【クルマの通知表】「卓越の走り」を掲げたニューカマーSUV、ZR-Vに宿るホンダイズムとは!?

ホンダZR-V e:HEV・Z(4WD) 価格/411万9500円 試乗記

ホンダZR-V・e:HEV・Z(4WD)。スタイリングはクーペの流麗さを持つプロポーション。全長×全幅×全高4570×1840×1620mmのボディサイズは、マツダCX-5(同4575×1845×1690mm)とほぼ同等。フロントマスクは個性的な縦桟形状

ホンダZR-V・e:HEV・Z(4WD)。スタイリングはクーペの流麗さを持つプロポーション。全長×全幅×全高4570×1840×1620mmのボディサイズは、マツダCX-5(同4575×1845×1690mm)とほぼ同等。フロントマスクは個性的な縦桟形状

ホンダの新世代SUVは、個性明確なキャラクター

 CR-Vは北米や中国など、海外で大ヒットしている。だが、日本での人気はいまひとつ。ヴェゼルという出来のよい弟分が頭角を現した影響か、はたまたサイズが大きくなりすぎたせいか、だんだんと存在感が薄れていった。

 海外ではすでに販売されている最新CR-Vの扱いが今後、日本でどうなるかは不明。代わって日本でも販売がスタートしたのがZR-Vだ。ZR-VはCR-Vと同じように、シビックをベースとするものの、いくぶん小柄なクロスオーバーSUVである。

ZR-V リア

Fマスク

 スタイリングは個性的。代を重ねるごとに当初とは別物のアクの強いデザインとなっているCR-Vはもちろん、第2世代のヴェゼルにも似ていない、ホンダSUVラインアップの中で独自のスタイリングが与えられている。個人的には当初つかみどころがない印象を受けたが、見慣れるとなかなか味わい深いと感じている。受注状況はまずまずのようだ。

 テスト車は最上級のe:HEV・Zの4WD。本革シートをはじめ、ナビシステム、プレミアムオーディオなどを標準装備する。価格は同クラスの中でやや高めだが、装備を考えると納得。オプションはほとんど必要ないだろう。

 乗降性はまずまず。車高も地上高もそれほど高くはない。乗り込むと、シビックとの共通性が高いインパネが、開放的なイメージを演出。奥にエアコン送風口を備えたハニカムのパネルが目を引く。視界は全方位にわたり良好。ピラー形状やドアミラーの位置関係などがよく考えられていて死角が少ない。
 メーターはシンプルで見やすく必要な情報を的確に表示してくれる。ステアリングスイッチやエアコンの操作系なども直感的に扱え、使いやすい。ただし、インフォテインメント系はもう少し目新しさがほしい。

インパネ

ラゲッジ

 室内の空間設計はパーソナルなイメージ。ボディサイズの関係で生まれたスペースの余裕を贅沢に使っている印象だ。上半身は広々としているのに対し、下半身はややタイトぎみに仕上げている。ハーフブリッジ状のセンターコンソールやドアポケットは、機能的な作り。造形面でドライバーズカーであることを印象づける。
 後席は、正直あまり居心地がよくない。シートはヒップポイントが低め。頭上には余裕があるが、ヒール段差は不十分で大腿部の収まりが悪い。前席下への足入れ性も物足りない。とはいえフロアがほぼフラットなのは美点。後席用空調の吹き出し口が用意されている。

 荷室は側面の樹脂パネルにキズが目立ちにくよう模様がつけられている。容量はなかなか広い。クルマから離れると自動で閉扉する「予約クローズ機能」が付いたパワーテールゲートは、自動開閉動作を一時停止できる機能や、好みの開度に設定できる機能が重宝しそうだ。

シート01

シート02スポーツモードでの走りの一体感は快感レベル。乗り心地が全般的に硬めな点が気になる

 走りは、市街地を普通に走る分には、軽快で乗りやすい。半面、路面への感度が高く、走行中はずっと微振動が続き、乗り心地の硬さが気になるシーンが多い。そのトレードオフか、路面のきれいな高速道路を巡航するとフラット感はそれなりに高い。交差点を曲がるような、あまりGのかからない状況の身のこなしも軽快だ。ただし首都高速JCTのような長く続くコーナーでは、ホンダの他車種と同様、前後のロールバランスが気になるシーンがあった。リアよりもフロントが大きめのロール設定になっているのだ。

