
1992年 トヨタMR2 GT(E-SW20型)。2代目MR2は、「日本トップ級の加速力の実現」を目標に初代の1.6リッターから2リッターにクラスアップ。ターボ仕様のGTと、自然吸気のG系を設定し、ボディは固定ルーフとTバールーフが選べた。2代目はデビュー当初こそ、足回りが熟成不足で「じゃじゃ馬」だったが、1991年12月に走り全般を大幅改良。GT系はビルシュタイン製ダンパーとLSD、前後異径の15インチタイヤを採用し、ハンドリングを大幅に改善し本物のMRスポーツに進化した
MR2は、日本ではNSXに次ぐ本格的なミッドシップスポーツだ。本格的とはいってもNSXのようにゼロから高度な走りを実現するために計画/設計した「超サラブレッド」というわけではない。バリエーションの中には、女性のおしゃれな足として高い快適性と日常性を備えたモデルもある。
しかし、シリーズの頂点に立つGTは、間違いなく、スポーツカーとして評価できる実力を持っている。
現行の2代目モデルが1989年秋にデビューした当時は、走りよりコンフォートに振ったキャラクターだった。足腰の弱い走りはかなり強い批判を受けたものだ。しかし、トヨタはその評価を正面から受け止め、大幅な改良に取り組んだ。2年後のマイナーチェンジでは、したたかな走りを持つ一級のスポーツカーにまで実力を磨き上げたのだ、この対応の早さ、前向きな姿勢は「さすがトヨタ」といえる。
改良版は、初期型に対してタイヤ&ホイールのサイズアップ、ブレーキのキャパシティ向上、ビスカス式LSDの採用など、基本的な部分を大きな変更した。さらに細部をチェックすると、それこそ無数のリファインを行っている。その結果、MR2はスポーツカーとして一級品の仲間入りを果たした。
コクピットの背後に横置きに積んだ4気筒の2リッターツインカム16Vは、ターボを組み合わせて225ps/6000rpm、31.0kgm/3200rpmというパワースペックを実現している。初期型のシャシーは、このパワーをまともに受け止めることができなかった。強引な走りにトライすると、後輪はすぐに空転して派手に煙を吹き上げた。高速コーナリングで下手なアクセルワークをしようものなら、いとも簡単にスピンを誘発するネガもあった。
しかし、現在のモデルならそんな心配はいらない。パワーはしっかり無駄なく路面に伝わる。コーナリング中のアクセルワークに対するナーバスさも、大幅に薄まっている。パワーオンでテールが張り出す挙動が出ても、その動きは十分対応できるレベルだ。一挙にパニック状態に陥る不安はない。同じパワーでも、それを使える幅はグンと広がっている。だから同じコースを走っても、ずっと高いアベレージスピードが叩き出せる。
現在のMR2なら、ワインディングロードでの戦闘力はかなり高い。ドライビングの楽しさも一級品だ。ただし油断は禁物。限界が高く、優れたコントロール性の持ち主だが、やはり一定のレベルを超えると、ミッドシップならではシビアな挙動が現れる。つまり、テールが流れるような走り方では、流れの初期段階で対処しておくことが必要、ということである。
ミッドシップカーとはいっても、MR2は手首のひねりでスパッとノーズの向きが変わる、切れ味鋭い回頭性を備えているわけではない。回頭性はいいが、それは敏感にノーズが動くというより、「素直に動く」という表現が適切だ。ボク個人はそんな味付けでいいと思っている。
シャシー全体の剛性感は、できればいまひとつ引き上げたい。そうすれば走り味/乗り味はよりソリッドになり、スポーツカーとしてハンドリングへの信頼感と楽しさは、一段と高まるはずである。
ボディとシャシーの剛性を引き上げることができれば、たとえばパワートレーンをよりタイトにマウントすることができるかもしれない。そこでまたスポーツカーの走りに、一段と磨きがかかることになる。
さらに注文をつければ、ブレーキのタッチももっとしっかりさせたい。何にでも限界はあるが、スポーツカーは性能を可能な限り引き上げ、高いところに設定してほしい。そして、その開発を通じて得たノウハウを、他の多くのクルマに還元してほしい。スポーツカーは単に走り好きを喜ばせるクルマではない。クルマ全体の性能の底上げを実現する 「核」となる存在だ。
トヨタのようなリーダーメーカーは技術の蓄積という意味からも、鍛錬という意味からも、MR2のようなミッドシップスポーツカーを作ることをやめるべきではない。ボクはそう思う。またそうなることを切に願っている。
※CD誌/1993年1月26日号掲載
