新型はSUVらしい“どこへでも行けそう”な造形を追求。Bigfoot/Lift-up/Utilityをキーワードに伸びやかに仕上げた。ヘッドライトは最新トヨタ車らしいデザイン。写真は新登場の走りにこだわったGRスポーツ
6代目となる新型RAV4が世界初公開された。RAV4は1994年にクロスオーバーSUVのパイオニアとして誕生。以来、ユーザーのライフスタイルと時代の変化に応じて進化し、現在では世界180の国と地域で愛されるトヨタの代表モデルに成長した。累計販売台数は1500万台、走行距離総計は地球6000万周に達するという。RAV4は世界で最もポピュラーで、地球の隅々まで知り尽くしたクルマだ。
日本では4代目こそ海外専売となったが、5代目(2019年発売)で復活。頼りになるオールラウンドSUVとして確固たるポジションを改めて確立した。
新型のコンセプトは「Life is an Adventure」。開発陣の「人生という冒険を最大限に魅力的にしたい」という強い思いのもと、“どこへでも行けそう/なんでもできそう”という価値にフォーカス。新世代にふさわしい電動化、知能化、多様化に積極的に取り組んでいる。ラインアップはコア(CORE)、アドベンチャー(ADVENTURE)に加え、新設定のGRスポーツ(GR SPORT)の3シリーズ。パワーユニットは新開発PHEVと改良版HEVの2種を用意する。トヨタのソフトウェアづくりプラットフォーム、アリーン(Arene)を初採用したのもポイント。RAV4はSDV(Software-Defined Vehicle=ソフトウエアのアップデートで機能が進化するクルマ)の最先端という位置付けも与えられている。発売は2025年度内を予定。詳細スペックは未公表だが、新型RAV4は、次世代トヨタを象徴するモデル。近未来のクルマの魅力と技術が、ぎっしりと詰まっている。
エクステリアは、現行5代目で好評だった「力強さ」をそのままに正常進化。「Big Foot/Lift-up/Utility」をキーワードに一段と正統SUVらしく一新された。
ボディサイズは4600×1855×1680㎜(コア)。全高こそ5㎜低くなったが基本的に従来と共通。2690㎜のホイールベースも変わらない。これは世界中のユーザーの「RAV4は、現在のサイズがちょうどいい」という声に応えた結果という。新型は、日本の道路環境でも持て余さない上限。モデルチェンジのたびに大型化するクルマが増える中、大きさが変わらなかったのは大きな魅力である。
コア/アドベンチャー/GRスポーツの違いは、主にフロント回りと足元。コアはレクサスRXを想起する同色マスクと切削光輝アルミで洗練を表現。アドベンチャーは大型グリルとプロテクター、そしてダークカラーのスポークアルミを装着。ワイドトレッド化と専用ホイールアーチでラギッド感(武骨さ)を主張する。
新登場のGRスポーツは、各部の空力処理を徹底。エクストラ開口を設けたフロントマスクと超軽量20㌅アルミが走りをアピールする。GRスポーツはオンロードでのパフォーマンスを極めた存在。ワイドトレッド化とサスペンション&EPSの専用チューンを実施。電動車、とくにPHEVの高い加速性能に見合うコーナリング性能を身につけたという。SUVスポーツの新たな選択肢として期待大だ。
室内は、細部を除き全車共通意匠。開放的でワイドな視界を約束する水平基調デザインと直感的に操作しやすいコントロール系が印象的だ。シンプルなメーター、大型センターディスプレイ、そしてアレンジ自在のセンターコンソールが目をひく。走行セレクターは新鮮なトグル形状。新開発シフトバイワイヤータイプだ。
実際に乗り込むと広さを実感。945㎜の前後席カップルズディスタンスは従来と変わらないが、ゆったりとくつろげる。シートは薄型形状ながら、見た目以上に快適な座り心地だった。新型の美点は、より使いやすくなったラゲッジルーム。荷室容量が従来の733リッターから749リッターに拡大しただけでなく、後席を倒した時の床面の角度差を解消。よりフラットなスペースを実現した。
PHEVとHEVを用意するパワートレーンは、PHEVの大幅刷新が話題。PHEVはトヨタ初の第6世代シリーズパラレルHEVシステムを採用。フロントアクスルへのシリコンカーバイド半導体の採用と駆動伝達系の損失低減により小型・高効率化を実現。電池容量を30%増大することでEV走行距離を従来の95㎞から、約1.5倍の150㎞に伸ばした。駆動モーターも強化され出力は約12%パワフル化、システム出力は320psに達するという。
新型の実力は、日常を“ほぼBEVとして使える電動車”という領域を超え、“BEV以上に便利な電動車“という表現が似合う。普通充電に加え、急速充電もOK。約30分で80%まで充電できる。さらにV2Hにも対応し、家庭への給電も可能である。
HEVも魅力的だ。トランスアクスル/パワーコントロールユニット/電池の改良でモーター出力を向上。シームレスな加速に加え、軽やかな出足とダイレクトなレスポンスを実現したというから楽しみだ。
新型はアリーンの初採用で知能化にも積極的に挑戦。アリーンは単なる機能ではなく、安全・安心なソフトウェアを効率的に開発し、“ユーザーとともに成長する愛車づくり=SDV”に貢献する仕組みの総称。トヨタの考えるSDVの提供価値は、エンターテインメントや利便性だけでなく、「交通事故ゼロ」の未来を実現することだ。
その第一歩としてRAV4は、音声認識の応答速度・理解精度を高めた新世代マルチメディアを搭載。さらにドライバー異常時対応システムと、アクセルの踏み間違いに対応した急加速抑制機能を盛り込んだトヨタセーフティセンスを標準装備している。