SUBARUフォレスターは内外装を全面刷新。写真前はX-BREAK S:HEV(価格:7CVT 420万2000円/EXは447万7000円)、リアスタイルのモデルはプレミアムS:HEV(価格:7CVT 448万8000円/EXは459万8000円)。ともに2.5リッターフラット4(160ps/209Nm)とモーター(119.6ps/270Nm)のストロングHV(S:HEV)仕様
2025年4月にモデルチェンジした新型フォレスターに試乗した。試乗の舞台は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイ、ドライブしたのは量産プロトタイプである。
スバルは北米市場での販売が好調である。中でもフォレスターは最も売れている主力車種。新型は日本よりもひと足早く北米で発売され好評を博している。
もちろん日本でもフォレスターの人気は高い。国内の新車販売におけるSUVの構成比率は2023年度には38%にまで達しており、今後も増加すると予想されている。新型は「正統派SUV」をコンセプトに、人気のSUVの「ど真ん中」で戦えるクルマを目指した。開発陣は「数多くのライバルが存在する中でユーザーに従来以上に注目してもらうためには、より大きな存在感が必要と判断しました。新型はスタイリング、走り、ユーティリティなど、すべての面で大幅なグレードアップを果たしました」と説明する。
新型はインナーフレームを採用した新世代SGP(=スバルグローバルプラットフォーム)を基本骨格とし、2670mmのホイールベースと220mmの最低地上高は従来と同じ。4655×1830×1730mmのボディサイズは全長と全幅が15mmずつ拡大しているが、それでも日本の道路環境でも持て余さないレベル。どことなくアメ車っぽいインパクトのある顔面が効いてか、もっと大きくなったように見える。
室内は上質な印象。インパネ全体がしっかりとした造形となったことで、車格がひとクラス上がった印象を受けた。最新スバル共通の大画面センターディスプレイをレイアウトしたインパネは機能的で使い勝手に優れる。すっきりとワイドな視界もうれしい。もちろん従来と同様にキャビンはルーミーである。
ラインアップはスポーツ、X-BREAK、プレミアムの基本3グレード。それぞれに標準とアイサイトXを装着したEXが用意される。各グレードは、価格に応じて装備が異なる上下のヒエラルキーではなく、個性を明確にし、ユーザーの好みや使い方に合わせて選べるように工夫したという。パワートレーンは、2.5リッターエンジン+モーターのストロングハイブリッド(以下S:HEV)と、従来から踏襲する1.8リッター直噴ターボ(以下DIT)の2種類。スポーツがDIT、X-BREAKとプレミアムはS:HEVとなる。駆動方式は、もちろん全車AWDだ。タイヤはスポーツとX-BREAKが18インチ、プレミアムは19インチを装着する。
試乗はレースウェイの外周と内周に分けて実施された。外周でS:HEVのプレミアムとDITのスポーツを乗り比べたところ、予想どおりキャラクターがかなり異なっていた。
動力性能に大差はないが、0→100㎞/h加速データはコンマ3秒ほどDITが速いという。S:HEVは条件がそろうとEV走行となり、低速域では瞬発力を発揮するものの、中~高速主体のコースでは頭打ち感が発生。あまり旨味が出ない。対してDITは中間加速に盛り上がりがあり、上までパワー感が途切れない。Sモードを選択するとその特徴がいっそう際立つ。
両車はタイヤサイズと銘柄、サスペンションチューニングが異なる。車両重量はS:HEVが100kgほど重く、前後重量配分は57対43。一方、DITは60対40である。DITはスポーツというグレード名にふさわしく、キビキビと軽快に走れるようにチューニングされている。対してS:HEVはロングドライブでの快適性を重視している。
実際のドライブフィールはS:HEVのほうが軽やかで、フロントがだいぶ軽い。タイヤが18インチでたわむ分、応答遅れを感じたりするのではと思っていたらそんなこともなかった。スバルらしい一体感のある走りを実現している。
構成部品でいうと、DIT のほうがダンパーの減衰力が高めで、とくにリパウンド側が強められている。さらに従来よりもダンパーのバルブに改良を施すとともに、チェックバルブスプリングを加えて微低速域から素早く減衰力を立ち上げることでキビキビ感を出せるようにしたという。
S:HEVについては、クロストレックと同様にリアのダンパーロッドを延長して横力を受けたときのフリクション荷重を低減。よりしなやかで上質な乗り味を追求した。今回のコースは路面がきれいなのでDITとの差は小さかったが、公道ではより違いが実感できそうだ。スピードウェイの外周路のドライビングは、DITのほうが楽しいが、異なる個性を用意したところに意義がある。
車速が低めの内周コースでチェックする。内周では従来型と比較試乗できた。新旧は走り始めから印象がだいぶ異なる。新型は操舵に対して動きに一体感があり、リアもきれいについてくる。ロールや横Gも抑えられていて、コーナーをスイスイと曲がっていける。
スピード域の低い内周路ではDIT以上にS:HEVのよさを実感した。瞬発力のある走りが気持ちいい。やはりS:HEVはタウンスピード+αの領域が大得意だ。
AWD技術とHEVの組み合わせでX-MODEは走破性をさらに高めたという。その進化ぶりをパドックで試した。S:HEVでは前後輪をつなぐクラッチが油圧式から応答性の高い電磁式に変更。同時に一連の制御を見直した。その効果で、よりすばやくスタック状態から脱出できるようになった。
新型フォレスターは、全方位にわたって着実な進化を果たしていることが確認できた。近いうちに公道やオフロードでのインプレッションもお届けする。