【進化し続けるGR】やったぜGRヤリス! ニュルブルクリンク24時間レース2025、クラス優勝を飾る。GRスープラも大健闘

6年ぶりのニュルブルクリンク24時間レースに、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)はGRヤリスとGRスープラ GT4 Evo2で参戦。GRヤリスは見事にクラス優勝、GRスープラもクラス4位を達成。GRヤリスはモリゾウこと豊田章男氏もドライブ

6年ぶりのニュルブルクリンク24時間レースに、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)はGRヤリスとGRスープラ GT4 Evo2で参戦。GRヤリスは見事にクラス優勝、GRスープラもクラス4位を達成。GRヤリスはモリゾウこと豊田章男氏もドライブ

聖地ニュルで新たな「もっといいクルマづくり」が始まった!

 6年ぶりの復帰となる2025年のニュル24時間レース(6月21-22日)に、「モータースポーツを通じたもっといいクルマづくり」を掲げるトヨタGRは、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)とルーキーレーシング(以下RR)が融合したTOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)という新たな体制で参戦。マシンはGRヤリスとGRスープラ GT4 Evo2。GRヤリスのトランスミッションはDATと呼ぶ8速ATが選ばれた。チームは2023年秋からクルマづくりや国内外でのテストを実施、そして4月のNLS参戦などを重ねニュルにやってきた。

 予選1日目、ナイトセッションで早速ニュルの洗礼を受ける。110号車のGRスープラにトラブルが発生したのだ。ジャンプした際の着地の衝撃が原因だった。致命的なモノではなかったが、ニュルでなければ出てこないトラブルだった。エンジニアの一人は「GRの辞書に『順調』という言葉はない」と気を引き締めた。

GRヤリス チーム

GRスープラ チーム

 決勝日、朝の全体朝礼でモリゾウはメンバーに語った。「2025年、われわれのニュルへの挑戦が始まります。今朝、私の部屋に新聞が届きました。そこにはGRヤリスの写真ともに、『トヨタはニュルに帰ってきた』の見出し、とても嬉しかったです。今回、20年前の孤独なモリゾウではなく、仲間がたくさんいるモリゾウを参加させてくれたこと、感謝したいと思います。そのためにも、ぜひ完走してみんなとの成果物を取りに行きたいと思います、よろしくお願いします」

 レースは16時にスタート、序盤はどのクラスも混戦もようだったが109号車(GRヤリス)/110号車はアクシデントに巻き込まれることなく走行。

 赤旗中断を挟んで開始から4時間が経過するころ、109号車はモリゾウ選手にドライバーチェンジ、石浦選手が先導する382号車とともに走行を行う。当初は3周の予定だったが、走り込むにつれて「もう1周」、「もう1周」と気がつけば6周を走行。石浦選手は「周回を重ねるにつれてどんどんとペースが上がり、逆に煽られるくらいでした」と苦笑いするシーンもあった。

 例年、ニュルは時々刻々と変わる天候(とくに雨と霧)に悩まされる。しかし2025年は晴天で全体の走行ペースも上がりぎみ。それが要因だったのか日が暮れ始めた22時以降にコースの至るところでクラッシュが続出した。しかし、2台はそこに巻き込まることなく走行を続ける。

GRヤリス01

GRヤリス02

 漆黒の夜から朝日が登り始めても、その状況は変わらず。そして、10時にモリゾウ選手は2回目の走行を行う。予定は5周だったが、なんと4周目に無線の不具合で緊急ピットイン。メカニックが即座に対応してコースへと復帰。実はここでの“数分”が、109号車が唯一走行を止めた時間となった。その後、モリゾウ選手は周回を増やし9周を走行。1回目のスティントと合わせて計15周は、歴代ニュル参戦で最多周回になった。モリゾウ選手のインカー映像を見ていた、2007年からニュルの活動を続けている伝道師の平田康男氏(トヨタ自動車・評価ドライバー)は「クルマの走らせ方や速いクルマの抜かれ方など、そのドライビングに成瀬弘さん(トヨタ車の味づくりを統括していたマスタードライバー。モリゾウに運転技術を伝授した師匠、2010年にテスト中の不慮の事故で逝去)を思い出し、感動した」と語った。

 その後も変わらず走行を続ける。あまりの順調さに平田氏はメディアからコメントを求められるが、「これまで何度もギリギリでトラブルが襲った経験があるので、ゴールラインを超えるまで答えられない」と気を引き締める。その言葉の通り、残り3時間、110号車はトラブルと2回のパンクに見舞われてしまった。ニュルは最後の最後まで気が抜けないのだ。

 そして16時、スタートから24時間後にチェッカーを迎えた。今年のニュル24時間は134台中完走したのは88台と、近年まれにみる荒れたレースだったが、初挑戦となったGRヤリスの109号車は見事にSP2Tクラス1位(総合52位)、110号車はSPクラス4位(総合29位)で24時間をしっかりと走り切った。

【レース後のコメント】
■関谷利之:TGRR GM
 次に向けた課題はいくつかありましたが、走る・曲がる・止まるのトラブルはほぼゼロ。つまり、S耐で鍛えたGRヤリスの実力がニュルで証明され、素直に凄いと感じました。逆を言うと、クルマにチームが負けてしまったかなと思うところもありますね。かつてのニュルの活動は一発勝負だったのでいろいろ壊れましたが、今回はそういうこともありませんでした。ただ、このプロジェクトは2023年の秋からスタート、その過程は「壊れては直し」の繰り返しだったので、やはりニュルは甘くないし一筋縄ではいかないですね。

■久富圭:GRヤリス チーフエンジニア
 開発を含めるとかなり長い時間でしたが、とにかく妥協しないでやり切ろうと決めました。レースでは半分はいままでやってきた背景があるので自信を持って進められましたが、時間が進むにつれて不安は重なり、最後の方は「早く終わってほしい」と思うくらい辛かったです。マシンは量産スペックにこだわりましたが、しっかり走り切ったことでわれわれのクルマづくりは間違っていなかったと自負しています。ただ、この活動で得た知見は次の市販車に織り込むことが私の課題であり使命なので、まだまだ終われません。

■モリゾウ
 ドライバーとしては自分が目標としていた15周を周回することができました。クラッシュや道が荒れている状況でも安心して走ることができました。かつて成瀬さんのテールランプを見て練習してきたことが、すごく役立ちました。走行中に成瀬さんと会話をしました。私が「成瀬さん、私運転上手くなりました?」と聞くと、「これ以上に運転上手くなるなといっただろお前、そうしないといいクルマは解らないよ」といわれました。でも私は、「運転が上手くならないと、いいクルマの味見ができませんよ」と言い返しました。
 振り返ると、成瀬さんと一緒に2007年にGRを立ち上げた時は、誰からも応援してもらえなかったチームでしたが、今回はGRとRR……エンジニア、メカニック、ドライバーが融合したワンチームとして参戦できた事、これは本当に嬉しく思っています。これが20年前にはやりたくてもできなかった事でしたので、ステアリングを握りながら、孤独だった「もっといいクルマづくり」にたくさんの仲間ができたことが実感できました。

ニュル24時間初挑戦は2007年。GAZOO Racingは社内のメンバーで構成。豊田章男(モリゾウ)氏をはじめ成瀬弘氏を中心とする技能系メンバーが参加した。マシンは中古車のアルテッツァだった

ニュル24時間初挑戦は2007年。GAZOO Racingは社内のメンバーで構成。豊田章男(モリゾウ)氏をはじめ成瀬弘氏を中心とする技能系メンバーが参加した。マシンは中古車のアルテッツァだった

 

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