開催規模をコンパクトに抑えた東京E-Prix(フォーミュラE)だからこそ味わえた満足感

都心部開催だからコンパクトに凝縮することで満足度を高めることに成功

 フォーミュラE東京大会(東京E-Prix)は東京ビッグサイト周辺の一般公道を利用した特設サーキットで開催された(3月30日決勝レース)。

 フォーミュラEは都市部の一般公道での開催となるため、周辺の道路に混雑などの影響が出ないように配慮している。予選と決勝を土曜日で行う背景には、都市交通への配慮という面もあるだろう。

 エンジン音が発生しないBEVは、市販モデルでも格別の静粛性が楽しめる。フォーミュラEの場合も、「エンジン音がないのだから、静かなイベントなのだろう」と想像していた。しかし、実際はかなり大きめの音が聞こえてきた。

 回生ブレーキやブレーキング時のタイヤから、かなり大きな音が聞こえてくる。急ブレーキと急加速が必要な1コーナー付近で観戦していた関係かもしれないが、エンジンを搭載したレーシングカーとは別の音が楽しめた。

 とはいえ、マシンが1コーナーを抜けた後は静かさが戻る。鈴鹿のグランドスタンドでF1を観戦していると、S字を駆け抜けていくマシンのエンジン音が楽しめるが、フォーミュラEは目の前にマシンが走っているときだけ、それもブレーキングをしているときだけ走行音と機械的な音が聞こえてくる。

 フォーミュラEの1コーナー付近の観戦席は、ピットロードからマシンが出てくる様子が見えた。だが、ピットをロード走っているマシンは静かなので「音を聞いてマシンがピットロードを移動している」実感はなかった。

 東京E-Prixは東京ビッグサイト周辺での開催となったため、予選から決勝開催までの時間は観戦席を離れて過ごしているファンが多かったようだ。キッチンカーの出店や、フォーミュラE関連の展示、体験コーナーも設置されていた。有名アーティスのライブなども開催され、観客は盛り上がっていた。

 決勝開始のセレモニーは、小池百合子東京都知事や岸田文雄首相らが参加し、このイベントはインターナショナルにアピールする重要な大会なのだとあらためて実感した。決勝レースを前に意外だったのが、ドライバーが直前までマシンに搭乗しないこと。F1に比べて、圧倒的に短いと感じた。

 場内アナウンスはピエール北川さんが担当。レース見巧者のアナウンスは東京初開催のE-Prixの見どころを的確に説明してくれる。

 バッテリーの残量を計算しながら戦っていること、通常出力300kWを350kWに増強するアタックモード中は走行スピードがアップすること、アタックモードを使うためにアクティベーションゾーンを通過する際にタイムをロスが伴うことなど、E-Prixビギナーの観戦者にもわかりやすい実況が楽しめた。

 大規模イベントは、終了後は出口渋滞が当然のように発生する。一般的なサーキットの場合、併設の駐車場からサーキットを出るまでに時間がかかる。東京E-Prixの場合、サーキット駐車場からの渋滞は考えなくてよいにしても、ビッグサイトを抜けて最寄り駅までの混雑が想像できた。

 決勝レース終了後、15分ほどスタンドに留まり観客がビッグサイトに流れていく様子を見ていると、歩行者の流れが止まることなくスムーズに進んでいく。これを見てスタンドを後にすると、駅(東京ビッグサイト)まで滞ることなくスムーズに到着。駅のプラットフォームもラッシュ時のピーク以下の乗客で、混雑しらずで移動できた。都心部でレースを開催するには、コンパクトに仕上げる必要があり、それは観客にもメリットをもたらすことを実感した。

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