【最新モデル試乗】新発想「胸高まるSUV×BEV」登場。スズキeビターラの走りはワクワク無限大!

eビターラはスズキ初の世界戦略BEV。開発コンセプトは「Emotional Versatile Cruiser」。 EVの持つ洗練と先進性を持った多機能SUVとして開発。プラットフォームは専用開発のハーテクト-e。ボディサイズは4275×1800×1640mmとコンパクト

eビターラはスズキ初の世界戦略BEV。開発コンセプトは「Emotional Versatile Cruiser」。 EVの持つ洗練と先進性を持った多機能SUVとして開発。プラットフォームは専用開発のハーテクト-e。ボディサイズは4275×1800×1640mmとコンパクト

「初めての電気自動車」に最適なニューカマーをチェック

 eビターラは、話題高まるスズキ初の世界戦略BEV。これくらいのコンパクトサイズでSUVイメージのBEVならぜひほしいというユーザーは多いに違いない。日本仕様のプロトタイプに、発売に先立ちサーキットで試乗した。

 eビターラは2025年春よりインドで生産を開始。夏ごろから欧州、インド、日本など世界各国で順次販売を開始する予定となっている。欧州ではトヨタ・ブランドでも販売される予定だ。

 プラットフォームはBEV専用に新しく開発したハーテクト-eを採用。軽量構造、高電圧保護、ショートオーバーハングによる広い室内空間、メインフロア下のメンバーを廃止する工夫でバッテリー容量を最大化したことが特徴だ。

ハイアングル

ドア開け

 BEVパワートレーンは、モーターとインバーターを一体化した高効率のeAxleの採用が特筆点。駆動方式は、BセグメントのBEVながら2WDだけでなく4WDもラインアップする。2WDは「FFに慣れ親しんだユーザーがこれまでどおり使えるように」という配慮から前輪駆動としたという。

 モーターは2WDには106kWと128kWの2種類を設定。4WDでは前後に独立した2つのeAxleを配置し、フロントに高出力な128kWモーター、リアに48kWモーターを組み合わせている。

 バッテリーはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)。日本勢では珍しいLFPバッテリーを選んだ理由は安全性やコスト、調達性を考慮した結果だ。eビターラのバッテリーはBYD傘下のフィンドリーム製で、容量は2WDが49kWhと61kWh、4WDは61kWhとなる。

 航続距離はWLTCモードで、2WDの106kW仕様が400km以上、同128kW仕様が500km以上、4WDも450km以上と必要十分の距離を確保している。

真横

インパネ

 ボディサイズはフロンスよりひと回り大きい全長×全幅×全高4275×1800×1640mm。全長と全幅はVWゴルフ(4295×1795mm)とほぼ同等、ホイールベースは2700mmと全長のわりに長い。最低地上高は185mmを確保している。

「High-Tech & Adventure」をテーマにしたスタイリングは、冒険心を刺激する力強い造形。実寸以上に大きく見えて存在感がある。

インテリアの質感も上々だ。インテグレーテッドディスプレイなどの先進装備が、スズキの上級モデルであることを表現している。

パフォーマンスはナチュラルで軽快、広く快適な室内も大きな魅力

 試乗の舞台は、袖ヶ浦フォレストレースウェイ。ストレートは上限100km/h、それ以外は80km/hという制約があり、コースには取り回しやスラロームを試すパイロンが配置されていた。2WD(モーター出力128kW)と4WD(同Ⓕ128kW+Ⓡ48kW)を乗り比べた。

 共通して感じられたのは、ドライブフィールがしなやかで滑らか、いたって乗りやすいこと。パフォーマンスを追求したBEVではないので、動力性能はいい意味で普通。スペックどおり4WDのほうが速いが、2WDも気持ちがいい。BEVらしい静かでスムーズな走りが楽しめた。

コーナリング

リア走り

 ハンドリングは、意のままのイメージ。全体的におだやかで、俊敏さをアピールする味付けではないが、実に自然。ステアリングの切り始めからきれいに曲がってくれる。できるだけ挙動を乱さないように、オーバーシュートして修正舵を必要とすることがないように配慮してチューニングされたことがうかがえる。日本仕様の足回りは、欧州仕様と共通という。

 車重は2WDが1790kg、4WDは1890kg。後軸重は4WDのほうが100kg重い。それに対応し4WDはサスペンションが強化され、リアにスタビライザーが装着されている。その効果で、ステアリングフィールは4WDのほうが一体感があるように感じられた。ただし2WDのハンドリングもなかなか。、リアが軽いぶんコーナーで振り出される感覚は小さく、自然なフィーリングに仕上がっていた。

 回生ブレーキの強さは、3段階で選べるようになっている。最強にしてもあまりカクンとならず、前のめりにもならない。できるだけ違和感やストレスを覚えることなく乗れることを優先したようだ。

岡本さん

モーター

 少々気になったのは、4WDでアクセルを一気に踏み込んだときに、反応が一瞬遅れる傾向があった点。スラロームの立ち上がりでトラクションをかけて体勢を整えたいときなどに思ったように走れなかった。反応の遅れは、試乗車固有の傾向の可能性もある。普通に走る分にはあまり影響はないが、念のためお伝えしておく。なお、ハーフストットルなら遅れはなく、2WDはあまり気にならなかった。

 試乗後に車内をあらためてチェックしてみた。インパネやシートはさりげなく高級感があっていい。ブリッジ状センターコンソールの下は、小物が置けるほか各種端子も配されている。良好な視界確保のため、ドアミラーの高さが左右で異なり、助手席側にアンダーミラーが付いているのもユーザーフレンドリーである。

 後席の居住性も良好。後席はシアターレイアウト状の作りで、やや高めの位置に座る。平均身長+αのパッセンジャーが座っても頭上には少し余裕があり、シート自体もクッション性豊かだ。

前シート

後シート

 荷室も実用的。テールゲートは電動ではないが、十分に広く床下にも大きなスペースがある。リアシートを前倒しすると荷室フロアの高さはほぼ平らになり、隙間を作らないためのボードも付いている。必要に応じて後席の中央部分だけ倒せるようになっているのも重宝しそうだ。

 スズキの鈴木俊宏社長は、「eビターラはお客様にとって使いやすいBEVとするため試行錯誤を重ねて開発したモデル。スズキにとってカーボンニュートラル実現のための非常に重要なマイルストーンになる。これを皮切りに今後もさらにBEVのラインアップを拡充していく」とコメントしている。eビターラに触れ、スズキ開発陣の強い思いを実感した。eビターラは、初めてのBEVに最適なモデルだ。あとは、価格が大いに気になるところ。スズキのことだから、きっとまたわれわれを驚かせてくれそうな気がする。大いに期待する。

エンブレム

諸元01

諸元02

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