ポルシェ・カレラカップはポルシェ911カレラカップカーのワンメイクで開催されるシリーズ。日本では2001年から大会がスタートし、歴代チャンピオンには平川亮選手や笹原右京選手が名前を連ねている。日本の2025年大会はF1日本GPとWEC富士6時間のプログラムに組み込まれたほか、スーパーフォーミュラとの併催も予定されている
九島辰也さん(モータージャーナリスト/以下:九島) ポルシェといえばレースですよね。ここ数年の活動と今年の予定について教えてください。
木内洋治さん(ポルシェジャパン広報部マネージャー/以下:木内) はい。グローバルだとポルシェはフォーミュラEに力を注いでいます。昨年初めてドライバーのシリーズチャンピオンタイトルを獲りました。パスカル・ウェーレイン選手が優勝です。ようやくという感もありますが、勝ててよかったです。ドイツ本国はすごい力を入れていてフルワークス体制ですし、パワーソースの供給を他チームにも行います。アンドレッティ・チームとパートナーシップを組みました。
九島 耐久レースはどうでしょう?
木内 2024年のWECは富士6時間耐久レースを含め全8戦が行われました。われわれはトップカテゴリーのル・マンでは勝てませんでしたが、ドライバーズランキングでタイトルを獲りました。マニュファクチャラーズ選手権は2位です。ル・マンはダブルポイントなので、そこで優勝したチームがシリーズチャンピオンになる場合が多いのですが、他のレースでは取りこぼしなくポイントを稼いだのがタイトルにつながりました。ポルシェ・ペンスキーは富士6時間耐久レースで総合優勝しました。10年ぶりの富士での優勝は鳥肌が立つくらい感動しました。うれしかったです。
九島 富士での優勝はよかったですね。インパクトが大きかったと思います。日本でのレース活動はいかがでしょう?
木内 今年はスーパーGT300クラスにプライベートチームでポルシェGT3Rが走ります。ずっとカレラカップを走っていた方のチームです。応援したいと思います。
そのカレラカップですが、カレラカップ・ジャパンとして誕生してから今年25周年を迎えます。2001年から欠かすことなく開催されています。リーマン・ショックでも東日本大震災でも続けられました。コロナでも。参加台数の増減はありましたが、開催を続けてきました。なんとか開催できました。これだけ長く続いているワンメイクレースは日本ではカレラカップくらいでしょうか。25年続いているのは世界を見渡しても珍しいので、本社も日本を重要なポジションに位置付けてくれています。
九島 カレラカップの目的は、ポルシェを買ったユーザーたちに走りの場を提供するのか、それともレースをすることで多くの人にポルシェのすごさを知ってもらうのか。どちらなのでしょう?
木内 カップカーは「最も市販車に近いレースカー」といわれています。製造過程でいえば、市販車と同じ生産ラインに流れています。718ボクスターとか、911カレラと同じように生産されています。
つまり、カレラカップはそれだけ市販車に近いクルマで、あれだけのパフォーマンスが出せるというアピールの場でもありますし、ドライビングスクールからステップアップしていくと、高度な技術で競うカレラカップという戦いがあるという役割も担っています。したがって、質問の答えとしては「両方」ですね。
九島 カレカップは3クラスで構成されています。プロクラスとトップアマによるプロアマクラス、そしてジェントルマンクラス。過去何度か取材させていただきましたし、昨年末は久しぶりに表彰式&パーティにも参加させていただきました。今年は25周年となると、何か特別な企画が検討されているのですか?
木内 一番大きいトピックはレースカレンダーがガラッと変わる点です。スーパーGTとの共同開催が、今年からなくなります。その代わりというわけではないのですが、開幕戦はF1、最終戦はWECのサポートレースになっています。年間で2回世界選手権と同時開催するんですから豪華ですよね。エントラントもファンも盛り上がってくれると思います。
九島 確かにそれはすごく盛り上がりそうですし、カレラカップの認知度もグッと上がりそうですね。ポルシェは耐久レースとの親和性が高いから、WECと同時開催はしっくりくると思います。出場チームはどのような状況でしょうか?
木内 近年の傾向としては、プロを目指す若手を乗せるチームが増えている気がします。
ポルシェジャパンはスカラシップを行っているので、若い選手が乗るのは大歓迎です。目標としては本国のワークスチームに日本人ドライバーを送り込むことです。カレラカップで上位の成績を残し、一定の英語力を持つドライバー1名をオーディションに送り込みます。ただ年齢制限などあって、なかなか送り出すことができなかったりします。現在の年齢制限は、23歳以下です。以前は26歳だったのですが。難しいですね。スカラシップ出身者で現在はスーパーGTやスーパー耐久、そしてWECで活躍しているドライバーが多くいます。それは喜ばしいことです。
九島 スカラシップは1年間のプログラムなのですか?
木内 はい。しかし1年では十分とはいえないので、可能であれば2年、3年と続けてもらいたいです。未来ある若者がアスリート、そして人間としても成長をしてプロドライバーになってくれればと思い、2009年からスカラシッププログラムを実施しています。
九島 サポートの内容はどうなっていますか?
木内 クルマとチームはこちらで用意します。インストラクターも。エントリーフィーは選手側の負担でお願いしています。
九島 なるほど、スカラシッププログラムは大事ですね。ポルシェのようなレースに直結したブランドはとくにそう思います。
今日はありがとうございました。今年もカレラカップの取材に行かせていただきます。