【カーデザインを語ろう】日産Be-1/パオ/フィガロが重視したのは心地よさ。時代の空気を反映しスマッシュヒットを記録

Be-1は日産のパイクカー第1弾。1985年の東京モーターショー出品車が大きな話題を呼んだため市販化が決定した

Be-1は日産のパイクカー第1弾。1985年の東京モーターショー出品車が大きな話題を呼んだため市販化が決定した

3台のパイクカーが提示したデザインの価値

 日産は、1987年のBe-1を皮切りに、1989年にパオ、そして1991年にはフィガロというデザインに特化したスペシャルモデル、パイクカー(PIKE=槍の先)をリリースする。3車とも当時のベーシックカー、マーチをベースにしたコンパクトモデルで、従来のクルマづくりとは別の価値観を導入した点がポイントだった。
 千葉匠氏は「パイクカーは「進化することが重要」という考え方から一度距離を置きましょうというポストモダンの潮流で生まれたクルマです。ファッション業界の手法を取り入れて、機能ではなく心が充足するデザインを求めたのが特徴でした」と解説する。

Be-1

クラシックミニにも似たシンプルなBe-1の室内。ベース車のマーチとの共通部品はない。車名は「B案のNo.1」に由来

クラシックミニにも似たシンプルなBe-1の室内。ベース車のマーチとの共通部品はない。車名は「B案のNo.1」に由来

 Be-1(1リッターNA)は、1987年の東京モーターショーに参考出品された同名のプロトの市販化。世の中のハイパワー化の流れに対し、あえてレトロ感覚の癒しを追求。周囲を笑顔にするフレンドリーな雰囲気を身につけていた。1万台の限定生産車だったが、予定の数倍の申し込みが殺到する高い人気を集めた。
 パオ(1リッターNA)は現在のクロスオーバーSUVの先取り。「冒険」をテーマに各部をデザイン。1987年の東京モーターショーにプロトを出品。1989年に市販した。アースカラーのボディカラーをはじめ、外ヒンジのドアパネル、上下2分割のリアサイドウィンドウ、クリーム色のステアリングなど、すべてに「遊びゴコロ」を注入。Be-1の反省をもとに期間限定申込みという受注スタイルを採用し、販売台数は4万2000台に達した。

パオ

パオのラインアップは標準ルーフとキャンバストップの2種。エンジンは自然吸気の1リッター(52ps)。Be-1と異なりパワーステアリングを標準装備していた

パオのラインアップは標準ルーフとキャンバストップの2種。エンジンは自然吸気の1リッター(52ps)。Be-1と異なりパワーステアリングを標準装備していた

 3台目のフィガロ(1リッターターボ)は、「日常のちょっとしたお洒落」がテーマのセミオープン。車名はモーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』に由来。コンセプトは「優雅な気分を気軽に楽しめるパーソナルクーペ」。サイドを残して開口するオープントップと、レトロ調スタイリングが魅力だった。1989年の東京モーターショーでプロトを公開、2年後の1991年に限定販売された。

フィガロ

フィガロのラインアップはモノグレードでシートは本革仕様。パワートレーンは1リッターターボ(76ps)と3速ATの組み合わせ。2万台を3回に分けて受注する販売方法だった

フィガロのラインアップはモノグレードでシートは本革仕様。パワートレーンは1リッターターボ(76ps)と3速ATの組み合わせ。2万台を3回に分けて受注する販売方法だった

 

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