日産リーフ。新型は経営再建中の日産の切り札。スタイリングはクロスオーバータイプに進化し、メカニズムを一新。安心して乗れる次世代BEVの代表的な存在。ラインアップは電池容量52.9kWhと75.1kWh仕様の2タイプを用意し、モーター出力はそれぞれ130/160kW。75.1kWhモデルの航続距離はWLTCモードで600km以上に達する
経営再建中の日産自動車の切り札、第3世代となるリーフがグローバル向けに発表された。リーフは2010年に世界初の量産BEVとして誕生。以来2世代にわたり70万台を販売し、19億kg以上のCO2排出量削減を達成。280億km以上の総走行距離を刻んできた。リーフは電動化に積極的な日産のシンボルであり、今後の販売を牽引するメジャープレーヤーに位置付けられている。
新型は「新しい価値、時代に応える力に挑戦するクルマ」をコンセプトに開発。北米、日本、欧州をターゲットにするワールドBEVだ。2025年秋に北米から販売がスタートし、北米と日本向けは日本工場、欧州向けは英国工場での生産を予定している。ラインアップは電池容量52.9kWhと75.1kWh仕様の2タイプ。モーター出力はそれぞれ130/160kWで、75.1kWhモデルの航続距離はWLTCモードで600km以上に達する。駆動方式はFWDになる。
特徴は、現在すでにBEVを所有するユーザー、つまり既存のリーフ信奉者はもとより、内燃機関から乗り換える際の有力な選択肢となることを目指し、航続距離の大幅な向上や充電速度の改善に加え、BEVが生活の一部としてライフスタイルを充実させる技術を搭載した点。派手な演出こそないが、機能に優れ、生活を豊かにするパートナーとして魅力的に仕上げられている。
スタイリングは、従来のHBスタイルから、人気のクロスオーバー形状にイメージチェンジ。航続距離を伸ばすため、入念に空力処理を施した。Cd値は、北米と日本仕様が0.26、欧州仕様は0.25。ともにクラストップ級のデータをマークする。欧州仕様が良好なのはタイヤサイズが195/60R18(北米・日本仕様は215/55R18または235/45R19)と細く、ドアミラー形状が異なるのが要因という。ボディサイズは4360×1810×1550mm(日本仕様)。旧型(同4480×1790×1560mm)より全長はやや短く、ライバルのBYD ATTO3(同4455×1875×1615mm)と比較しても、ひと回りコンパクト。ちなみに「新型のメインマーケットは、欧州」とメーカーでは判断している。取り回しに優れたサイズ設定は、その表れに違いない。
造形はナチュラルな印象。フォルムではなくランプ処理で個性を演出している。フロントは6つの丸みを帯びた長方形のシグネチャーが日産最新のVラインを構成。リアは3Dホログラフィックランプで、デジタルな「禅」の要素を表現した。ボディカラーは、イメージカラーの「シーブリーズ ブルーパール」を含めた8タイプ。上位グレードにはコントラストの利いたブラックルーフとの組み合わせを用意する。
インテリアは開放感を重視。空調ユニットをモータールームに配置することで、広い足元空間を実現した。インパネにはデュアルスクリーンが装備され、メーターの背景デザインは最大5種から選択可能。その中には、日本ならではの「縁側」をモチーフにしたものも含まれるという。インフォテインメントシステムは、Googleビルトイン機能付き。もちろん車内Wi-Hiが利用可能で、最大4つのUSBポートで高い利便性を提供する。ボーズ製のプレミアムオーディオを選ぶと、前席ヘッドレストにスピーカーが内蔵されるのもポイントだ。ちなみにルーフは調光機能付きガラスルーフ。日本仕様のトランク容量は420リッターで、後席は6対4の分割可倒式になる。
リーフは、電源車として外部に電力を供給するV2L機能を搭載。合計1500Wの電力を使用でき、災害時やアウトドアでのアクティビティをサポートする。
メカニズムは、BEV作りの長い実績を活かして熟成。リニアで応答性が高く、スムーズな走りを追求した。パワートレーンは、日産最新の3-in-1方式。従来は個別の備品で構成していたモーター、インバーター、減速機を一体化し10%の小型化を実現。また、高剛性モーターマウントにより振動を従来比で75%低減した。モーター制御の緻密化と相まって、リーフは、クラス水準を大幅に抜く快適な走りを実現したと、開発陣は胸を張る。
ラインアップは電池容量が52lWhと75kWhの仕様の2タイプ。最高出力/トルクは52kWhが174hp/345Nm、75kWhは214hp/355Nm。バッテリーは温度調整機能を備えたリチウムイオンタイプ。75kWh仕様はWLTCモードで600kmを超える航続距離を達成した。ATTO3の航続距離が470kmであることを考えると600kmのデータは立派といえる。しかもリーフは最大150kWの急速充電に対応したポートを搭載。150kWの空速充電器では、10〜80%まで最短35分で充電できるという。
メカニズム面では、クルマ全体の冷熱システムを一括制御するエネルギーマネジメントシステムの採用が話題。普通充電時に車載充電器から発生する熱を利用してバッテリーを温め、寒冷時の回生性能を向上させたり、バッテリーの熱をエアコンの暖房に活用するなど、熱をトータルで活用。さらにナビと連動し、走行ルートに応じてバッテリーの温度を最適化するシステムも採用した。
安全・運転支援では、「インテリジェントディスタンスコントロール」を新採用。前方車両が原則すると、システムが滑らかにブレーキを制御して速度を落とし、ドライバーの減速操作をサポート。また先行車がゆっくり停止した場合は、停止まで行う。なお日本仕様はプロパイロット2.0を搭載する。
駆動方式はフロントにモーターを搭載するFWDのみ。開発陣によると、今のところAWDの計画はないという。日産は4輪の駆動力を緻密に制御して、走行性能と快適性を同時に引き上げるe-4ORCE技術を確立済み。すでにアリアなどで高い評価を得ている。日産の新たな切り札であるリーフにe-4ORCEが今後も登場しないというのは、少し不可解な気がする。