シーライオン7はRWD(495万円/モーター出力230kW)とAWD(572万円/同390kW・写真)を設定。CEV補助金は35万円。東京都は別途補助金35万円(給電機能あり)が加算される。パフォーマンスはRWD/AWDとも良好。価格はリーズナブルな印象
2022年に上陸したBYDは日本に着実に根付き始めた。ATTO3に続き2023年にはDOLPHINを、さらに2024年夏にSEALを発売。この3月末までに3車種合計で4000台ほどを販売。街でもちらほら見かけるようになってきた。だがBYDは日本では「駆け出し」のブランドだが、本来の実力はスケールが違う。
グローバルでは、すでに世界の自動車業界を震撼させるほどの勢いを見せている。それは世界販売台数を見れば明らかだ。文字どおり右肩上がりで販売拡大を続け、2024年には暦年で427万台まで数字を伸ばした。販売台数はトヨタ、VW、ヒョンデ、GM、ステランティスに続く6位である。なんと、もはや日産やホンダを超えたわけだ。しかも生産車がBEVやPHEVなど新エネルギー車であることも特徴となっている。
3月末の発表によると、2024年暦年の売上高は前年比26%増の7770億元(約16兆700億円)。純利益は前年比34%増の402億元(約8300億円)に達したという。
新技術の投入にも積極的である。2025年初頭の事業計画説明会では、最新鋭の運転支援システム、天神之眼の全車標準装備化を進めることや、わずか5分間の充電で400km走行できる新技術の実用化のメドが立ったことを明らかにしている。
そのBYDの日本における最新モデルSEALION7が発売された。「SEALION」とはアシカを意味し、BYDの海洋シリーズのフラッグシップSUVとなる。「7」は車格を意味しており、乗車定員は7名ではなく5名だ。
ラインアップは駆動方式が異なる2グレード。RWDのSEALION 7と、AWDのSEALION 7 AWDである。価格はAWDが572万円、RWDが495万円。堂々としたサイズと充実した内容のわりに控えめなのがBYDらしい。
スペックはハイレベルだ。230kWの最高出力と380Nmの最大トルクを発揮するリアモーターは両車共通。AWDには同160kWと310Nmを発生するフロントモーターが組み合わされる。気になる満充電での最大航続距離はAWDが540km、RWDが590kmと、ともに十分なスペックを掲げる。
AWDとRWDの内外装の違いはほとんどない。RWDは19インチタイヤを装着するが、AWDは20インチになる。またAWDはブレーキキャリパーがレッドになる程度。ブラック基調のインテリアや各種装備は基本的に共通である。
室内は広く、上質な雰囲気。中央にはワンタッチで縦にも横にもでき、さまざまな機能を盛り込んだ大画面ディスプレイがあり、広いパノラマルーフの下にフラットな床面と広々とした乗員スペースを構築している。シートはたっぷりとしたサイズの本革である。
走りは最新BEVらしく洗練されスムーズ。足回りは入力に応じて減衰力が変わる可変ダンピングアブソーバーが全車に標準装備される。RWDとAWDではドライブフィールはそれなりに異なる。出力と駆動方式、車重やタイヤサイズが異なるのだから当然である。
動力性能はRWDもなかなかのレベルだが、0→100km/h加速がRWDは6.7秒、AWDは4.5秒と公表しているとおり、AWDのほうがかなり速い。発進や再加速時にAWDは心地よい瞬発力がある。
サスペンションは適度に引き締まった印象だった。SEALで感じた硬さ感はなく、乗り心地はおおむね良好。可変ダンピングアブソーバーも効いて走りにはフラット感があり、コーナリング時のロールも抑えられている。ハンドリングが俊敏で正確性に優れるのもプラスポイントだ。
ただしタイヤサイズが1インチ大径なAWDのほうが操縦安定性は高い。対してRWDは回頭性が実に軽快で、アクセルを踏むとリアから押し出してくれる感覚があって楽しく走れる。個人的には、加速フィールはAWDが、ハンドリングはRWDが好みだ。
最新BYD各車に触れて感じるのは、同クラスのライバルよりも圧倒的に価格がリーズナブルな点と、マイナスポイントになるような個所が見当たらないという事実。中でもSEALとSEALION7のAWDは高性能が際立つ。このプライスでこのパフォーマンスを実現していることに驚く。しかも、この春に一部モデルの値下げまで実施した。
BYD各車はどれも完成度が高く見た目も走りも欧州車のようなテイストがあり、室内には縦横自在のディスプレイやカラオケなどライバルが思いつかないアイデアを盛り込んでいる。快進撃を続けるには、相応の裏付けがある。近い将来、現在のBEVに加え、日本にも低価格なPHEVを導入することも公表済みだ。
日本のユーザーは「定番」を外すことに抵抗を感じる人が多いようだ。しかし商品として魅力的な要素をいくつも身につけていて、しかも価格が安いとなれば、それを買って使うのはごく自然な話。一歩踏み出すと新たな発見がありそうだ。