日産エクストレイルNISMO advanced package e-4ORCE/価格:598万2000円。NISMOは走りを磨いたタフギア。各走行モードのキャラクターを鮮明化。とくにスポーツ時の爽快感は格別。切り替えはダイヤル式。写真のアドバンストパッケージはGoogle搭載のインフォテインメント機能など快適装備が充実
日産のミドルSUV、エクストレイルが大幅改良を実施した。エクストレイルは初代デビューから25年、グローバルで累計約810万台、日本国内でも約83万台を販売してきた日産の基幹車種だ。一貫して持ち前の「タフギア」というキャラクターを堅持しながら、3代目では「先進性」、現行4代目ではe-POWER、VCターボ、e-4ORCEといった日産ならではの先進技術を積極採用した点がアピールポイントになる。
今回のビッグチェンジでは、本格SUVイメージの確立、ニーズに合わせた多彩なグレード追加、そして先進技術の強化が図られた。
全車に共通する改良は、内外装デザインの変更と、日産として国内初のGoogle搭載インフォテインメントシステムの採用。これに加えて、利便性と快適性を高める諸々のアップデートが実施された。今回はそこから先がすごい。エクストレイルならでは魅力を拡張する「3つの強力な個性」が仲間入りした。
3つの内訳は、SUVでスポーツするNISMO、上質&スポーティを追求したAUTECH SPORTS SPEC(以下SPORTS SPEC)、そしてアウトドアのイメージを強化したROCK CREEKである。
パワートレーンは基本的に従来と共通。全車e-POWERシステムを採用し、発電用の1.5リッター直3VCターボ(106kW/250Nm)とモーターの組み合わせ。販売主力となるe-4ORCEは前(150kW/330Nm)、後(100kW/195Nm)のモータースペックを誇る。
NISMOは「情熱体験をもたらすグランドツーリング」が開発コンセプト。かつてスポーティなクルマに乗っていて現在はファミリーが居るユーザーをターゲットに、刺激的な走りを追求している。想定したのは「1000㎞を超えるロングドライブと峠のワインディングロードでの楽しさ」。つまりGTの快適性と生粋スポーツのハンドリングを持つオールラウンダーである。各部に専用パーツの与えられたルックスからしてタダモノではい。
もう1台のスポーツモデル、SPORTS SPECは「プレミアムスポーティ」を謳う。こちらは機構面をNISMOとほぼ共有しながら、上質さと爽快感を追求。大人に向けたこだわりの1台として仕上げられている。具体的にはAUTECHのスポーティバージョンである。
今回、NISMOとSPORTS SPEC、そして標準モデルを追浜のグランドライブで乗り比べるとともに、ROCK CREEKを子細にチェックした。
NISMOは、SUVであることを忘れる爽快なパフォーマンスが印象的。コーナリング限界の高さ、伸びのある加速、そしてフラットで質感の高い走り味は、さすがNISMOだ。より速く、気持ちよく、安心して走れるよう、すべてがファインチューニングされている。
この走りの実現に大きな役割を果たしたのが、日産初採用のスイングバルブ付きショックアブソーバーである。カヤバの先進技術を投入したアイテムで、極微低速域のゆったり遅い入力では減衰力を高めてボディモーションを抑制。一方で、細かく速い入力となる中低速域では減衰力を落として高い接地性を確保する。背反する性能を両立した自信作だ。
俊敏で接地感が高い点と、フラットライドは特筆レベル。絶妙な足回りの設定とハイグリップタイヤ、そしてエアロダイナミクスが効いている。
NISMOは「速さ」を体感できるようVCMにも手を加えている。ドライブモードの味付けは専用仕様。SPORTモードを選ぶと、瞬発力のある気持ちのよいアクセルレスポンスが楽しめる。このモードはe-4ORCEの前後駆動力配分も変わる。通常のAUTOモードでもアンダーステアを感じさせないオンザレール感で走れるが、SPORTモードの場合は、よりアクセルで向きを変えやすい特性となることを確認した。
NISMOはオプションでレカロシートが選べる。エクストレイルに合わせた専用品で、他車用よりも座面の角度を寝かせるなど特別に調整しているという。あまりきつく拘束されることがないのに、走ると高いGでも懐の深いホールド感で体を支えてくれるスグレモノだ。
SPORTS SPECの走りも魅力的だった。「蒼海の息吹をまとった上質な爽快ドライブSUV」のコンセプトどおり、ほどよくスポーティで快適性も高い。機構面ではNISMOと共通のショックアブソーバーとVCMのほか、SPORTS SPECに限りパフォーマンスダンパーを装備するのが特徴。その効果で標準モデルでは感じた微振動や突き上げが軽減されている。公道で乗るとこの特徴が鮮明になるに違いない。
SPORTS SPECは軽快で俊敏なハンドリングが気持ちいい。ほぼNISMOと共通だ。ただしタイヤはオールラウンド性能を高めたタイプ。NISMOとは絶対的なグリップレベルが異なる。それを考慮してe-4ORCEは「曲げる方向でブレーキをつまむ制御をしている」と説明された。回頭性のよさをも感じ取れた。
一方、新グレードのROCK CREEKは、北米向けのパスファインダーなどに設定されたワイルド仕様の日本版。北米ローグのROCK CREEKは、目標の約3倍の販売を誇る人気モデルという。タフギアというキャラクターを鮮明にしたスタイリングは実に魅力的。3連スロットを配した専用グリルと、各部のブラック処理、そしてラバレッドのワンポイントが凛々しい。日本仕様は専用デザインの19インチアルミを装着。シートはアウトドアで安心な防水仕上げだ。さらに、新設定のSOTOASOBIというopパッケージを組み合わせるとボンネットが艶消しブラックとなり、専用フェンダーガーニッシュが加わって一段とワイルドに変身する。
標準車については走りにとくに変更はないが、内外装デザインがリファインされ、装備が充実。上級グレードに用意されるナッパレザーが明るいタンカラーから落ち着いたチェスナットブラウンに変更されたのは好印象だ。大規模に刷新されたインフォテインメント系の使い心地もいい。魅力的な新しい仲間が加わり、内容が充実したエクストレイルの商品力は確実に向上した。「こんなエクストレイルを待っていた!」というファンは多いに違いない。