【菰田潔 CDゼミナール】きれいな運転キタイナイ運転「サーキット走行」編

同走者に迷惑をかけず気持ちよくスポーツドライブを楽しむ心掛け

 今回はサーキット走行でのきれいな運転とキタナイ運転についてお話ししよう。

  最近は自分のクルマで走るサーキット走行が盛んになっている。簡単な講習を受けサーキットライセンスを取得すれば、スポーツ走行と呼ばれる枠で走れる。またクラブや団体が時間枠を買い取って仲間でプライベートな走行会を開催する占有走行も多く、国際レースを開催する大きなサーキットだけでなく、日本各地にある1周2kmに満たないミニサーキットでも占有走行でサーキットの予定表は先まで埋まっている。

 スポーツ走行や走行会に参加するドライバーは、レースに出場することを目的にしていない。スピード制限のない一方通行の道で気持ちよくクルマを走らせてみたい、運転技術を向上させたいというドライバーたちが多い。また、サーキットを自分の腕でうまく攻略したいという思いもあるだろう。

 これは日本だけでなく有名なドイツのニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース)のツーリステンファルテン(料金を払えば観光客でも走れる)でも、土曜、日曜はパドックからクルマがあふれ一般道まで続く大混雑になることもある。

 レースでの話ではなく、一般的なスポーツ走行や走行会で他車に迷惑をかけず、安全に走るためにはきれいな運転を心掛けることがいちばん大切だ。きれいな運転をすることで、ぶつからないだけでなく、タイヤやブレーキなどを傷めず走ることができ、金銭面でも大きなメリットもある。

 まずは「目を吊り上げて走る」のはNG。ラップタイムを縮めることしか頭にないドライバーは、直線で次のコーナーの手前までアクセルを踏み込んで、ギリギリで急ブレーキをかけるという運転になってしまう。

 1mでも長くアクセルを踏んで、0.1秒でもブレーキを遅らせ、ブレーキの時間を短くするという走り方は、コーナーへのアプローチがラインもスピードも理想的にできず、コーナリングスピードが遅くなり、ラインが悪いから加速のタイミングも遅くなる。これは周囲から見ていてもクルマがギクシャクしてキタナイ運転にしか見えない。

 コーナーの進入を重視するキタナイ運転に対し、出口を重視するのがきれいな運転。コーナーを入り口、頂点、出口に分けて考えたときに、入り口を速くしても出口が遅いと結果的に直線全体のスピードが上がらず、1周のラップライムは遅くなる。

 直線が長ければ長いほどその手前のコーナー出口のスピードは重要になる。だから入り口では慎重にライン取りとスピードコントロールをするようにし、出口で早いタイミングでアクセルを踏み始められるようにすれば無理をせず速く走れるようになる。 「切ったら踏むな、踏んだら切るな!」は、タイヤの摩擦円を考えて走るための標語(コモダ作)だ。ハンドルを切ったらアクセルは踏むな、アクセルを踏んだらハンドルを切るな、という意味だ。

 サーキットで速く走ろうとするとアクセルはついつい踏みたくなる。そしてコーナーでは曲がりたいからハンドルも切る。それを同時にやろうとすると失敗する。それはタイヤのグリップには限界があり、縦方向と横方向に分けて使っているからで、両方いっぺんに使おうとすると限界を超えてしまうという摩擦円の理論からきている。

 こうした走りの理論がわかってくると無理せずに気持ちよく走っていても速く走れるようになるのだが、そんなときでもバックミラーは常時チェックすることが大事。

 前だけでなく、後ろや横など自分の周囲を俯瞰で捉えて走る余裕が安全にもつながるからだ。

こもだきよし
 モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会会長。BMWドライビングエクスペリエンス・チーフインストラクター。BOSCH認定CDRアナリスト。1950年、神奈川県出身

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