「モータースポーツは生で観戦するのがイチバン!」
マシンが発するサウンドや匂い、そしてサーキットやスタジアムに漂う熱狂を肌で感じたいなら、イベント会場に足を運ぶに越したことはない。世界選手権であれば、自分がよく知っている国内のサーキットが、まるで外国と化したかのように装いが変わる。
では、テレビやネットを通じての観戦が面白くないかといえば、そんなことはない。むしろ、モータースポーツ初心者にはテレビやネットでの観戦を積極的にお勧めしたい。
端的にいって、世界トップクラスのレースで起きていることのすべてを理解するのは、容易ではない。とりわけWECのような耐久レースは戦いの全貌を見極めにくいし、およそ300㎞で競われるF1グランプリも耐久レースの要素を多分に含んでいる。何の情報も手に入らないコースサイドで、世界選手権レースの知的な側面を把握できるようになるには、相応の知識と長い経験が必要だ。
とくに重要なのがレース戦略に対する理解。各ドライバーや各チームがどんな戦略を選んだのか、もしくは選び得るのか。それらがレースの流れにどのような影響を与えるかを知っているのかどうかで、レースの見え方がまったくといいくらい変わってくる。
では、どうすればレース戦略の情報が手に入るのか? 実は、F1にワンメイクタイヤを供給しているピレリは“可能性のあるレース戦略”と“各ドライバーの手持ちのタイヤ”をまとめた資料を毎戦発行しているが、これらはあくまでもメディア向けの情報。ただし、テレビ中継に出演する解説者であれば、それらにアクセスできるので、番組中にそういった情報が紹介されることもある。また、チームと信頼関係を築いているジャーナリストも独自情報を得ているので、そういった解説を聞いたり記事を読むのもいいだろう。
同様のことはWECについてもいえるので、初心者はまずテレビ観戦で知識を養うというのもひとつの手だ。
また、昨年からF1日本GP前に「ファンフェスタ」というイベントが東京で行われるようになった。こちらもレースの雰囲気を身近に感じられるという点でお勧めのイベントだ。
WRCも、コースサイドではマシンが走り去る姿を一瞬見られるだけ。スタジアムのスーパーSSであればもう少し長く観戦できるが、大地を相手に戦うWRCの雰囲気を味わいづらい。というわけで、こちらも手軽にイベント全体を把握できるテレビ中継がお勧め。空撮やオンボード・カメラなどを多用した映像は迫力満点だ。
F1世界選手権は1950年にスタートした。現在は年間24戦が開催され、3月のオーストラリアから12月のアブダビまで欧米アジア中東の各国で開催されている。配信メディア(サブスク)を通じてF1を視聴するスタイルが定着してきた。マシンが搭載するパワーユニットは1.6ℓ・V6ターボ+ハイブリッドシステムで、マシンの最低重量は800㎏。F1は2030年に二酸化炭素の排出ゼロを目指しており、2026年からは燃料が100%持続可能なタイプになる。この持続可能燃料は一般のクルマでも利用できるという。ホンダは2026年からアストンマーティンにパワーユニットを提供する。
現在のWECは、ル・マン24時間レースを主催するACO(フランス西部自動車クラブ)とFIA(世界自動車連盟)が歩み寄って、2012年にスタートしたシリーズである。出場車両のクラスはハイパーカー(LMH、ハイブリッドカー、680㎰制限)、ル・マン・プロトタイプ(LMP2、4.2ℓ・V8のワンメイク)、ル・マン・デイトナh(LMDh、680㎰制限)などがある。各チームの戦闘力の均衡を図るため、主催者がテレメトリで得たデータを基準に性能調整が実施されている。給油する燃料は100%植物由来のバイオ燃料だ。
世界ラリー選手権(WRC)は1973年にスタートした。2025年シーズンはトヨタ、ヒョンデ、シトロエン、フォードがマニュファクチャラー選手権を競っている。戦いの舞台は1月のモンテカロルに始まり、11月のオーストラリアまで北米を除いた各国で開催されている。氷雪路やターマック(舗装路)、グラベル(未舗装路)などあらゆる路面コンディションを安全に走り切らなければならない。WRCマシンが使う燃料は100%持続可能な非化石燃料である。