初代フェアレディZ(S30型)は、スポーツカーを革新する。1960年代、世界的にスポーツカーとは「スパルタンなオープン2シーター」だった。しかし快適性を求める時代の風潮や、安全基準の厳格化を背景に市場環境は急速に変化しつつあった。オープンではなくクローズドルーフ、そしてスパルタンではなく洗練された新世代のスポーツカーが求められたのである。
オープンボディのSP/SR型フェアレディのモデルチェンジを計画していた日産は、時代のニーズを素早くキャッチアップした。エンジニアは、当時アメリカ日産の社長だったカーガイ、片山豊氏のアドバイスを真摯に受け止め開発に邁進する。結果、1969年11月に誕生した3代目のフェアレディである「Z」は、世界に大きな衝撃を与える。まずスタイルが素晴らしかった。日産の社内デザイナー、松尾良彦氏が紡ぎ出したロングノーズフォルムはダイナミックそのもの。しかもリアに大型ゲートを設けることで高い実用性を実現していた。
メカニズムも先進的だった。日本仕様は2リッター、輸出仕様は2.4リッターのパワフルな直6ユニットを搭載。MTに加え、ATを設定した点も新世代を感じさせる要因だった。
デビューしたZは、日本以上に北米マーケットで熱狂を生む。価格がポルシェ911の半額以下の3526㌦だったこともあり、販売店にはお客が殺到。月間2000台の販売目標の3倍となる月間6000台のセールスをコンスタントにマークした。Zの誕生以降、スポーツカーはクーペボディが定番になる。
最新のRZ34型フェアレディZは2022年にデビュー。スタイリングは初代のS30型とZ32型(1989年登場)のエッセンスを取り入れている。パワーユニットは3リッター・V6ツインターボ、駆動方式はもちろんFR