DXはわかるけどGXは知っていましたか? 「骨太の方針2022」における自動車関連産業の扱われ方

▲ルーキーレーシング(オーナーは豊田章男社長)は水素エンジン車でスーパー耐久に出場
▲ルーキーレーシング(オーナーは豊田章男社長)は水素エンジン車でスーパー耐久に出場

「経済財政運営と改革の基本方針2022」、いわゆる骨太の方針が6月7日、閣議決定された。国を挙げてのDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進や新しい産業分野への投資、スタートアップ(新規創業)支援など、内容は多岐にわたる。その中で自動車については、新車販売の全量を「いわゆる電動車」にするという文言を盛り込んだ。産業のGX=グリーン・トランスフォーメーション(グリーン化、つまりカーボンニュートラル化)の中で、自動車についても言及している。

▲トヨタMIRAIはFCEV(燃料電池車)の先駆けとなったモデル
▲トヨタMIRAIはFCEV(燃料電池車)の先駆けとなったモデル

 基本方針は〝新しい資本主義〟だ。その枠組みの中で産業構造の転換を図りながらDXとGXを進める。政策目標として掲げている内容に新しさはないが、あらためて国家方針として整理した。

 自動車については「エネルギーを起点とした産業のGXに向け、脱炭素投資を後押しする重点的な環境整備を行う」という方針の中で「将来的にはICE(内燃エンジン)への合成燃料の利用を見据える」方針を明記している。合成燃料が政策目標に入ったのは初めてだ。

▲スーパー耐久に出場車に水素を供給するためのトラック
▲スーパー耐久に出場車に水素を供給するためのトラック

 ガソリン、軽油、天然ガスなど、現在主流の化石系のエネルギーはすべて炭素(C)と水素(H)がベースであり、空気中の二酸化炭素(CO2)を集めてそこからCを分離し、太陽光など再生可能エネルギーで得た電力を使って水を電気分解して得たHと結び付ける「e-フューエル」の研究が進められている。これを政府としても「視野に入れる」とした。

▲日産サクラ 軽自動車規格に合わせたBEV  日常生活を支える電動車として期待が高まる
▲日産サクラ 軽自動車規格に合わせたBEV 日常生活を支える電動車として期待が高まる

 純粋に水素だけをICEの燃料とする方法は、技術的にもまだ確立はされていないうえ、水素の安定供給というインフラも整っていない。合成燃料(e―フューエル)は、その製造さえ軌道に乗れば既存のエンジン車に支えるほか、ガソリン/軽油に混ぜても使える。

▲写真はBEVのホンダe   ホンダはBEVとe:HEV(ハイブリッド)が電動車の中心
▲写真はBEVのホンダe ホンダはBEVとe:HEV(ハイブリッド)が電動車の中心

 電動車については「いわゆる電動車」という表現を使った。xEVである。ここにはICEと電動モーターの両方を使うハイブリッド車(HEV)と、これに外部充電機能を与えたプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、純粋な電動車であるBEV(バッテリー電気自動車)、それと水素を燃料とするFCEV(燃料電池電気自動車)が含まれる。日本自動車工業会が主張するように、選択肢を狭めないという発想だ。2035年までに、乗用車についてはこれらxEVを「新車販売台数の100%にする」と方針の中に明記した。

▲三菱エクリプスクロスPHEV   三菱はPHEV技術で独自性をアピール
▲三菱エクリプスクロスPHEV 三菱はPHEV技術で独自性をアピール

 この方向を支援するため、蓄電池(バッテリー)の大規模投資促進、充電・充填インフラの整備、車両の購入支援を行うという。同時に、国内の自動車部品サプライヤーなどのxEVへの業態転換を促す支援策も行う、としている。欧州はBEVを最優先しており、近年はPHEVも「ICEを使っている」ことから優遇の対象として見直す動きも出ているが、日本は現実的なxEV路線を行く方針だ。

 実際、2001年を100とした場合の自動車からのCO2排出は、BEVが普及していないにもかかわらず、日本が77と低い。ドイツは103、アメリカは109、フランスが99、イギリスが91である。この理由は、HEVの普及とICEの改良だ。日本には1000万台のHEVが走っており、ガソリン消費は確実に減っている。この実績にBEVやPHEVの普及を加え、CO2削減をさらに進める方針だ。

 日本政府は「BEVだけがカーボンニュートラルへの道ではない」、「ICEには合成燃料が使える」という姿勢を明記した。その意味では、BEV一直線の欧州とは対象的である。欧州でも研究機関や調査会社などは「技術開発をひとつに絞ることは危険であり賢明な判断とはいえない」と明言するようになった。この問題は、まだ議論が終わっていない。

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