ご自身のエンジン愛を込めた3作品/渡邊アキラさんの好きな作品・代表作

尽きることなし、エンジンの魅力。メカニカルビートとサウンドを奏でる内燃機関への憧れ

 本誌表紙イラストを担当するイラストレーター、渡邊アキラさん。以前、AAF作品展で、渡邊さんのカリグラフィー入りの原画を拝見しました。美術品としても高く評価される西洋の貴重書のような趣きと、機械文明の象徴ともいえるクルマとの取り合わせが新鮮で、細密で楽しい構成に思わず見入ってしまいました。

 文字を美しく書く技術、“西洋書道”とも呼ばれるカリグラフィーもご自身の手で仕上げているとうかがって驚いた記憶があります。今回は、おなじみの表紙イラストとは異なるテイストの作品をじっくりご鑑賞ください。

 ボクが今回チョイスした3作品は、いずれも車体とともにエンジンを克明に描いています。

 クルマのエンジンは、フォーミュラカーや一部のMRスーパースポーツ、特別なカスタムカー以外は車体の中に埋め込まれカバーされています。ユーザーは外側からエンジンを見ることができませんが、クルマ好きはエンジンが好き、正確には内燃機関が大好きだと思います。

 クルマのハードウエアに関してはまったくもって音痴なボクも内燃機関に魅せられています。  むかしの話になりますが、憧れのスポーツカーが走っている姿を目撃した際、そのスタイリングとともにサウンドがセットになって記憶され、そんなサウンドを奏でるエンジンのスペックに思いを馳せたものです。

 エンジンの魅力を言葉にすると、アクセルペダルに対する踏力に応じて化石燃料に点火して爆発を繰り返し、緻密なメカニカルビートとともに排気音の咆哮が高まり速度を上げていくプロセス、だと思います。

『240ZG』

 モータースポーツの世界においても、アイルトン・セナやアラン・プロスト、ナイジェル・マンセル、ミハエル・シューマッハがしのぎを削っていた頃のF1は、あの甲高いエグゾーストノート抜きには語れません。トップドライバーによるシフト操作にともなう咆哮の変化とあいまって、目にも耳にも美味しいシーンでした。  そんな魅力的なエンジンですが、絵にするのはなかなかハードルが高いのです。緻密な部品の集合体なので、しっかりした資料が用意できないと描くことができず、取材撮影は必須です。

 ①『240ZG』と、②『GT-40』は、オーナーからの依頼制作でしたので、見たい部分も多方向から確認することができました。取材撮影も好天に恵まれ、オーナーのこだわりや愛車のエピソードなどもうかがえて、とても楽しく撮影することができました。  撮影終了の時点で、絵の構図は、頭の中で8割方決まっていました。

『GT-40』

 ③『RA301』は、フォーミュラカーでエンジンが露出しているタイプです。この作品は、ホンダコレクションホール(栃木県、モビリティリゾートもてぎ)で撮影した写真から描き起こしました。  実際に作品制作に取りかかると、細かいパーツ類を描くのはとても難しく、時間がかかる大変な作業でした。それでも、取材時に試乗させていただいたときの痺れるようなサウンドや、オーナーのお人柄などを思い出しながら下図をおこしていると、ついつい細密描写になってしまいました。  これもエンジンの魅力によるところが大きいです。

 通常の『CAR and DRIVER』の表紙イラストは、アクリル絵の具でエアブラシと筆によるリアリズムの表現か、デジタル制作によるフォトリアリズムの手法で仕上げています。

『RA301』

 今回の3作品は、すべてペンとインクで下図を描いてから透明水彩を筆で着彩しました。

 スペックなどの文字は、学生の頃から好きで独学で習得したカリグラフィーを採用しました。カリグラフィー用のペンを数種類使い分けてレタリングしています。  クルマに関しては、EV化が進む昨今ですが、ボク自身はアナログな内燃機関への思いがさらに強くなっています。

 イラスト制作はデジタルが当たり前になった時代ですが、アナログ手法で魅力的なクルマ、そして内燃機関をよりよく魅せるように描くというテーマが、ボクにとって次なる創作意欲のエンジンになっています。

インタビュアー/山内トモコ

わたなべあきら/1957年、東京生まれ。本誌の表紙を担当する傍らタミヤ模型の箱絵、HONDA CARSのカレンダー、広告やキャラクター制作など仕事は多岐にわたる。AAF オートモビル・アート連盟理事。アトリエは東京、千葉県在住

 

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