【クルマの通知表】PHEVはスタイリッシュな5代目プリウスの本命。その電動車としての高い商品性をズバリ評価!

トヨタ・プリウスZ・PHEV/価格:THS 460万円 試乗記

トヨタ・プリウスZ・PHEV/価格:THS 460万円。PHEVシステムは2リッターエンジン(151㎰/188Nm)+モーター(163㎰/208Nm)+リチウムイオンバッテリー(51.0Ah)で構成。モーター出力はHEV比で約50%増し。満充電時のEV走行可能距離は19インチタイヤで87km、17インチタイヤでは105kmに達する

トヨタ・プリウスZ・PHEV/価格:THS 460万円。PHEVシステムは2リッターエンジン(151㎰/188Nm)+モーター(163㎰/208Nm)+リチウムイオンバッテリー(51.0Ah)で構成。モーター出力はHEV比で約50%増し。満充電時のEV走行可能距離は19インチタイヤで87km、17インチタイヤでは105kmに達する

5代目は愛される存在としてプリウスを再定義

 新型プリウスを頻繁に街で見かけるようになった。造形は新鮮。眺めるたびに、よくぞここまで思い切ったと感心する。新型は、改めて「プリウスの存在価値は何か」を問い直した意欲作である。その回答がスタイリングであり、それにふさわしい走りの性能だった。エコカーからスペシャルティカーへの大変身。国内外でかなり好意的に受け取られている。個人的にも大歓迎だ。

 一方で、ここまで割り切ったがゆえに、主に使い勝手に関する問題点が生まれた。この点は、ユーザー自身が「ネガティブな面を補ってあまりある魅力」を感じるなら購入すればいい話だと思っている。新型プリウスは万人に向けたモデルではない。気に入った人に深く愛されることを目指した個性派だ。とはいえ使い勝手は重要なポイント。まずはそのあたりを検証することにしたい。

プリウス リア

インパネ

 HEVとPHEVで共通の部分から見ていくと、乗降性については前後席ともよくはない。SUVやミニバンと比較して車高が明確に低く、ピラーがこれだけ寝ているのだから当然だ。とくに長身のユーザーはつらいだろう。

 運転席に収まると、左右のフロントピラーの存在感が気になる。さらに、フロントウィンドウがスーパースポーツなみにすごい角度で奥から眼前に迫ってくる。独特の雰囲気であることは確かだ。気になったのはハイマウント式メーターの視認性。ドライビングポジションを決めると、ステアリングホイールに隠れて重要な部分が見えない。ドライバーによって異なるだろうが、もう少し工夫が必要だろう。

前シート

リアシート

 後席の居住性は、思った以上にいい。乗り込むのは少し面倒だが、広さは十分。シートの高さとバックレスト角度は成人男性が座っても問題のない作りになっている。前席下への足入れ性も確保されている。前席が大ぶりのため、やや閉塞感があるが、パッケージングは悪くない。ただし、後席用エアコン送風口はほしい。
 駆動用バッテリーの配置も工夫され、PHEVだから車内が狭い、という点はなさそうだ。ラゲッジルーム床面だけはHEVに対して少し高いが、実用上は大差ない。

PHEVは通常使用でBEV感覚が味わえるハイパワー仕様

 新型は、PHEVの注目度が高まっている。PHEVを簡単に表現すると、バッテリーをたくさん積んで外部から充電できるようにしたプリウスのハイパワー仕様ということになる。

 これまでにもPHEVは設定されていたが、販売は芳しくなかった。価格の問題もあったが、HEVで十分と感じた人が多かったため、PHEVに目が向かなかったに違いない。旧型は内外装デザインを変えて、プリウスの上級版であることをアピールしていたが、状況はそれほど変わらなかった。

スタイル

エンジン

 新型では、デザインではなくクルマの本質、「性能」の違いを打ち出した。大いに共感を覚える。
 PHEVは、2リッターエンジンとモーターで構成する。HEV比で約5割増しの高出力モーターと、従来型PHEVより、こちらも約5割増の大容量バッテリーを搭載している。満充電時のEV走行距離は大幅に延長。従来型の約60kmに対し、新型は19インチ車で87km、17インチ車は105kmまで伸びた。

