完成度、それはすべてに満足を与えること

マイナーチェンジした最新のプリウスに試乗した。新型の大きな変化ポイントはエクステリアデザインだ。前後ともライト回りを中心にイメージが変わった。従来モデルのスタイルは、いささか〝過剰〟だった。対して、新型は抑制をきかせた、おとなしい方向にシフトされている。全体にスッキリとしたイメージで、清潔感がある。

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▲トヨタ・プリウス・Aツーリングセレクション(FF) 新型は洗練されたスタイリング 全車がDCM(専用通信機)を装備したコネクテッドカーに発展 写真のボディカラーは新色のブルーⓂ メカニズム面は基本的に従来と同じ

 2015年暮れにデビューした従来モデルは、先端、進化、未来、といったイメージをアピールする意図があったのだろう。個性的だが少しやりすぎの感があった。その結果、いわゆるとがったデザインになり、好き嫌いがはっきり分かれる結果となった。新型プリウスにはそんな状況への対応が色濃く反映されている。特徴的な5ドアHBのプロポーションはそのまま受け継いでいるので、パッと見たときの印象はあまり変わっていない。しかし確実にハンサムに、スマートに変身した。先進的なイメージはそのままに、過剰な印象が影を潜め、多くのユーザーが抵抗なく受け入れられるデザインに変化している。ボクも、アグレッシブすぎて〝奇をてらった〟とさえいわれかねない領域にあった従来モデルのデザインには強い抵抗感があった。しかし、新型のデザインは自然となじむ。もし、15年にこのデザインで発売されていれば、プリウスの販売動向は違ったものになっていたように思う。もちろん、ポジティブな方向に向いただろうということだ。
 新型のボディサイズは全長×全幅×全高4575×1760×1470mm。従来モデル(4540×1760×1470mm)と比較して、全長が35mm長くなった。外観以外の新型の大きな変更点は、全車がDCM(専用通信機)標準装備のコネクテッドカーになったことだ。プリウスとトヨタ・カスタマーセンターが通信でつながり、カーライフを24時間サポートしてくれる。オペレーターは、外出先での面倒なショップ探しなども行ってくれるし、その店舗をナビの目的地に設定してくれる。また、スマホからナビの目的地設定などができるのは便利だ。コネクテッドサービスの利便性は実際に使ってみると強く実感できる。ディーラーに出かけ、体験してみることをお勧めする。
 運転支援システム(トヨタセーフティセンス)の全車標準化も新型の魅力ポイントだ。 事故の多くは、いわゆる〝うっかりミス〟によって引き起こされるものだが、プリウスはその多くをカバーしてくれる。運転支援システムは年々高度になっているし、今後の発展も大いに期待できそうだが、高いレベルのシステムの標準装備はうれしい。
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▲プリウスの駆動方式はFFと4WD 4WDは後輪をモーター(7.2㎰)で駆動する電動タイプ プラットホームは最新のTNGA 足回りは4輪独立システム

 試乗車はAツーリングセレクション。車両本体価格は300万6270円だが、ディーラーオプションを含めフル装備状態の試乗車は349万3000円(消費税込み)だった。インテリアの質感は高い。試乗車のナビは9インチ仕様だったが、オプションのプリウスPHVと同じ11・6インチの縦型大型ディスプレイを選べば、キャビンの表情はガラリと変わる。新しい時代のクルマに乗っている感覚が強くなる。
 パワートレーンやシャシーは従来型を引き継いでいる。ハイブリッド機構は1.8リッターエンジン(98ps/14・5kg・m)とモーター(72ps/16・6kg・m)で構成され、トランスミッションは電気式の無段変速だ。スペックは従来型と同じ。細部の調整や改良は行われているのだろうが、改良項目はカタログには書かれていない。あくまで細かな手直し程度のリファインなのだろう。走り味と乗り味は満足感が高かった。発進は滑らかで、同時に力強さも感じさせる。速いとか、パワフルというレベルではないが、ハイウェイをはじめとして一般路上で力不足を感じるシーンはまずない。
 速い流れにも、気負わずに追従していける。100km/hのクルージングは快適だし、130km/hあたりまでなら快適性はキープされる。日本の高速道路にも、近々に120km/h区間が生まれるが、プリウスは余裕で対応できる。うれしいのは、高速領域での動力性能に不足がないというだけでなく、静粛性面でもハイレベルな点だ。エンジンの遮音性はいいし、風音、ロードノイズもよく抑え込まれている。

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▲従来はホワイト仕上げだったステアリングとセンターセレクターとコンソールの加飾パネルをブラックで統一 opナビは写真の9㌅と縦型11.6㌅を設定
 乗り心地は、フラット感こそもうひとつといった印象はあるものの、全体に優しい乗り味であり、不整路面でも、不快な、あるいは低級なショックや音を引き出すことはない。なお、東京〜箱根間を往復した試乗時の燃費は22・4km/リッターをマークした。最新のプリウスの実力は依然として一級品である。時代が求めるニーズを巧みにバランスさせたハイグレードなHB車の代表だ。

■主要諸元と主要装備
グレード =Aツーリングセレクション(FF)
価格= THS 300万6270円
全長×全幅×全高=4575×1760×1470mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント:1510×リア:1520mm
車重=1390kg
エンジン=1797㏄直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=72kW(98ps)/5200rpm
最大トルク=142Nm(14.5kgm)/3600rpm
モーター最高出力=53kW(72ps)
モーター最大トル=163Nm(16.6kgm)
JC08モード燃費=37.2km/リッター(燃料タンク容量43ℓ)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=215/45R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
●主な燃費改善対策:可変バルブタイミング/アイドリングストップ/電動パワーステアリング/ハイブリッド/充電制御/電気式無段変速
●主要装備:トヨタセーフティセンス(衝突被害軽減ブレーキ+車線逸脱警報+オートマチックハイビーム+全車速対応レーダークルーズコントロール)/ブラインドスポットモニター/インテリジェントクリアランスソナー/ドライブスタートコントロール/ヒルスタートアシスト/LEDヘッドランプ/オートワイパー/本革巻きステアリング/エレクトロシフトマチック/スマートエントリー/ドライブモードスイッチ/カラーヘッドアップディスプレイ/グラフィックモニター/合成皮革シート/快適温熱シート/後席センターアームレスト/オートAC/エコ空調モードスイッチ/イルミネ-テッドエントリー/トノカバー/グリルシャッター/フロアアンダーカバー/DCM(専用通信機)
●装着メーカーop:ナビレディセット(バックカメラ+ステアリングスイッチ)4万3200円/アクセサリーコンセント4万3200円/おくだけ充電1万2960円/幾何学調ルーフフィルム5万4000円/ITSコネクト2万7000円
●ボディカラー:ブルーⓂ

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