トールボーイの愛称で親しまれたホンダ・シティ(1stモデル)

モータージャーナリスト、岡崎宏司さんのエッセイ。1980年代初めに大ヒットしたホンダ・シティ、シティ・ターボの思い出をつづっています。

80年代ホンダの勢いを象徴

cf8cc3d259005b52b61dfcfab8fb3906080c248a.jpg▲ホンダ・シティ・ターボ

 1980年代は経済の好調が後押しして、どこのメーカーも元気だった。ホンダもその例に漏れない。いや、漏れないどころか、最もはつらつとしていた。中でも81年10月にデビューしたシティは、ホンダの勢いを象徴する存在だった。シティはそのネーミングどおり、ベストなシティカーを目指して開発されたハッチバックモデルである。

 スリーサイズは全長×全幅×全高3380×1570×1470㎜。コンパクトだが、背(全高)は高いので、〝トールボーイ〟の愛称で親しまれた。その姿を見ているだけで、なんとなく楽しくなるチャーミングな姿は、ボクのお気に入りだった。

 当初は、NAエンジン限定のラインアップだったが、82年9月にターボ仕様を追加。パフォーマンスは一気に高まった。なにしろ100㎰を発生する1.2ℓの過給ユニットと690㎏の軽量ボディの組み合わせである。加速は鋭く、ドライビングは実にファンだった。ターボは、瞬く間に若者やクルマ好きの人気者になった。

〝シティ=速い=楽しい〟というイメージをさらに決定的にした存在が、110㎰にパワーアップしたターボ(通称ブルドッグ、83年10月登場)。ブリスターフェンダーが与えられ、強そうな表情になったブルドッグのルックスは、いかにもヤンチャだった。加えて、10秒間だけ過給が10%アップする〝スクランブルブースト〟がもたらすエクストラパワーが刺激的で、走りは〝ヤンチャそのもの〟だった。いわゆる〝ドッカンターボ〟の代表ともいえるような荒々しい加速は、いや応なくドライバーの背中を押した。良しあしは別として、ドライビングは楽しかった。

 そんなシティ・ターボに乗っていると、気分はつねに戦闘モードオン、そんな感覚だった。大変だったけれど、ワクワクした。84年にはピニンファリーナが幌の開発を手がけたカブリオレモデルが加わった。シティのラインアップは、どんな上位のクルマより充実していた。シティは、小さいながらも魅力的な存在だった。

主要諸元

写真のグレード:ターボ(82年9月デビュー)

価格:5MT 109万円(東京・名古屋・大阪地区)

ボディサイズ:全長×全幅×全高3380×1570×1460mm ホイールベース2220mm 車重690kg 

エンジン:1.2リッター・CVCC直4OHC12Vターボ(100ps/5500rpm 15.0kg・m/3000rpm)

10モード燃費:18.6km/リッター

乗車定員:5名 駆動方式:FF

タイヤサイズ:165/70HR12

ブレーキ:フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム

サスペンション:前後ストラット

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