 新型プリウスは、HEVでも旧型とは比べものにならないほどリニアで瞬発力があるが、PHEVはスポーティカー感覚。市街地でのストップ&ゴーもさることながら、高速道路の再加速のように、もっと高い車速域でハイパワーのメリットを感じる。0→100km/h加速6.7秒のパフォーマンスは伊達ではない。

 PHEVの大きなアドバンテージは、チャージモード以外ではエンジンがかかる頻度が圧倒的に少ないことと、静粛性に優れることだ。HEVはけっこう頻繁にエンジンが始動し、タイヤや風切り音など車外の音が聞こえる。対してPHEVは通常走行時は、まるでBEVのイメージ。静粛なドライブが楽しめる。

タイヤ

コード

 フットワークの仕上がりもなかなかのレベルだ。ドライバーズカーと表現できるほどドライバビリティは高い。新世代のTNGAの実力の高さと、それをもとに巧みにチューニングされていることがうかがえる。
 歴代PHEVがHEVに対してハンドリングで重々しさが感じられたことを思うと、一線を画している。HEVと大差ない感覚で走れるのはうれしい。これまでなかった本来的なドライビングプレジャーの持ち主である。市街地を普通に走っても、ワインディングを攻めても、ファン・トゥ・ドライブを味わえるのが新型プリウスの魅力だ。

 乗り心地については、重量増をカバーするために足回りが強化されているPHEVは、HEV以上に「硬さを感じるシチュエーション」がたびたびある。決して不快ではないが、気になるユーザーもいるだろう。

 HEVの2WDにもE-Fourにも、それぞれ強みと持ち味はあるが、ひとまず現時点での総合的な実力で、最も完成度が高いプリウスはPHEVだと思う。

通知表/トヨタ・プリウスPHEV 価格/460万円

チャート

総合評価/76点

Final Comment
走りとハンドリングに優れた電動車
デザインが生むネガを容認できるかがポイント

 使い勝手と快適性能の評価はやや低く、動的性能は高い評価になった。乗降性や視界はあまりよくない。車両感覚もつかみにくい。それはデザインがもたらしたもの。スタイリングは、プリウス最大の魅力であり存在意義。いくら点数が低くくても、オーナーが納得すれば問題はないと思う。走行性能はなかなか優れた評価になった。パフォーマンスは力強く、ハンドリングも気持ちいい。燃費を含めた環境への優しさもさすがだ。プリウスPHEVは、個性明快な電動車である。

使い勝手

快適性

動力性能

魅力

コース

トヨタ・プリウスPHEV 主要諸元と主要装備

エンブレム

グレード=Z PHEV
価格=THS 460万円
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
車重=1570kg
エンジン=1986cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=111kW(150ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(19.2kgm)/4400〜5200rpm
モーター最高出力=120kW(163ps)
モーター最大トルク=208Nm(21.2kgm)
駆動用バッテリー=リチウムイオン
容量=51.0Ah
WLTCモードEV走行換算距離=87km
WLTCモードハイブリッド燃費=26.0km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:23.7/28.7/25.5)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R19+アルミ
駆動方式=FWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
主要装備:プリクラッシュセーフティ/緊急時操舵支援+フロント:クロストラフィックアラート+レーンチェンジアシスト/レーントレーシングアシスト&レーンディパーチャーアラート/レーダークルーズコントロール/アダプティブハイビーム/ロードサインアシスト/ドライバー異常時対応システム/プロアクティブドライビングアシスト/発進遅れ告知/パノラミックビューモニター(床下透過表示機能付き)/トヨタチームメイト(アドバンストパーク)&パーキングサポートブレーキ/ドライブモードセレクト/リジェネレーション(回生ブースト)/EV・HEV切り替えスイッチ(バッテリーチャージモード付き)/ステアリングヒーター&タッチセンサー付き合成皮革ステアリング/合成皮革シート/前席シートヒーター&ベンチレーション/フロント:パフォーマンスロッド/フード&ダッシュサイレンサー/バイビームLEDヘッドライト/ヒートポンプ式オートAC/ワイヤレス充電器/ナビ機能内蔵12.3インチディスプレイオーディオ/ETC2.0ユニット/先読みエコドライブ機能
装着メーカーop:ソーラー充電システム28万6000円/ITSコネクト2万7500円/デジタルインナーミラー&ドライブレコーダー8万9100円/デジタルキー3万3000円
ボディカラー:マスタード
※価格はすべて消費税込み

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