ヒョンデIONIQ5に乗りました。これまで、イベントなどで見てはいたものの、運転する機会には恵まれず、YouTube動画などを観て、期待に胸を膨らませていました。IONIQ5は、2022年の「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたモデルです。それだけに「実際はどうなのか」と思案しておりました。
試乗会の拠点は、横浜にあるヒョンデのCXC(Hyundai Customer Experience Center)。2022年7月にオープンした購入相談から納車、整備までを提供する施設です。現代的でクリーンで、スタイリッシュな建物でした。
試乗コースは、CXCから鎌倉経由で箱根に向かい、箱根で1泊し翌日に横浜のCXCに戻ってくるという行程です。
IONIQ5と久しぶりに対面した印象は、「自然光の下で見ると存在感がある」というものでした。シンプルに申し上げると「あらカッコイイ」といったところ。20世紀に「21世紀のクルマ」としてデザインされたような、「古新しい」とでも表現できるようなデザインです。
サイズは新鮮です。全長×全幅×全高は4635×1890×1645mm。数値だけ見るとミッドサイズSUVというディメンションですが、ホイールベースは、何と3000mmと長大。室内は開放的で広く、ドライバー以外も快適に過ごせる空間でした。インテリアの素材はエコフレンドリーなものが選ばれています。肌触りがよく、安っぽさは感じません。
試乗車は最上級グレード、ラウンジの2WDと4WDモデル。往路は2WD、復路は4WDでした。 走りの印象に移りましょう。
ラウンジの駆動バッテリーの総電力量は72.6kWhで航続距離はWLTCモードで2WDが618km、4WDは577km。モーター出力は2WDが217ps/350Nm、4WDは305ps/605Nmです。EVらしくとくにトルク数値の大きさが印象的。そして、そのスペックどおり、加速はとてもスムーズで気持ちいいものでした。暴力的ではないものの、一瞬で速度が上がっている、という感覚です。追い越しのときなどのストレスは皆無で、これは安全にも寄与すると思いました。そして何より感銘を受けたのは、そのドライバビリティ。重心が低く、安定しているのはもちろん、操作性も優秀です。
ステアリングに付いたパドルを操作することによって、ほとんどフットブレーキを使わずに加減速を自在にコントロールできます。右のパドルを引くと回生が弱くなり、0というポジションはコースティングモードで回生はされません。一方、左のパドルを引くと回生を3段階で調節。回生が強ければ、それだけ充電されて、バッテリー残量が増えます。また、0のポジションから左のパドルを4回引くと回生量が最大になり、フットブレーキを踏まずとも停止まで行う、いわゆる「ワンペダルモード」になります。
今回パドルを駆使して、あの箱根ターンパイクの下りをフットブレーキを踏まずに走りきりました。小田原料金所に着いたとき、バッテリー残量は65%から78%に増加。MTならともかく、エンジン車のATと比べたら、運転が楽しいのはIONIQ5のほうかも、とさえ思いました。
さらにウィンカーの作動時には、その方向の斜め後方の映像が自動的にモニターに表示されたり、家電や住宅にクルマから給電するV2L、V2Hにも対応するなどユーザーフレンドリーな装備は満載です。価格は479万~589万円。
試乗開始時のバッテリー残量は98%で航続距離表示は490km。一瞬カタログ値との乖離を感じましたが、記憶を呼び起こしてみたら、これまで乗ったBEVの中で、その差が最小だったことに気づきました。実際に試乗を終えた後には計算上、当初の表示値を上回っていたので電費も優秀といえるでしょう。
私にとっては初めての韓国メーカー車。いや恐れ入りました。
あんどう ひろき/フリーアナウンサー。1967年、神奈川県生まれ、元TBSアナウンサー。現在は独立し、TBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s〜愛車のこだわり〜」、TOKYO MX「バラいろダンディ」、MBS「朝日奈央のキラめきスポーツ〜キラスポ〜」、テレビ東京「ミライの歩き方」、Bayfm78「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。趣味・特技はモータースポーツ、クルマ全般、弓道、スキー。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員