
ランボルギーニは、すでに全車の電動化を完了。販売も絶好調。2024年のランボルギーニの世界販売は1万687台。2017年比で約2.8倍に急伸し、利益は8億3500万ユーロ(約1376億円)に増大。いまや利益率は27%と驚異的なレベルに達している
Lamborghini Now and the Road Ahead
「地球上に暮らす者であれば誰もがCO₂の排出量低減に貢献しなければならない。ランボルギーニもその例外ではありません」
2025年7月にインタビューした際、ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマン チェアマン兼CEOはそう高らかに宣言した。
「サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニ本社は、2015年にカーボンニュートラルを達成して以来、いまに至るまでこの状態を維持しています。そしてわれわれが生産する製品についてはCO₂排出量をできるだけ抑える努力を続けています。言い換えれば、ランボルギーニは企業活動と製品の両面でエミッション低減の社会的責任を負っているのです。もしも私たちが何の対策もしなければ、市場から『こんなにエミッションの多い製品は必要ない』との判断を突きつけられることでしょう。ゲームオーバーにならないようにするために、つねに一歩先に手を打つとことが重要だと私たちは考えています」
彼の言葉を要約すれば、ランボルギーニは企業活動と製品の両面でCO₂削減に取り組んでいるとなる。
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governnance)を考慮した経営活動を意味するESGの観点からいえば当然の発言だが、ランボルギーニほど環境問題を重視した自動車メーカーは珍しい。なにしろ、彼らは2024年8月に発表したテメラリオをもって量産モデルのPHEV化を完遂。伝統ある自動車メーカーとして史上初めて電動化モデルだけをラインナップするブランドに生まれ変わったのである。
既存モデルを強引に電動化モデルに置き換えるだけでなら、どんな自動車メーカーでもできないことはない。ただし、無闇に電動化を推し進めれば製品の魅力は減退。販売シェアを落とし、最悪の場合、経営危機に陥る可能性がある。
しかし、ランボルギーニは電動化を推し進めながら販売台数を伸ばし、利益も拡大してきた。この点にこそ、同社の最大の特徴があるのだ。
2017年には3815台にすぎなかった年間販売台数は、2024年には1万687台を達成。わずか7年間で販売台数を2.8倍にまで増やしてみせた。
売り上げ高はおよそ10億ユーロ(当時の為替レートで約1270億円。以下同様)から31億ユーロ(約5070億円)へと約3倍へ、利益はおよそ5800万ユーロ(約73億円)から8億3500万ユーロ(約1376億円)へと約14倍(日本円換算では約19倍)へと急伸。利益率はいまや27%と驚異的な好成績を収めている。
その一方で、ランボルギーニは2021年に電動化戦略「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」を発表。この計画に従って、まずは2023年3月にフラッグシップのアヴェンタドールをPHEVのレヴエルトに置き換えると、ウルスのPHEV版であるウルスSE、ウラカンの後継モデルでV8エンジン+3モーターのPHEVシステムを搭載したテメラリオを立て続けにリリースし、全量産モデルの電動化を一気に成し遂げたのだ。
それを追い風に、彼らは着実に業績を伸ばし、販売台数、売り上げ高、利益、利益率のいずれも史上最高記録を達成したのである。
これは「自動車の電動化は一部で足踏みをしている」と報道される現状を鑑みれば、奇跡といっていい業績である。
なぜ、ランボルギーニは電動化と業績改善の両方を同時に成し遂げることができたのか? そのヒントは、ヴィンケルマンが「ディレッツィオーネ・コル・タウリ」発表時に語った次の言葉に集約できる。
「私たちは、自分たちのすべてを変えないために、自分たちのすべてを変えることにしました」
まるで禅問答のようなこのコメント、最初の「自分たちのすべて」とはランボルギーニのアイデンティティを示しており、2番目の「自分たちのすべて」はランボルギーニのスーパーカーに搭載されるパワートレーンを指していると翻訳すれば、理解しやすいだろう。
2021年5月に行ったインタビューで、ヴィンケルマンは「顧客に夢のクルマを提供し続けること」がランボルギーニの使命であると定義した。すなわち、卓越した動力性能と刺激的なハンドリング、そしてカウンタックから続く前衛的なフォルムのスーパーカーを世に送り出すことが、彼らの使命であると同時にアイデンティティであると位置づけたのだ。
そして2番目の「自分たちのすべて」は、いうまでもなくパワートレーンの電動化にある。この結果、レヴエルトはV12エンジンを自然吸気式としたまま3モーター方式のPHEVシステムを搭載。テメラリオのエンジンはウラカンの自然吸気V10からV8ツインターボにスイッチしたものの10000rpmまで回る官能性を追加したうえで920cvの驚異的なシステムパワーを実現。そしてウルスSEはベースとなるV8ツインターボはそのままにPHEVシステムを組み合わせることにより「史上最強のウルス」を実現した。つまり、卓越した動力性能は電動化を通じていっそうのレベルアップを果たしたのである。
ハンドリングもより刺激的に変化している。レヴエルトとテメラリオは3モーター方式とランボルギーニ伝統の4WD技術を駆使することで、レスポンスに優れた操縦性と圧倒的なドリフトコントロール性を達成。レヴエルトでは、これまでV12モデルでは困難とされた大舵角のカウンターステアも容易に受け入れる特性を実現した。そしてウルスSEは4WD機構に電子制御システムを採り入れることで従来からのアンダーステアを打ち消し、ニュートラルステアからオーバーステアへと移り変わる特性を実現したのである。つまり、電動化によってランボルギーニのスーパーカーはさらにスリリングな存在に生まれ変わった。
もちろん、カウンタックから続くウェッジシェイプは最新世代の全モデルに採用。こうして「自分たちのすべてを変えないために、自分たちのすべてを変える」を成し遂げたのである。
