新型レジェンドの「自動運転レベル3」とライバル各社の「運転支援」の違いは何か

▲ホンダ・レジェンド 自動運転レベル3に世界で初めて対応した
▲ホンダ・レジェンド 自動運転レベル3に世界で初めて対応した

 ホンダは3月4日、世界初のレベル3自動運転を実現したレジェンドを発売した。新たに搭載するホンダセンシング・エリートの自動運行装置、トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)は、高速道路や自動車専用道の渋滞時など一定条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行う。

▲ホンダ・レジェンド 自動運転レベル3は一定の条件を満たしたときに可能になる
▲ホンダ・レジェンド 自動運転レベル3は一定の条件を満たしたときに可能になる

 レベル3は何が違うのか、から整理しておこう。政府が2030年のモビリティの目指す姿をまとめた「官民ITS構想・ロードマップ2020」では、運転自動化をレベル0からレベル5までの6段階に分類している。レベル0はすべての運転操作をドライバーが行うので、運転の自動化にマトを絞れば5段階だ。

 レベル1と2の運転の主体はドライバーにあり、レベル1は前後の加速と減速を自動化した状態を指す。ドライバーのアクセルとブレーキの操作をシステムが支援する仕組みだ。追従走行機能付きのクルーズコントロールなどがこれに該当する。レベル2はレベル1に加え、横方向を制御するステアリングの操作を支援する。前記の機能にステアリングアシスト機能が付加された状態だ。

▲ホンダ・レジェンドは自動運転レベル3を可能にするために車両の前後左右に検知技術を搭載
▲ホンダ・レジェンドは自動運転レベル3を可能にするために車両の前後左右に検知技術を搭載

 レベル2までは運転支援なので、ドライバーが前方を監視するなど安全に関する義務を負うが、レベル3以上は自動運転になり、認知、予測・判断、操作を行う運転の主体はシステムになる。そのため、自動運転システムが操縦しているとき、ドライバーは前方監視義務から解放される。レベル1から2に上がるよりも大きな差があり、レベル3以上を実現するにはより高度な技術が要求される。

 レベル3は条件付き自動運転車(限定領域)と定義され、レジェンドのように「高速道路上で渋滞していること」といったような一定の条件下で自動運転が可能になる。また、システムが手に負えない状況に差し掛かると、運転をドライバーに委譲する。

▲ホンダ・レジェンド ハンズオフ運転が可能になるとステアリングのライトが青く光る
▲ホンダ・レジェンド ハンズオフ運転が可能になるとステアリングのライトが青く光る

 レベル4は「条件付き」が外れて自動運転車(限定領域)となる。システムが手に負えない状況になってもドライバーに運転の要請はせず、システムの判断で安全な場所(路肩など)に自動停止する。

 レベル5は完全自動運転車、ロボットタクシーのような無人運転も可能になる。

 高度な安全運転支援機能を実現するには、ドライバーや自車の状態や周囲の状況を正確に把握し、制御する必要がある。レジェンドは3次元高精度地図や全球測位衛星システム(GNSS)の情報を用いて自車の位置や道路状況を把握し、カメラ、ミリ波レーダー、ライダーを用いて周囲360度を検知しながら、車内のモニタリングカメラでドライバーの状態を見守る。

▲日産スカイラインのプロパイロット2.0でハンズオフ運転をしている様子 日産はいちはやくハンズオフ技術を搭載
▲日産スカイラインのプロパイロット2.0でハンズオフ運転をしている様子 日産はいちはやくハンズオフ技術を搭載

 高速道路や自動車専用道でハンズオフ機能付き車線内運転支援機能(渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール+車線維持支援システム)を作動させ、システムが定めた条件(30km/h以下)を満たすと、トラフィックジャムパイロットが起動。運転の主体はシステムに移行し、ドライバーは足(アクセル&ブレーキ)と手(ステアリング)の操作から解放される。

 ハンズオフならすでに日産のプロパイロット2.0(19年)や、SUBARUのアイサイトX(20年)が実現している。プロパイロット2.0は制限速度内でのハンズオフに対応。アイサイトXは渋滞時限定だ。レジェンドのトラフィックジャムパイロットがこれらと異なるのは、目(前方監視)が解放されるアイズオフが可能になることだ。前方監視はシステムが行っているので、ドライバーは走行中に映像を視聴したりすることができる。

▲新型SUBARUレヴォーグから搭載がスタートしたアイサイトX   ハンズオフ運転ができる(自動運転技術レベル2対応)
▲新型SUBARUレヴォーグから搭載がスタートしたアイサイトX ハンズオフ運転ができる(自動運転技術レベル2対応)

 高速道路の渋滞時以外はハンズオフが機能する。そのうちのひとつは高度車線変更支援機能で、車両が先行車に追い付き、追い越しが可能と判断した場合は、ドライバーの了解を得たうえで、システムが自動的にウインカーを出し、追い越しを行って元の車線に戻る。これも、プロパイロット2.0やアイサイトXにはない機能だ。ただし、ドライバーも安全確認を行うので、分類上はレベル2だ。

▲トヨタは高度運転支援技術「アドバンストドライブ」をレクサスLS(写真左)とトヨタMIRAIに設定
▲トヨタは高度運転支援技術「アドバンストドライブ」をレクサスLS(写真左)とトヨタMIRAIに設定

 トヨタ自動車は4月4日、高度運転支援技術の新機能、アドバンストドライブ搭載車をレクサスLSとトヨタMIRAIに設定し、それぞれ4月8日と4月12日に発売した。3次元高精度地図を使い、カメラ、ミリ波レーダー、ライダーを用いて周囲を検知し、モニタリングカメラでドライバーの状態を監視するのはレジェンドと同じである。高速道路や自動車専用道路上で一定の条件を満たした場合にハンズオフが可能になるのも同じだし、ドライバーがターンレバーを倒すことでシステムに車線変更動作を任せることもできる。

▲トヨタ/レクサスのアドバンストドライブ システムが判断してドライバーに追い越しをするか確認している画面
▲トヨタ/レクサスのアドバンストドライブ システムが判断してドライバーに追い越しをするか確認している画面

 しかし、自動運転レベル3にはあえて踏み込まなかった。その理由をトヨタは「安心して使っていただくことが大事」「人に寄り添う運転支援を重視した」と説明した。人に寄り添うとは、全幅が広い大型車を追い越す場合は、自分がステアリングを握っているときは無意識にそうするように、車線内の右側に寄りながら走るようシステムが制御することを指す。アドバンストドライブは自動化よりも運転支援の強化に軸足を置いたのだ。

▲トヨタ/レクサスのアドバンストドライブ ハンズオフ運転の対応範囲を超えたときには警告で運転を促す
▲トヨタ/レクサスのアドバンストドライブ ハンズオフ運転の対応範囲を超えたときには警告で運転を促す

 欧州メーカーではBMWやアウディがハンズオフ機能を実現している。現状では自動運転レベル2だが、レベル3の技術はすでに確立済み。各国の法律による認可待ちで、日本では20年4月1日に道路運送車両法の一部が改訂されて改正法が施行され、自動運転レベル3の実用化に必要な自動運行装置が保安基準の対象装置として新たに加えられた。認可取得第1号がレジェンドで、輸入車も含めて追随者が現れるのは時間の問題だろう。

 レベル4に関しては国内外の自動車メーカーやメガサプライヤーが開発に取り組んでいる。課題は、システムが手に負えなくなった際の自動安全停止をどう確立するかである。「官民ITS構想・ロードマップ2020」では、25年をメドに高速道路での実用化を期待している。

SNSでフォローする