【世界25台限定ハイパーカー】コンセプトは「フルカウルF1」、マクラーレン・ソラスGTの胸踊るスーパーパフォーマンス!

マクラーレン・ソラスGTはゲーム「グランツーリスモ」内のバーチャルカーが原案。F1の走りをイメージしたサーキット専用シングルシータースポーツとして誕生。エンジンは自然吸気の5.2リッター・V10を積む

マクラーレン・ソラスGTはゲーム「グランツーリスモ」内のバーチャルカーが原案。F1の走りをイメージしたサーキット専用シングルシータースポーツとして誕生。エンジンは自然吸気の5.2リッター・V10を積む

フェスティバル・オブ・スピードには世界中のスポーツカーが参集

 グッドウッドサーキットの誕生からちょうど75年、そしてヒルクライムイベント 「フェスティバル・オブ・スピード」(FoS)の初開催から30年という節目の今年、メインテーマを「ポルシェの75周年」としてマニア垂涎のFoSが今年も開催された。

 FoSを訪れるたびに驚かされるのが、グッドウッドの 「私有地」の広大さだ。およそ2km弱のヒルクライムコースやモーターショーのようなイベント会場はもちろん、何千台規模の駐車場も主催者、リッチモンド公爵家の土地というから驚く(もっというと、サーキットや飛行場も私有地だ)。

走り

 グッドウッドハウス周辺の施設はクラシックな装いで統一され、響き渡るクラシックレーシングカーのサウンドと相まって、まるでタイムスリップしたかのような気分に。コース脇のテーブルに陣取って公式シャンパンの入ったグラスを掲げた瞬間、クルマ好きなら「ここからもう離れたくない」と思うに違いない。

 新旧有名レーサーによるF1やレーシングマシンによるデモランはこのイベントの白眉。今年はル・マンの100周年でもあった。75周年のポルシェ・レンシュポルトをはじめ歴代ル・マン・レーサーたちがその勇姿を披露した。

 FoSはレーシングカーやクラシックスポーツカーのイベントとして始まった。だがいまはそれだけにとどまらない。たとえばスーパーカーパドックには、ブガッティ・ボリード、パガーニ・ウトピア、ケーニグ・セグレゲーラ、フェラーリSP3デイトナ、アストンマーティン・ヴァルキリー、メルセデスAMG ONE、ゴードンマレーT.50といったミリオンダラー級のハイパーカーが勢揃い。そんなイベント、他にない。

メーカーが軒を連ねたパビリオンエリアでも各ブランドの最新作(今年はBEVがとにかく多かった!)が披露され、いまや従来型の屋内展示型ショーとは一味も二味も違う「走るモーターショー」へと成長している。

スタイル

 中でも個人的に最も印象に残ったモデルが、最終日に今年のヒルクライムでベストタイム45秒342を記録した「マクラーレン・ソラスGT」だった。マクラーレンは今年でちょうど創立60周年を迎えている。創始者ブルース・マクラーレンが亡くなったグッドウッド・サーキットの復活計画当初から、マクラーレンはグッドウッドに協力的だった。今年はその歴史のほとんどすべてがFoSに揃い、ミカ・ハッキネンやエマーソン・フィッティパルディという往年のF1チャンピオンが搭乗してデモ走行を披露した。

ソラスGTは「グランツーリスモ」から誕生。世界25台限定車

 ソラスGTは昨年のペブルビーチで発表された世界限定25台のトラック専用マシン。お値段350万㌦以上ですべてMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーション)仕立てという高性能モデルである。FoSでは初めてプロダクション1号車(顧客向け車両)が「マクラーレンハウス」前に展示されたほか、プロトタイプがヒルクライムのタイムアタックに参戦、見事に今年の第1位を獲得したというわけだ。

リア

 ソラスGTは、スタイリングの原案がゲーム「グランツーリスモ」に登場したヴァーチャルモデルだったという異色のハイパーカーである。開発責任者のアンディ・パーマー曰く、「ゲーム用にデザインされたスタイリングを可能な限り再現することが最大の目標」だったという。コンセプトはフルカウルのF1。問題はエンジン周りのデザインだったようで、使い慣れたV8ツインターボなら容易に高出力を得ることもできたが、それでは熱対策などで細身にデザインできない。そこでサイズや性能的にジャストフィットするエンジンとして実績のあるジャッド製V10・NAエンジンを選んだ。

 25台の生産車は、昨年の発表時点ですでに完売御礼だった。MSOによってアレンジされ、すべてが異なる仕様になっているらしい。泣きわめくように空気を切り裂くV10サウンドが印象的で、多くの観衆の度肝を抜く。突拍子もないスタイルとありえない高性能ぶりに圧倒された。とはいえ、なかなか手強く、希少なクルマであることは理解しているものの、ソラスGTには一度でいいから乗ってみたいと思った。フルカウルで安全性にも優れたシングルシーターというコンセプトと、あのV10サウンドがそう思わせたのだろう。

走り02

 台風級の強風警報が出てしまい、なんと初めて土曜日のイベントそのものがキャンセルされるなど波乱に満ちた30回大会、モーターショーばりに盛り上がるパビリオンの風景をみて寂しく思った点がひとつあった。それは過去にこのイベントを何度も盛り上げてきたホンダや日産、マツダといった国産ブランドの姿が見えなかったこと(懐かしのマシンたちは多数参加)。救いは迫力の走りを披露したGRトヨタのラリーマシンたちと、名古屋のAIMが出展し注目を浴びたEVスポーツ01の走る姿だけという寂しさ。

 代わりに目立ったのは、中国系や韓国のブランドだった。自動車産業における現在の勢いが現れた。動くモーターショーとしての価値と規模、その文化性を考えたとき、「グッドウッド」はいまや世界の自動車産業が無視できないイベントになっているというのに……。

マクラーレン・ソラスGT主要諸元

車名=ソラスGT
価格=未公表(世界25台限定車)
全長×全幅×全高=未公表
車両重量=1000kg
エンジン=5.2リッター・V10自然吸気
エンジン最高出力/トルク=840ps/650Nm
エンジン最高許容回転数=10000rpmオーバー
トランスミッション=7速シーケンシャルMT
駆動方式=MR
乗車定員=1名
0→100km/h加速==2.5秒
最高速度=322km/h
※スペックは欧州仕様

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