フェラーリ・アマルフィは従来のローマの後継となるパワーユニットをフロントミッドに配置したFRスポーツ。グリルレスのマスクはドーディッチチリンドリにも似た印象。3.9リッター・V8DOHC32Vツインターボ(640cv/760Nm)はサーキット生まれのテクノロジーを積極投入
マラネッロにあるフェラーリの本社で新型車のお披露目に立ち会った。名前はアマルフィ。会場にはわれわれ日本をはじめアメリカや英国、オーストラリア、それにタイやシンガポール、インドネシアといった国々のメディアが集結した。
F169MMというコードネームを持ったこのクルマはずいぶん前からネット上で噂されていた。「アマルフィ」というネーミングもそう。動画サイトで名前を予想する投稿を見たことがある。なので、会場で車名を発表した時もフェラーリ側は少し苦笑いしていたように見えた。「もうみんな知っているでしょ!」といった感じだったのだろう。
アマルフィはローマの後継としてリプレイスされたモデルだ。スタイリングがそれを物語っているのは、いわずもがな。ボディパネルはすべて新設計となるが、シルエットはあまり変わらない。ローマの持つ妖艶でセクシーなフォルムはそのままだ。
それだけローマの完成度が高いということだろう。過度に手を入れると、そもそものよさをダメにしてしまう。
とはいえ、グリルやバンパーはこれまでとは違う。さらなるエアロダイナミクスを求めたデザインに変更された。フロントエンドは12気筒エンジンを積んだドーディチチリンドリに近いような気がする。
リアエンドはライトユニットが変わっている。昨今のカーデザインはLEDをアイデンティティとして使う傾向が強く、暗闇の中での光り方で存在をアピールする。そしてここには可動式リアスポイラーが装備される。スピード域で段階が変わり、それぞれの領域に必要なダウンフォースを生み出す仕掛けだ。
ローマにも装着されていたが、それよりも大きくなり効果は高まっている。完全にボディと一体化したこのリアスポイラーがアマルフィのウリのひとつであることを、デザイン部門の最高責任者フラビオ・マンゾーニ氏は語っていた。
パワートレインを含むハードウェアに関しては、商品開発の最高責任者ジャンマリア・フルジェンツィ氏がプレゼンテーションを担当した。エンジンは3.9リッター・V8ツインターボで640cvを発揮する。モーターのない純然たる内燃機関のみのパワーソースで、F154ファミリーからの進化版となる。ギアボックスは8速DCTが組み合わされる。
フルジェンツィ氏は「高出力であっても比較的運転しやすく、威圧感のないように仕上げた」と発言。というのも、このクルマのターゲットは、初めてフェラーリを購入する層を想定したからだ。ローマがそうであったように、アマルフィもまた新たなマーケットを開拓するモデルとなる。
車両ダイナミクスでは新しいブレーキシステムが導入されている。制動距離をこれまでよりも短くできるのはもちろん、ブレーキフィールにもこだわり、ベテランドライバーにも納得のいく仕上がりを目指した。ブレーキ・バイ・ワイヤー、ABS Evo、そして812スーパーファストで初めて導入した6Dセンサーも搭載する。
インテリアはデュアルコクピット・レイアウトを採用。ドライバーとパッセンジャーをそれぞれの空間で包む感じだ。
HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)と呼ばれる彼らのインターフェイスは3つのモニターで構成される。ドライバーの正面にある15.6インチのデジタルメータークラスター、センターの10.25インチのタッチスクリーン、それと8.8インチのパッセンジャー用ディスプレイだ。そこではエンターテイメントを選択することもできれば、Gフォースや回転数を表示してコ・ドライバー的に楽しむこともできる。フェラーリのデジタル化は侮れない。
ドライバーズシートに座ってうれしいのは、ステアリング上のスターターボタンの復活だろう。左手の親指で押すあのアイコニックなアルミニウム製物理スイッチが設置される。きっとこれにはマーケットの声が大きかったに違いない。触れてエンジンが始動するのとボタンを押すのでは、気持ちの盛り上がりが大きく異なる。
スターターボタンのすぐそばにはADAS(先進運転支援システム)の操作系が並ぶ。ACCや自動緊急ブレーキ、ブラインドスポット検出、レーンディパーチャーウォーニング、レーンキープアシストなどだ。そういえば、何度もフェラーリをテストドライブしてきたが、ACCを使ったことがない。
オーナーになれば使う機会があるのかもしれないが、毎回走りを五感で味わいたい身としては自走してしまう。とはいえ、次の機会には試してみたい。
というのが発表会に参加して得たアマルフィの概要の一部。それにしてもアマルフィなんてすごくいい名前だ。美しいアマルフィ海岸が浮かぶ。彼らのセンスとイタリアへの愛を感じるネーミングである。