Fスタイル

エンジン

 e:HEVハイブリッドは最新世代。2リッターエンジンは発電が主体。発進や通常領域はモーターで走る。一方、高速走行や登坂などエンジンのほうが効率のよい状況では積極的にエンジンを使う。普通に走る分にはレスポンスがリニアで非力感もない。
 ノーマルモードでも平坦な場所ではそれなりにパワフルで乗りやすい。スポーツモードを選択すると瞬発力が増して走りの一体感が高まる。なかなか快感だ。
 フルハイブリッドの4WDながら、車両重量が約1.6トンに抑えられているのは大したもの。その効果はドライブフィールにも表れている。

 バッテリーの減りは意外と早く、上り坂になると40km/hほどで走っていてもモーター走行を維持しなくなる。効率を優先したセッティングなのだろうが、正直な気持ちとしてはもう少しEV走行で粘ってくれるとうれしい。
 ブレーキフィールにあまり違和感はないが、ペダルの剛性感はもう少しほしい。それだけでさらにコントロール性がよくなるように感じられた。

 ZR-Vは、よくまとまったクルマだ。ただしヴェゼルのような、クラス水準を突き抜けた上質さや完成度はない。乗り心地は全般的に硬く、舗装路でのハンドリングの仕上がりは抜群とはいえない。ミドルクラスSUVは各メーカーのエースが揃う激戦区。その群雄割拠の中で個性と魅力がやや見えにくいように思えたのも正直なところである。

通知表/ホンダZR-V e:HEV・Z(4WD) 価格/411万9500円

チャート

総合評価/73点

Final Comment

全般的に光る使い勝手とパフォーマンス
性格はドライバーズSUV。快適性はいま一歩

 内容的にはシビックとの共通性が高いが、評価は車重増や4WD化に加えて、SUVとしての使われ方を考慮した。全般的に使い勝手と動的性能はよかった半面、快適性能はいまひとつ。動的性能はヴェゼルを上回ったが、快適性はだいぶ下回っていた。このクラスのSUVの乗り心地は、軒並み硬めになっている。中でもZR-Vは「硬さ」が気になった。SUVとしてのユーティリティは十分。e:HEVの滑らかで力強い走りも魅力的である。燃費は平均レベルだった。

使い勝手

快適性

動力性能

魅力

テストコース

ホンダZR-V主要諸元

グレード=e:HEV・Z(4WD)
価格=411万9500円
全長×全幅×全高=4570×1840×1620mm
ホイールベース=2655mm
トレッド=フロント:1590/リア:1605mm
車重=1630kg
エンジン=1993cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク=182Nm(18.6kgm)/4500rpm
モーター最高出力=135kW(184ps)/5000〜6000rpm
モーター最大トルク=315Nm(32.1kgm)/0〜2000rpm
WLTCモード燃費=21.5km/リッター(燃料タンク容量57リッター)
(市街地/郊外/高速道路:19.5/23.9/21.1)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/55R18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m

主要装備:ホンダセンシング(衝突軽減ブレーキ+踏み間違い衝突軽減システム+歩行者事故低減ステアリング+路外逸脱抑制機能+渋滞追従機能付きACC+車線維持支援システム+トラフィックジャムアシスト+先行車発進お知らせ機能+標識認識機能+オートハイビーム+パーキングセンサーシステム)/マルチビューカメラシステム/アクティブコーナリング灯付きフルLEDヘッドライト/Hondaコネクトディスプレー+ETC2.0車載器/BOSEプレミアムサウンド(12スピーカー)/ドライブモードスイッチ/前席電動機能付き本革シート/前後シートヒーター/ステアリングヒーター/左右独立温度調節式オートAC(プラズマクラスター技術搭載)/パワーテールゲート/ステンレス製スポーツペダル/コンフォートビューパッケージ/電動サーボブレーキシステム/メタル製減速セレクター
ボディカラー:プレミアムクリスタルガーネットメタリック(op5万5000円)

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