【最新モデル試乗】これぞ英国製サラブレッドの到達点。アストンマーティンDB12のほとばしるスーパーパフォーマンス!

アストンマーティンDB12/価格:8SAT 2990万円 試乗記

アストンマーティンDB12。スタイリングは従来のDB11をベースに洗練。ルーフ回りやリアセクションには共通イメージ。駆動方式はFR。MG製の4リッター・V8ツインターボ(680ps/800Nm)は、DB11用の5.7リッター・V12ツインターボ(639ps/700Nm)以上のハイポテンシャルを実現する

アストンマーティンDB12。スタイリングは従来のDB11をベースに洗練。ルーフ回りやリアセクションには共通イメージ。駆動方式はFR。MG製の4リッター・V8ツインターボ(680ps/800Nm)は、DB11用の5.7リッター・V12ツインターボ(639ps/700Nm)以上のハイポテンシャルを実現する

ブランド誕生110年の節目に主力モデル、DB12デビュー!

 アストンマーティンにとって2023年は特別な年である。今年はブランド誕生110周年であり、これまでブランドの中核を担ってきたGTカー、「DBシリーズ」の生誕75周年でもあるからだ。DB12は、そんな節目に自らを祝うべくデビューした主軸モデルである。

「DB」とはデイビット・ブラウンの頭文字。第2次世界大戦後にアストンマーティンとW.O.ベントレーを擁するラゴンダを買収し、ベントレーの関わった6気筒エンジンをアストンマーティンの新型モデルに載せることを思いついた人物である。彼こそが高価で高性能なGTメーカーという、ブランドイメージの基礎を築いたのだ。

DB12リア

真横

 もっともDBシリーズはデイビット・ブラウンが経営から手を引いた1970年代にDB6の生産終了をもって一時途切れた。DBシリーズが再登場するのは1994年。当時フォード傘下になっていたアストンマーティンはDB7を発表する。その後、さらにブランド復興へと力が注がれ2004年にはDB9がデビューし大成功をもたらした。

 いまもDBシリーズがブランドの中核であることは、最新ラインアップを見れば一目瞭然だ。人気のスーパーSUVはDBXを名乗っているし、伝統的な2ドアGTモデルのDB11やDBSがアストンマーティンのアイコンとなっている。

 5月末、モナコ近郊で発表されたDB12は、もちろんDB11の後継モデルである。DB12は「スーパーGT」をコンセプトに開発された。そうスーパーGTである。単なるGTではない。開発陣は、スポーツカー性能にも徹底的にこだわったスーパーモデルを目標とした。

DB12は、伝統と革新が融合した生粋サラブレッド。滑らかでシャープ、圧倒的に速い

 ボディフォルムはDB11とさほど変わらない。リアからの眺めなどはほとんど同じ。そういう意味ではビッグマイナーチェンジだ。とはいえメーカーによると全体の80%程度がDB11とは互換性のない新設計という。なるほどルーフラインやリアセクションこそ同じだが、フロントマスクはライト類も含めていっそうアグレッシブになり、インテリアに至ってはDB11の面影など微塵もなくなった。

 さらにメルセデスAMG製の4リッター・V8パワートレーンは680ps/800Nmにパワーアップされ、ボディ&シャシーも鍛え抜かれたうえに、最新の制御テクノロジーを惜しみなく投入している。内容を考えればほぼフルチェンジと表現して差し支えない。

 実際に乗って、DB12のスーパーぶりを実感した。ドライブフィールはDB11とまるで異なる。その激変ぶりに南仏からの帰国後、そのままアストンマーティン東京に向かい、DB11に再試乗したほどだ。

DB12走り

DB12エンジン

 なにしろ、走り出した瞬間から「違い」を感じる。DB12は前輪がとてもしなやかに転がりはじめる。DB11にはもう少し突っ張ったところがあった。新たなダンピングシステムが功を奏しているのだろう、新型は滑らかに徹する。

 電動パワーステアリングの恩恵も大きい。ステアリングフィールにはまるで引っ掛かりがなく、実にスムーズ。少し走れば、もう自分と一体になっている。ミラーから見えるリアフェンダーが、勇ましい。ミラーそのもののデザインも凝っている。ウルトラモダンになったダッシュボードを眺めつつ、新たな発見を繰り返していくうちにDB12に引き込まれている自分がいた。

 空いたワインディングロードに差し掛かった。ドライブモードをスポーツ+にして一気に駆ける。ハンドリングは素晴らしくクイック。驚くほど先へ先へと曲がっていく。クルマが勝手に曲がっていくようにさえ感じる。しかもボディはつねに小さく感じられ、すべてがドライバーの手の内にあるように思わせる。コーナー出口でアクセルをワイドオープンすると、いままでとまったく別種のエンジンかと思うほどに鋭い加速をみせた。これほど走りが進化しては、もはやDB11オーナーも降参せざるを得まい。

 全開加速とアクセルオフ時のサウンドは、従来に比べて野卑たところがまるでない。それでいて力強さと官能性が感じられクルマ好きの心を揺さぶる。隣にすやすや眠るパッセンジャーがいなければ、さらに目を三角にしてスポーツカー性能を楽しんだことだろう。まさにスーパーGTの誕生である。

DB12インパネ

DB12スタイル

 ひととおりそのハイパフォーマンスを味わったあとは、驚くほど高い走りの完成度が余裕を生むのだろう。心とドライブモードをGTへと戻して、ゆったりまったりとクルージングを楽しもうという気分になった。英国の老舗ブランドの作るGTは実に奥が深い。金持ち喧嘩せず、の境地である。

 DB12のV8ツインターボエンジンはすでにDB11のV12ツインターボのスペックを上回り、なおかつ効率的だ。それゆえアストンマーティンは潔く12気筒を諦めることができたのだろう。ブランドのGT史を紐解けば、12気筒より8気筒、8気筒より6気筒がお似合いで、効率性と高性能化を求めながら先祖帰りしようと画策中なのかもしれない。だが、エンジンの官能性という点では、12気筒にアドバンテージがある。そこを失ったことだけが少し悔やまれる。とはいえ総合性能は格段に進化した。DB12は、まさにスーパーGTである。

アストンマーティンDB12主要諸元

モデル=DB12
価格=8SAT 2990万円
全長×全幅×全高=4725×1980×1295mm
ホイールベース=2805mm
車重=1788kg
エンジン=4リッター・V8DOHC32Vツインターボ
エンジン最高出力=500kW(680ps)/ 6000rpm
エンジン最大トルク=800Nm(82.5kgm)/2750〜6000rpm
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:275/35ZR21/リア:325/30ZR21
駆動方式=FR
乗車定員=4名
0→100km/h加速=3.6秒
最高速度=325km/h
前後重量配分=48:52

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