りはスムーズそのもの。前述した圧倒的な静粛性や滑らかさとともに、エンジン車を大きく凌ぐアクセル操作に対するレスポンスのよさが実感できる。BEVならではの魅力が味わえる優れたキャラクターの持ち主であることは確かである。

 日本発の作品ゆえの扱いやすいサイズや、「e+」になってさらに大きく向上した加速性能など、現在でも見どころは多い。

 リーフは日本を代表するBEVというポジションをキープし続けている。

リーフスタイル

リーフインパネBYD・ATTO3主要諸元

ATTO3正面

グレード=ATTO 3
価格=440万円
全長×全幅×全高=4455×1875×1615mm
ホイールベース=2720mm
トレッド=フロント:1570/リア:1580mm
車重=1750kg
モーター型式=交流同期電動機
モーター最高出力=150kW(204ps)/5000〜8000rpm
モーター最大トルク=310Nm(31.6kgm)/0〜4620rpm
一充電走行距離(WLTCモード) km=485km
駆動用バッテリー=リン酸鉄リチウムイオン電池(ブレードバッテリー)
駆動用バッテリー総電力量=58.56kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=235/50R18+アルミ
駆動方式=2WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.35m

日産リーフ主要諸元

リーフ正面

グレード=e+G
価格=583万4400円
全長×全幅×全高=4480×1790×1565mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント:1530/リア:1545mm
車重=1680kg
モーター型式=交流同期電動機
モーター最高出力=160kW(218ps)/4600〜5800rpm
モーター最大トルク=340Nm(34.7kgm)/500〜4000rpm
一充電走行距離(WLTCモード)=450km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=60kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=215/50R17+アルミ
駆動方式=2WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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