中国最新汽車事情 「上海モーターショー10大ニュース」後編

不動産大手のEV事業の勝算

▲恒大汽車の「恒馳5」
▲恒大汽車の「恒馳5」

 不動産開発中国1位の恒大集団(エバーグランデ・グループ)傘下の恒大汽車は高級EVブランド「恒馳(ヘンチ)」シリーズの9車種を一斉に公開した。

 恒大は、資金力と社会影響力で次々と経営不振の自動車関連企業の買収を行っており、2025年にはEV生産能力100万台に達する、世界最大のEVメーカーとなる目標を掲げた。資金力だけではなく、国内外の有力企業と築き上げたネットワークや都市開発ノウハウは同社の強みだ。一方、中国のEV需要を勘案すれば、新興メーカー1社で100万台以上の生産目標を掲げるのは非現実的ではないとの批判が出ている。

新興EVメーカーの躍進

▲NIO・eT7(NIOの動画から)
▲NIO・eT7(NIOの動画から)

 2015年以降、中国では約50社の新興EVメーカーが生まれた。2020年の販売台数をみると、NIOが4.2万台で新興EVメーカーの首位を維持。2位の理想(リーシャン)汽車(3.2万)、3位の小鵬(シャオペン)汽車(2.7万台)、IT企業から参入した3社は新興EVメーカーの上位を占めている。一方、販売台数1万台を超えた新興EVメーカーは6社にすぎず、研究開発や試作段階にとどまっているメーカーも少なくない。

 米国上場を果たしたこれら3社は、新モデルを投入する一方で、欧州を中心に完成車輸出も開始した。小鵬汽車は4月に新型セダン「5」、NIOは7月発売予定の新型セダン「eT7」をそれぞれ出展し、他社との差を広げようとしている。

 勢いに乗る上位3社だが、赤字決算が続いており、さらなる販売台数の増加を図る必要がある。

大手国有メーカー新EVブランド

▲東風汽車の新ブランド「嵐図」のニューモデル「フリー」
▲東風汽車の新ブランド「嵐図」のニューモデル「フリー」

 中国における中間所得層の増加に伴い、クルマの機能・ブランド性をいっそう求める傾向が強まっているなか、大手国有メーカーが出展した高級EVが注目されている。東風(ドンフェン)汽車は新ブランド「嵐図(VOYAH)」を発表し、中大型SUVタイプの高級EVを披露した。上海汽車は、アリババと共同で高級EVブランドを手掛ける智己(チィチ)汽車を設立し、量産モデル第1号となるEVセダン「智己L7」を公開した。

 ファーウェイの自動運転技術を採用した「ARCFOXαS」は北汽新能源が、カナダのマグナ・インターナショナルと共同で開発したSUVタイプの高級EVである。
 中国では補助金に依存しない高級EVやSUVタイプの中大型EVが人気を集めている。大手国有メーカーは、高級EV市場で足場を固めようとしている。

上海モーターショーで笑うのは誰か

▲CATL(寧徳時代新能源科技)のロビン会長
▲CATL(寧徳時代新能源科技)のロビン会長

 上海モーターショーで出展したNIOの「eT7」(航続距離1000km)、上海汽車の「智己L7」(同1000km)、メルセデス・ベンツ「EQS」(同770km)、吉利(ジーリー)汽車集団の「Zeekr001」(同712km)、北汽新能源の「ARCFOXαS」(同708km)の5モデルが航続距離700km超の高級EVとして挙げられる。

 こうしたEVブランドの共通点は中国車載電池最大手、寧徳時代新能源(CATL)の電池を採用していることだ。「電池を制すればEVを制する」といわれるなか、中国では、EV需要の増加に伴う良質な電池の争奪戦が生じている。2011年に創業した同社は、2017年からパナソニックを抜き、世界首位を維持しており、中国では、50%のシェアで圧倒的強さを見せている。今回のショーに出展したEV約150モデルのうち、CATL電池搭載車は60モデルに達した。

 電池を安定調達することが自動車メーカー各社にとって喫緊の課題だ。上海モーターショーで笑うのは、結局はCATLかもしれない。

SNSでフォローする